また、こんな例も。
 Bさんは仕事柄、深夜まで作業に取り組むことが何日もある。そんなある日、ふと体に違和感を覚え血糖値を測ると、案の定、低血糖のサイン(50/dl)。いつも通りブドウ糖をかじり安静にしていたので違和感も治まるだろうと思った。
 「ところがその日は違ったんです。家に帰っても無性にイラつくし落ち着かない。そして突然、大声で叫び声を上げたそうです。驚いた奥さんに揺さぶられたのですが、自分では何をしているのかまったく分からない状態でした」
 翌日、主治医に聞くと「低血糖による錯乱状態」と診断され、その時のショックは今でも忘れないという。

 東京社会医学研究センター、村上剛士医師もこんな例を挙げた。
 「通常、交感神経刺激症状が出ると、睨んでいるような顔つきになり、暴力を振るったり、奇声を発したりします。精神状態が非常に悪くなっていて、身体的にもさまざまな症状が出る。心拍数や拍出量が増え、手足の痙攣、異常な疲労感、他にも日中に眠気に襲われたり集中力も欠け、健忘症なども顕著となります」

 そしてさらに、重ねてこう注意を促す。
 「食事を抜いたり量を必要以上に少なくすると陥る低血糖は、下痢、嘔吐などで食事が十分摂取、吸収できないときも同じく起きます。Aさんのように速効型、混合型インスリンなどの注射を打っている場合は、すぐに食事が摂れない時も起きる。運動においても、普段より運動量が多くなるときはその前にバナナなど補食を摂るようにすることが大事です。激しい運動をした際は、丸1日は低血糖に対する注意が必要です」

 やむをえない事情が重なり、低血糖を起こした場合の処置として、専門家は次の点を上げている。
 ●意識があり経口摂取ができる時は、砂糖15〜20グラムを含んだ砂糖水を飲む。糖分を含む缶ジュース・缶コーヒーでも構わない。15〜20分で回復しないときは、再度同じことを繰り返す。
 ●a-グルコシダーゼ阻害薬服用時の低血糖の場合は、ブドウ糖を摂取する。血糖の急激な上昇を抑えるこれらの薬を飲んでいて低血糖になった場合、砂糖は回復に時間がかかる。そのため必ず固形のブドウ糖をかじるか、ブドウ糖を多く含んだ清涼飲料水(ファンタグレープ、同オレンジ、コカコーラなど)を飲むようにする。
 「低血糖は高血糖に比べ、食事制限がない。気を付けさえすればコントロールは可能です。ただし、一生付き合っていくという覚悟が必要です」(専門医)

 肝に銘じよう。