31日、柳澤協二・元内閣官房副長官補が講演。安保法制の問題点として(1)米艦を守れば日本が敵になり、攻撃を誘発して戦争に巻き込まれる、(2)在日米軍基地は攻撃対象とされ、逆に危険―などを挙げた。

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2016年3月31日、元防衛官僚で内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務めた柳澤協二氏が日本記者クラブで「安保法制の施行と今後の課題」と題して講演。安保法制の問題点として(1)米艦を守れば日本が敵になり、攻撃を誘発して戦争に巻き込まれる、(2)在日米軍基地は攻撃対象とされ、逆に危険、(3)自衛隊のイラク派遣時に一発も撃たなかったから、犠牲者が出なかったが、矛盾が顕在化する―などを列挙。その上で「国民がどこまでの自衛隊の犠牲を許容できるか不明であり、国民がどんな軍隊を持ちたいのか国民に問うべきである」と提起した。発言要旨は次の通り。

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政府は、米艦を守れば日米が一体化して抑止力が高まり、戦争に巻き込まれないと説明するが、実際は、米艦を守れば日本が敵になり、攻撃を誘発して戦争に巻き込まれる。

「同盟のジレンマ」という言葉がある。同盟国(米国)に勢いがあるときは、同盟国の戦争に巻き込まれ、勢いがない時は見捨てられる。安倍首相は心配して「見捨てないでくれ」と(米国の要求を)のんだが、健全ではない。

「中国海軍の眼前に存在することが抑止」という発想だが、緊張を高めることにつながる。米中戦争はないという前提だが、どのように担保するのか。

米国と組めば中国は攻めてこないとの発想は、「米国優位」を認識したものだが、それなら何故米国軍艦を守らなければならないのか。一体化そのものが目的ではないか。

何を守りたいのかも不明。島なら、海上保安庁と自衛隊で対応できるが、長大なシーレーンを守るのは不可能だ。中国が本気で戦争する場合、優先目標は日本の基地。基地があるから安全とは言えず、逆に攻撃され危険だ。

米国は覇権主義から孤立主義にシフトしている。日本が様々なサービスを供与しても見返りはない。中国も米国を殲滅(せんめつ)する意図はない。基地の有無は抑止とは無関係だ。

北朝鮮の威嚇の対象は米国であり、日本を取りにくる理由はない。米軍基地があるからミサイルが飛んでくる。

自衛隊のイラク派遣時に一発も撃たなかったから、犠牲者が出なかったというのが私の教訓的な実感だ。1人でも殺していたら日本側にも犠牲者が出た。安保法施行で、撃つ可能性が現実化することによって、矛盾が顕在化する。

安倍首相は3月の防衛大学校の卒業式で、安保法施工後「これまでと同様に危険はある」と語ったが、訓練と実戦は違う。自衛隊OBは「リスクが高まる」と見ている。安倍首相や我々戦争を知らない世代が、自衛官に十分な準備もないまま犠牲を強いていいのか。

安保法では、国民がどこまでの自衛隊の犠牲を許容できるか不明であり、国民がどんな軍隊を持ちたいのか国民に問うべきである。(八牧浩行)