【三田友梨佳アナが語る世界選手権展望・男子編】

 現地時間3月30日からアメリカ・ボストンで始まる「世界フィギュアスケート選手権2016」。現地でリポーターを務める、三田友梨佳アナウンサー(フジテレビ)が注目しているポイントについて語ってくれた。


 今回の世界選手権、日本男子は、昨年12月末の全日本選手権で優勝した羽生結弦選手と、2位の宇野昌磨選手が出場します。

 全日本では、羽生選手は4連覇を達成しましたが、その裏には、納得のいく演技ができず、悔しさに顔を歪めている姿がありました。フリー演技後にインタビューをする直前、羽生選手がバックヤードで「なんでこんなへたくそなんだよ。どれだけへたくそなんだよ......」と、自身を叱咤していた姿がとても印象に残っています。

 ただ羽生選手の冷静さがあふれていた場面というのもありました。それは演技後キスアンドクライに行った瞬間のことです。すぐにその場でジャンプの確認をして、ブライアン・オーサーコーチと「これでやっと厳しい練習ができる」と前向きに話していたことには驚きました。常に自分自身を客観視し、先を見据えて次の舞台に気持ちを切り替えているところに羽生選手の冷静さを感じました。

 また、演技直後の羽生選手へのオーサーコーチの言葉も、とても素晴らしいものでした。

「完璧である必要はない。これでまた目指すものができた。君は人間で、毎回完璧である必要はない」

 今シーズンここまでの羽生選手の強さは、"異次元"と表現されるほどで、世界最高得点を2回更新しています。その羽生選手のもっともよき理解者のひとりが、近くで一緒に戦ってきたオーサーコーチなのだと思います。だからこそ、この言葉にはとても重みがあると思いますし、心に響きました。

 今シーズン2戦目だったスケートカナダでも、思うような演技ができず、悔しそうな表情を見せていた羽生選手でしたが、その後、ご自身が語っていたように「血の滲むような努力」を重ね、NHK杯、そしてグランプリファイナルでは本当に素晴らしい演技を見せてくれました。

 そんな驚異的な結果を残してきている姿と、先を見据えて前に進む力を目の当たりにすると、今大会、全日本選手権で味わった悔しさをどうエネルギーに変えてくるのか、また、それがさらなる世界最高得点につながるのか、期待せずにはいられません。

 いつも「見ている人の心を動かすような、そんな演技がしたい」と話されている羽生選手の口から、「納得の演技ができた」という言葉を今回の世界選手権の演技後のインタビューで聞きたいと思っています。

 そして日本男子はもうひとり、初めての世界選手権となる宇野昌磨選手がどんな演技を見せてくれるのかも楽しみです。

 宇野選手は四大陸選手権で4位。SP、フリーともにジャンプではノーミスで3位のハン・ヤン選手、フリーで4回転を4本入れた2位のボーヤン・ジン選手、そしてパーフェクトな滑りで優勝を果たしたパトリック・チャン選手ら、ライバルの演技を間近で見て、とても刺激になったはずです。

「試合当日にステーキを食べる」という宇野選手ですが、今シーズン、シニアの舞台を経験して、着実に成長しています。その宇野選手の演技でとくに注目したいのは、さらに磨きのかかってきた"表現力"と、全日本のフリーで冒頭の4回転トゥループが2回転トゥループになった後、最後のジャンプでリカバリーしようとした"攻めの姿勢"です。

 そして、今回は「2」になっている日本男子の世界選手権出場枠を、再び「3」に増やせるかどうかも見どころのひとつです(※)。全日本選手権であれだけハイレベルな競争が繰り広げられる選手層の厚い日本男子フィギュアですから、2枠というのはもったいない気がします。また、2018年の平昌五輪に向けても、世界選手権の枠獲りは非常に重要になってきます。
※1枠増の条件は、日本勢上位2名の合計順位が13位以下であること。2015年の世界選手権では日本勢上位2名(羽生選手が2位、小塚崇彦選手が12位)の合計が14だったため、今年は1枠減った。

 もちろん、世界のライバルたちの演技にも注目です。私がとくに注目しているのは、パトリック・チャン選手。四大陸も現場で取材をしていたのですが、パトリック・チャン選手の演技はまさに"気迫がみなぎる演技"でした。

 ソチ五輪後1年間の休養を経て、今シーズンから復帰し、グランプリファイナルでは4位と本調子とは言えない結果でしたが、四大陸では優勝。演技後、チャン選手があれほど感情を表に出して喜ぶ姿は意外でしたが、それだけ「心・技・体」が揃った会心の演技だったのだと思います。

 ほかにも、四大陸で結果を残したハン・ヤン選手、ボーヤン・ジン選手や、毎年この季節にコンディションのピークを合わせてくるデニス・テン選手、昨年の世界選手権王者のハビエル・フェルナンデス選手ら、強力なライバルはまだまだいます。

 何が起こるか予想が難しい世界選手権ですが、結果、演技ともに羽生選手、宇野選手の活躍に期待しています!

【プロフィール】
■三田友梨佳(みた ゆりか)
東京都出身。フジテレビアナウンサー。2011年入社。現在の担当番組は、『直撃LIVEグッディ!』(毎週月〜金曜13時55分〜)、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(毎週木曜21時〜)、このほかスポーツ各種中継。