香港政府・衛生署は30日、香港籍を持たない児童へのワクチン接種を4月から予約制にし、全香港での受け入れ数を1カ月あたり120件に制限すると発表した。中国で表面化した大規模な「違法ワクチン」の問題を受け、子どもへの予防接種を希望する大陸人が殺到することへの“予防”と考えられる。(イメージ写真提供:CNSPHOTO)

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 香港政府・衛生署は30日、香港籍を持たない児童へのワクチン接種を4月から予約制にし、全香港での受け入れ数を1カ月あたり120件に制限すると発表した。中国では2月から3月にかけて、違法に販売され、保管方法の不備で品質に問題があるとされるワクチンが200万本程度出回った事件が明るみに出た、大量の中国人が香港に出向いて子どもへのワクチン接種を求める可能性が大きかったが、香港当局が先手を打って制限した格好だ。

 中国での「違法ワクチン事件」が表面化したのは、山東省済南市警察が2月2日、医薬品に関する犯罪で、2015年4月28日に容疑者の身柄を拘束したと発表したことがきっかけだった。その後、全国規模で違法ワクチンが流通していた実態が明らかになっていった。

 製薬会社からワクチンを安く仕入れ、法律で認められない横流しを行っていたという。流通過程で温度管理をしていなかったので、ワクチンには感染症の予防効果がなくなっており、健康被害が出る可能性もあるという。

 中国当局は24日、同件で容疑者約130人の身柄を拘束したと発表。ワクチンの違法流通が始まったのは2010年で、これまでに約200万本が出回っていた。身柄を拘束された容疑者を含め、同件には約300人がかかわっていたと見られるという。
 香港では2010年ごろから、大陸から出産を目的とした女性が大量に押し寄せる現象が発生した。香港は戸籍について「出生地主義」なので、香港で生まれた子は香港籍が認められるからだ。

 大陸から来た出産を控えた女性のため、香港では医療機関の産婦人科は、予約でいっぱいになった。香港人女性は、出産の際に医療機関を探すことが極めて困難になった。費用の安い公立病院は大陸人の予約で埋まっているため、高額な私立病院を選ばねばならないケースが一般化した。

 香港人の間で怒りが高まり、有力紙のひとつ「アップルデーリー」の2012年2月1日付紙面には、「香港人は忍耐の限界」と主張する意見広告が掲載された。一般市民がフェイスブックで広告掲載を呼びかけ、主旨に賛同した人々の募金で広告費用を捻出したという。

 香港・衛生署は30日、香港籍を持たない児童へのワクチン接種を4月から予約制にし、全香港での受け入れ数を1カ月あたり120件に制限すると発表した。

 衛生署は、3月1-29日に香港の医療機関で医療サービスを受けた児童数は延べ4万7508人で、うち0.82%に相当する389人が香港籍を持たない児童だったと説明。ただし、香港籍を持たない児童は「香港籍を持たない児童すべて」と、中国大陸人だけではなく、医療サービスもワクチン接種だけではない「すべての医療サービス」と説明した。

 1月に医療サービスを受けた香港籍を持たない児童は398人で全体の0.80%、2月には382人で全体の0.82%だった。

 今のところ、子どもの予防接種を求めて大量の中国大陸人が香港に殺到する現象は発生していないと理解できる。しかし香港当局は、過去の「越境出産」が巻き起こした問題を念頭に、大陸人の殺到に“予防接種”を施したと考えられる。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:CNSPHOTO)