地球に落ちてきた、孤独な宇宙飛行士

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地球ではないどこかの星の、広大な大地にひとり残された宇宙飛行士。これは、写真家ディエゴ・ブランビッラのSF作品「My First Dream」だ。「宇宙の孤独」をリアルに写し出すことで、彼は見る者に何を伝えようとしているのか。

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国際宇宙ステーションでの約1年の滞在を終え、宇宙飛行士のスコット・ケリーが地球に帰還する[編註・原文記事は16年3月1日公開]。国際宇宙ステーション滞在中、彼はロシアの宇宙飛行士ミハイル・コルニエンコとセルゲイ・ヴォルコフとともに地球の周りを回る生活を送った。そう、これが宇宙での大原則なのだ──絶対に1人にはならないこと。

だが、写真家ディエゴ・ブランビッラの「My First Dream」シリーズに登場するフィクションの世界ならば、話は別である。この作品は、太陽系をたった1人で彷徨う宇宙飛行士の姿を写し出しているのだ。

ブランビッラは、作品の背景を地球以外の惑星らしく見せるために、砂漠のように広大な風景で撮影を行った。似たようなコンセプトの作品はほかにもある。しかしブランビッラの作品には、“宇宙での孤独”が巧みに表現されている。

ブランビッラは、グラフィックデザイナーとして働いていた7年前に写真に興味を抱き始めた。最初は、あるデザインに合う写真を選ぶ、という単なる実務だった。そんな彼が写真をアートと考え始めたのはおよそ1年前。その時、彼はロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションで写真学の修士号を取ることを決心した。「はじめは趣味の域だったのですが、次第に本当に写真にのめり込んでいったのです」と彼は振り返る。

連作「My First Dream」のインスピレーションは、あるときブランビッラが訪れた、熱帯植物で埋めつくされた室内庭園から得たという。壁一面ガラス張りの庭園に未来を感じ、それが彼の心に響いた。それは同時に、スペース・コロニー(宇宙植民地)を思い起こさせるものだった。好奇心をくすぐられた彼は、『2001年宇宙の旅』や『バーバレラ』といったSF映画を片っ端から観たという。

『ゼロ・グラヴィティ』や『オデッセイ』といった最近のSF映画はよりリアルさを追求する傾向にあるが、彼はSFの“フィクション”の部分に惹き込まれた。「SFの好きなところは、実在しない“新たな世界”をつくり出せるところです」とブランビッラは言う。「わたしたちが惑星に抱くイメージは、その大部分が映画や文学から影響を受けているのです」

今年1月、ブランビッラは6カ月におよぶ撮影プロジェクトを終えた。別世界のように見える場所を事前に調査し、その撮影計画を立て、そして実際の撮影のために多くの時間を費やした。スイスの氷結湖を「冥王星」、オマーンのワヒバ砂漠を「火星」に見立てたほか、ブランビッラはイギリスやイタリアでも撮影を行った。

1960年代の中国製ヘルメットやダイヴィング用のドライスーツ、eBayで見つけた小物類を組み合わせてつくられた特製の宇宙服。そして、配管設備店で手に入れたプラスチックパイプやありふれた黒いパッチも、それらしい見た目をつくり出している。NASAの宇宙服をそっくり再現しようとは思っていないのです、とブランビッラは言う。彼はまったく独自の宇宙服を追い求めていた。「完璧でなくても、見る人が宇宙服だと思う程度にリアルであれば十分なのです」

“宇宙に行かない”宇宙飛行士役は、友人や、時として彼の妻が演じることもある。その撮影自体は、大体30分程度であっさり終わったという。宇宙のシーンは自然光で撮影され、何もセットアップする必要がなかったからだ。一方で、スタジオでの撮影は長時間を要した。ブランビッラは外部光や粘土のモデルでつくられたクレーター風のセットなど、より精巧なセットを使用したからだ。ブランビッラの写真は、それぞれが独特の雰囲気や趣を感じさせる。「写真それぞれに違った印象をもたせたかったのです。それに、いろいろと実験してみるのが結構好きなんです」と彼は語る。

ブランビッラは縦の写真を好む。そして岩と砂の広大な風景のなかで、宇宙飛行士をポツンと小さく写す。その姿が孤独感を生み出し、見る人に考えさせる余地を与えることで“真実”と“フィクション”の境目を曖昧に描き出している。

「わたしが作品のストーリーを伝えるのではありません」と彼は言う。「見る人が、その人自身のストーリーをつくるためのきっかけを与えたいのです」

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