■連載/ファイナンシャル・プランナー山崎俊輔のフィンテックでお金を増やす方法

フィンテックは私たちとお金の関係を変えてくれる?

第1回はフィンテックと私たちのお金との関係について考えてみます。

■流行言葉のフィンテックって何?

 今年の流行言葉のひとつが「フィンテック」です。これはファイナンスとテクノロジーの合体した造語で、ITと金融サービスが融合することで、さらに便利なサービスが誕生したり、既存のサービスが改善されていくような動きを意味しています。

 会計ソフトがクラウド対応したり、家計簿アプリがレシートをカメラ撮影すれば自動認識・自動入力されるようなものはフィンテックの分かりやすい成果です。資産運用の判断基準に高度なプログラムを活用したロボアドバイザーを組み入れるようなトレンドもまたフィンテックのひとつです。

 海外では、銀行口座を誰もが持てないことと、国際送金のニーズがあることなどから、銀行を介さない資金移動などを行うこともフィンテックの効果としてあげられます。日本においてもフィンテック関連企業が次々と誕生しており、銀行との提携を発表したりベンチャー市場からの億円単位の資金調達に成功したことなどがニュースになり始めています。

フィンテックは私たちとお金の関係を変えてくれる?

■金融はもともと私たちの「便利」のためにあるしくみ

 もともと、金融というのは私たちの生活を便利にしてくれるしくみです。会社がお金を借りるのは何も銀行に頭を下げるためではありません。新製品を開発・製造・販売するとき、銀行の融資や社債の発行によって資金調達のスピードを速めることができます。

 結果として世の中にも素晴らしい商品が早く出回ることになります。Googleの便利なサービスもAppleの革新的な製品も、誰かに投資されなければ存在しなかったでしょう。

 個人にとっても、金融が介在することで世界を広げることができます。現金を全額貯めなければ家を買えないとすればほとんどの日本人は家を持てないでしょうが、住宅ローンのしくみがあるおかげで、我々は賃貸の家賃と同水準の返済をしつつ定年の頃には家を持つことができるわけです。

 しかし、規模が大きくなりすぎた金融機関はふんぞり返って偉そうにする時代になりました。本当は金融は私たちや世の中を支える縁の下の力持ちであるべきです。フィンテックは、もしかすると「私たちとお金」の関係を見直すよいきっかけになるのかもしれません。

■テクノロジーが金融の「便利」を私たちの身近なものとしてくれる

 フィンテックのもうひとつユニークなところは、ITがその重要なカギを担っていることです。フィンテック企業のホームページを見に行くと、役員やメインスタッフの紹介で、「○×銀行出身」という肩書きと「▽□(誰でも知っているIT系企業)出身」という肩書きの人が並んで登場していることがあります。

 これはつまり、金融機関の人とエンジニアが対等に肩を並べてビジネスをしているということです。そしてエンジニアがITのしくみを金融に接続してくれることにより、私たちに金融の「便利」をもっともたらしてくれることがフィンテック最大のメリットなのかもしれません。

■21世紀になってすでに実現化したフィンテックもたくさんある

 実のところ、フィンテックはまったく新しい概念ではありません。インターネットの普及とiPhone等のモバイル端末の普及により、私たちの身近なところにすでに実現していたりもします。

 銀行のオンラインバンキングのほとんどはスマートフォン用サイトもしくは専用アプリを用いることで、銀行に行かなくても残高を照会、振込をできるようになっています。20世紀においては、午後6時までに銀行のATMに行列しなくてはならなかったことを考えると隔世の感です。

 株式等のトレーディングにおいても同様です。かつては証券会社の社員だけがリアルタイムに動く株価をチェックすることができ、情報開示された内容を個人が入手するために何日もブランクがありました。今ではスマホがあることで個人の投資条件はほとんど不公平のない世界になりました(もちろん経験や投資額の差はありますが)。

 流行の言葉に踊らされず、フィンテックの本質をみてみれば、フィンテックはもう、私たちの世界を変えてくれている、ともいえるのです。

フィンテックは私たちとお金の関係を変えてくれる?

■あまり難しいことを考えず、フィンテックを私たちのお金の問題に活用してみよう

 さて、前振りが少々長くなってしまいました。第一回のコラムで指摘をしたかったのはむしろ「難しく考えず、フィンテックが私たちのお金の問題を改善できるヒントを探してみよう」ということです。

 Amazonや価格.comがどんなに便利であっても、しくみを知らなかったり利用しない人にはその恩恵はやってきません。フィンテックも多くは「知らないために利用されていない」しくみであったりします。

 フィンテックの個人にとっての本質は、利用することで「マネーライフがお得で有利になること」「生活が効率的になること」だと思います。

 連載はファイナンシャル・プランナーである筆者がフィンテックの世界をあなたのお金の問題改善に具体的に結びつくように紹介してみたいと思います。お楽しみに!

文/山崎俊輔

1972年生まれ。中央大学法律学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。twitter(@yam_syun)でも、毎日「FPお金の知恵」を配信するなど若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる。執筆、講演多数。