鏡の前で会いましょう』作者・坂井恵理さんインタビュー後編。日本では、女性の価値は「可愛い、幼い」に収束する傾向があります。しかし、それと同時に「女性から男性へのプレッシャー」も強くあると坂井さんは指摘します。男女がお互い心地よく生きる為にはどうすればいいのでしょうか。

「若く見えると嬉しい」のはなぜ?

坂井恵理さん

――坂井さんは思春期にしんどい思いをしたことはありましたか? そのしんどさからは今はもう解放されたのでしょうか。

坂井恵理さん(以下、坂井):年取ってくると綺麗汚いより、老けるというまた別の悩みが増えてきますよね。白髪増えてきたな……とか。若く見えたほうがうれしいとは思いつつ、そこまでアンチエイジングを頑張るわけでもないんですが。しかし、この「若く見える」という基準、とっさに考えてしまうのですが、自分でも何で若く見えたほうがいいかは分からないんですよね。

日本には、「女性=可愛く、幼くあるといい」という暗黙のプレッシャーがあるように感じます。「美しさ」というより「幼い可愛さ」が重宝されることに疑問を感じることはあります。かといってアメリカみたいに「大人の女性はセクシーであれ」っていわれてもそれはそれで困るんですけど……。

現代は女性も仕事で自信をもてる

――主人公の明子ちゃんは自分に似合うファッションを模索したり、好きだと思える仕事に就いたり、感性を磨いたり、ルッキズムをバネにしている部分がありますよね。かつては「女性は可愛くてお嫁にいければいい」っていう時代もあっただろうけど、仕事を持って自分に自信を持つことが女性にも許されている分、今はいい時代なのかなとも感じました。

©坂井恵理/講談社

坂井:そうですね。男性がブサイクでもいいって開き直れるのって権力やお金とか外見とは別の面で自分の価値を高められるって思っているからなんだろうけど、女性だって本当はそうなんじゃないかな。

実は私の一番強いコンプレックスって若いうちに漫画家として売れなかったことなんです。今、とても楽しく漫画を描いていますけど、コンプレックスは未だに健在で、もしそれを手に入れていたら若さや美しさなんて要らなかったかもしれません。

女性も変わらないと男性を楽にできない

――ご自身のプライオリティとして仕事というのがすごく大きいと。ウートピ読者層は、仕事をしている女性が多いのですが、少し先輩の坂井さんからメッセージはありますか?

坂井:世間の風潮に流されずに、そのままでいてほしいなって思います。いまは結婚しなくても子どもがいなくても楽しい時代だと思うし。

――現状に絶望してしまっている女性は多いと思います。世間を、周囲を自分にとって住みよくするためにはどうしたらいいのかみんな模索しているのかもしれません。

坂井:私は漫画を描いて発信しているけど、普通に会社勤めしていると身近なおじさんすら変えられなくて絶望することもあるかもしれないですね。私も自分の父親のことは変えられていないし。男性のルッキズムや差別についてここまで話してきましたが、旧態依然な価値観として、女性が男性に求めているものが大きいという部分もあると思います。

私より収入は多くなくてはいけない、とかデートではリードしてほしい、とか、料理が女性より上手いのはイヤ、とか女性も「男女のバランス」にこだわっている人がいる。それに呼応するように、男性も肩肘張って頑張ってしまっている負の連鎖ですよね。

昔よくあった「成田離婚」も、いざハネムーンに行くと男性が頼りなくて気持ちが冷めてしまうことが原因でした。「男性にリードしてほしい」なんて相手に任せきりにせず、女性の方が旅慣れているなら女性がリードしてもいいはずなんだけど。

男だから、女だから、じゃなくて相手をよく見て、女性も意識的に変わっていかないと男性のことを楽にしてあげられないのかなって思います。

(真貝友香)