隠し通した痛みからの解放…GK西川が抱く“新生”への秘めた思いとは
 ついに“新生・西川周作”が日本代表デビューを果たした。

 29日に埼玉スタジアムで行われたシリアとの2018FIFAワールドカップロシア アジア2次予選を5−0で制し、9月からの最終予選進出を決めた日本代表。2次予選全8試合を史上初めて無失点で乗り切り、次なるステップへと歩を進めた。GK西川周作(浦和レッズ)はこのうち6試合に出場。W杯予選での連続無失点記録で松永成立(横浜F・マリノスGKコーチ)と川口能活(現SC相模原)と並んでいた5試合を更新して単独トップに立った。西川自身も「そうやって歴史を作っていくのは幸せなこと。今日はみんなで集中して守ることができた。(記録続行は)プレッシャーよりもモチベーションになった」と普段どおりの柔らかな笑顔で語ってくれた。

 では、いったい何が“新生”なのか。話は今から3カ月前にさかのぼる――。

「来シーズンは新しく生まれ変わった僕をお見せできると思います。何が新しいのか? それは楽しみにしていてくださいよ」

 元日に行われた天皇杯決勝。西川はこう笑いながらミックスゾーンをあとにした。微かな疑問を抱いたまま数日が経過し、浦和レッズから出された『西川周作選手、ケガのお知らせ』というプレスリリースを目にしたのは1月4日のことだった。

 診断名は「左ひざ関節遊離体」。同日に遊離体摘出手術を行い、全治約4週間の見込みだという。シーズン中はケガを抱えながらプレーし続け、オフに入るのを待って手術に踏み切ったのだろう――直感的にそう感じていた。

 2月上旬、鹿児島県指宿市で行われていた浦和のキャンプで西川を訪ねた。そこには「レッズに来てから一番充実したキャンプを送れているんじゃないかと思います」といつもの笑顔で話す彼の姿があった。そして“新生”の秘密について明かしてくれた。

 ちょうど一年前の指宿キャンプあたりから痛みを抱えていたという西川。昨シーズンはその痛みと「うまくつきあいながら、割りきってやろうと思っていた」と振り返る。そして代表チームのメディカルスタッフともコミュニケーションを取りながら手術のタイミングを見計らい、新シーズンに万全の体制で臨めるオフ突入直後に実施に踏み切ったのだそうだ。

 彼が悩まされていた「遊離体」は“ねずみ”とも呼ばれ、軟骨や骨の小片が関節内に遊離して動き回るものを指す。これが関節の狭い隙間に挟まったり、引っかかったりすることで痛みと可動域制限が引き起こされる。西川の場合は左ひざ外側に遊離体があり、インサイドキックを蹴るたびに関節に挟まって強い痛みが出た。そのためシーズン中は左足キックを極力控え、利き足ではない右足の使用頻度を高めるようにしていたという。正確無比な左足キックを最大の武器とするがゆえの苦しみを味わったはずだが、「神様が自分に課した一つの壁だと思って、右足を極めるという部分でポジティブに捉えた。おかげで右足キックがうまくなった」と温和な表情で語る。

 この手術によって西川はすべての不安を取り除くことができた。痛みと隣り合わせの戦いから解放され、平常運転に戻ったとも言える現状を「新鮮でうれしい」と説明してくれた。

「余計なものがなくなって、ステップも、しゃがむことも、踏ん張ることもできるようになった。しっかり力を伝えて飛ぶこともできるし、昨シーズンがウソだったかのような感覚。キャッチング、構え、飛び出し、ボールへの反応、一発で相手の裏を狙うキック……すべてで無心にプレーできる」

 彼がキャンプ中に感じていた手応えは決して間違いではなかった。

 今回の代表招集直前に行われた明治安田生命J1リーグ第4節の湘南ベルマーレ戦、西川はキャッチの瞬間に得意の左足で鋭く前方へ蹴り出し、関根貴大にピンポイントパスを供給。あわやゴールというシーンを作り出した。先のシリア戦でもハイボールへの対応で相手に体を当てられてキャッチしそこなったボールを着地と同時に素早くターンして両手に収め、次の瞬間には左サイドへ走り出していた岡崎慎司(レスター/イングランド)の足下へ糸を引くようなフィードを届けた。試合終了直前には相手と一対一になるピンチで体を投げ出してビッグセーブ。「絶対に無失点で終えてやろうと思っていた」という執念でシュートをブロックして連続無失点記録を樹立した。