C-PTSDという病気 DVの深刻な後遺症
2005年05月09日16時38分 / 提供:PJニュース
DV(ドメスティック・バイオレンス)については、2002年に法律が制定され、昨年は一部が改定された。法律は整備されてきて落ち着いてきているように見られるものの、深刻な現状と乖離しているという声もよく聞かれる。今回より5回連続して、DVの最近の事情をリポートする。
第一回の今回は、「C−PTSD」という病名について
このニュースをごらんの皆様は、ほとんどが「PTSDなら知っているけど、C−PTSDはきいたことがない」という感想だろう。それもそのはず、この病気が病気として認知されだしたのはごくごく最近のことなのだ。
ご存知のように、PTSDとは、阪神淡路大震災やスマトラ沖地震津波・そして尼崎線の脱線事故のような大きな災害で、周囲の多くの人が死亡し、自分もいつ死んでもおかしくない、というような強烈な体験をした人が、その後もその恐怖の影響を受け、時には生活が困難になるという症状だ。
これに対して、DVの場合、被害者には大きな災害経験に相当するものはない。肋骨を折ろうと、精神的に「死ぬかと思った」と言っても、実際には「死亡に至るほど危ない状態ではなかった」と判定されることが多い。にもかかわらず、DV被害者は、暴力や言葉の暴力やそのほかの方法で、無気力化させられてゆく。なかには、ノイローゼになって自殺する女性も相当多数いるのが現状である。当然ながら自殺に追い込んだDV加害者は、罪を問われることもなく生活をしている。
この病的な精神状況を、以前はPTSDとして説明する場合が多かった。ところが、最近は裁判所がPTSDと認めなくなってきている。前述の通り、「死ぬほどの暴力ではないのにPTSDと認定するのはおかしい」という見解である。
そこで、DV被害者の精神状況を説明する病名として、C−PTSDという病名が使われるようになってきている。C−PTSDの状況を理解するには、数年前の「新潟少女監禁事件」を思い出すと良い。典型的な例である。脅かされ、スタンガンを突きつけられて、「自分は逃げられない、逃げても助けてもらえるわけがない。逃げれば殺される。」そう思い込んでしまう。
客観的には死亡に至るような暴力は受けていない。でも、当の少女は、精神状態を回復させるのに、多大な年月を必要としている。そして、多分、今でもその近辺には行きたがらないだろうし、加害者の顔を見たら、一挙に精神状態が後退してしまうだろう。C−PTSDとは、かくも恐ろしい心の病なのである。
C−PTSDの症状について少し説明しよう。名前の通りC−PTSDはPTSDから派生した病名であり〔CはConbined(複合)の略〕、PTSDに非常に似た症状を示す。生活全般においてはうつ症状を示すとともに、極端な自己否定、加害者への極端な畏怖(いふ)=フラッシュバックも含む、自分の生きる意味の完全な喪失などが強く現れる。
DV被害者は、程度の多少はあれ、みんなC−PTSDで苦しんでいる。まず、逃げ出すことができない。「自分はダメな人間だからひとりで子どもを育てていくことなどできない」「前夫に連れ戻されてもっとひどい目に合わされるに決まっている」。逃げ出せない女性の多くがこう訴える。多くがDV加害者に言われた言葉のオウム返しだ。
逃げ出した被害女性が前夫から居所を隠して完全蒸発しようと試みるのも、前夫に知られていると思うだけで平穏な生活ができないという恐怖感からくるものだ。前夫に似た人、前夫の愛用者と同型の車、極端なところでは前夫が特に好んで見ていたテレビ番組。そういう、前夫にまつわる全てのものが恐怖の対象になる。見ると体が勝手に反応して、除けよう避けようと動いてしまう。
こういう想いを神経科に通院することでなくすことはむつかしい。多分、多くの被害女性が、立ち直れないまま苦しみながら生活している。それは果てもなく長い期間にわたるのだろう。
C−PTSDという病名は、裁判所に対し被害女性の傷を知らしめる役割とともに、被害女性には「あなたはこういう状況だから、前向きに考えにくいかもしれない。でもそれば病気だからだ。やってみよう」と励ますための、必要欠くべからざるツールなのだ。【了】
第一回の今回は、「C−PTSD」という病名について
このニュースをごらんの皆様は、ほとんどが「PTSDなら知っているけど、C−PTSDはきいたことがない」という感想だろう。それもそのはず、この病気が病気として認知されだしたのはごくごく最近のことなのだ。
ご存知のように、PTSDとは、阪神淡路大震災やスマトラ沖地震津波・そして尼崎線の脱線事故のような大きな災害で、周囲の多くの人が死亡し、自分もいつ死んでもおかしくない、というような強烈な体験をした人が、その後もその恐怖の影響を受け、時には生活が困難になるという症状だ。
これに対して、DVの場合、被害者には大きな災害経験に相当するものはない。肋骨を折ろうと、精神的に「死ぬかと思った」と言っても、実際には「死亡に至るほど危ない状態ではなかった」と判定されることが多い。にもかかわらず、DV被害者は、暴力や言葉の暴力やそのほかの方法で、無気力化させられてゆく。なかには、ノイローゼになって自殺する女性も相当多数いるのが現状である。当然ながら自殺に追い込んだDV加害者は、罪を問われることもなく生活をしている。
この病的な精神状況を、以前はPTSDとして説明する場合が多かった。ところが、最近は裁判所がPTSDと認めなくなってきている。前述の通り、「死ぬほどの暴力ではないのにPTSDと認定するのはおかしい」という見解である。
そこで、DV被害者の精神状況を説明する病名として、C−PTSDという病名が使われるようになってきている。C−PTSDの状況を理解するには、数年前の「新潟少女監禁事件」を思い出すと良い。典型的な例である。脅かされ、スタンガンを突きつけられて、「自分は逃げられない、逃げても助けてもらえるわけがない。逃げれば殺される。」そう思い込んでしまう。
客観的には死亡に至るような暴力は受けていない。でも、当の少女は、精神状態を回復させるのに、多大な年月を必要としている。そして、多分、今でもその近辺には行きたがらないだろうし、加害者の顔を見たら、一挙に精神状態が後退してしまうだろう。C−PTSDとは、かくも恐ろしい心の病なのである。
C−PTSDの症状について少し説明しよう。名前の通りC−PTSDはPTSDから派生した病名であり〔CはConbined(複合)の略〕、PTSDに非常に似た症状を示す。生活全般においてはうつ症状を示すとともに、極端な自己否定、加害者への極端な畏怖(いふ)=フラッシュバックも含む、自分の生きる意味の完全な喪失などが強く現れる。
DV被害者は、程度の多少はあれ、みんなC−PTSDで苦しんでいる。まず、逃げ出すことができない。「自分はダメな人間だからひとりで子どもを育てていくことなどできない」「前夫に連れ戻されてもっとひどい目に合わされるに決まっている」。逃げ出せない女性の多くがこう訴える。多くがDV加害者に言われた言葉のオウム返しだ。
逃げ出した被害女性が前夫から居所を隠して完全蒸発しようと試みるのも、前夫に知られていると思うだけで平穏な生活ができないという恐怖感からくるものだ。前夫に似た人、前夫の愛用者と同型の車、極端なところでは前夫が特に好んで見ていたテレビ番組。そういう、前夫にまつわる全てのものが恐怖の対象になる。見ると体が勝手に反応して、除けよう避けようと動いてしまう。
こういう想いを神経科に通院することでなくすことはむつかしい。多分、多くの被害女性が、立ち直れないまま苦しみながら生活している。それは果てもなく長い期間にわたるのだろう。
C−PTSDという病名は、裁判所に対し被害女性の傷を知らしめる役割とともに、被害女性には「あなたはこういう状況だから、前向きに考えにくいかもしれない。でもそれば病気だからだ。やってみよう」と励ますための、必要欠くべからざるツールなのだ。【了】
※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。
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