LINE・Twitter・FB無料の格安SIM「LINE Mobile」が物議。通信の中立性、米国では規制も

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LINE・Twitter・Facebookのパケット通信は無料... メッセージングアプリのLINEが今夏に提供する格安SIM「LINE Mobile」が議論を呼んでいます。スマホで特定サービスのパケット料金をタダにする手法は「ゼロレーティング」と呼ばれ、日本以外でも米国やアジアなどで導入例があります。

しかしこの手法に、"通信の中立性"という観点から批判の声もあがっています。通信事業者が特定サービスの通信料金を無料にしてしまっては、ユーザーが質とは無関係に無料とされたサービスばかり使うようになり、無料とされないサービスを提供する側がジリ貧に。そして市場の健全性が損なわれ、果ては言論の自由まで失われてしまうという懸念です。

通信の中立性で物議をかもすLINE Mobile

LINE Mobileは、LINEが2016年夏のサービス開始を予定するMVNO、いわゆる格安SIMです。NTTドコモ網を利用するためエリアはドコモと同等。月額500円から利用できます。

特徴的なのは、LINEのデータ通信(トーク・タイムライン・無料通話)が全プランで無料となる点です。さらにオプションとして、FacebookとTwitterの主要なデータ通信が無料になる「Unlimited Communication」を用意します。これにより、3大SNSのLINE・Twitter・Facebookのデータ通信が無料で使えるようになるわけです。なお将来的には、大量のデータ通信が発生するLine Musicなどの音楽ストリーミングや、動画サービスのパケット無料化も検討しているといいます。

このように、特定のサービスのパケットを無料化する「ゼロレーティング」は、消費者からすれば聞こえはいいのですが、無料とされないサービスの提供側から見れば不公平極まりません。

米国では動画見放題SIMが議論に


一方、通信サービスで先を行く米国では、第3位の携帯キャリアT-Mobileが、Hulu・NetFlixなどの主要な動画サービスのデータ通信料金をタダにする「Binge on」を昨年11月に開始しています。こちらも、YouTube(後に追加)や零細の動画サービスが無料の対象外であることから、通信の中立性に違反するのではないかという批判が米国内で沸き起こりました。

米T-Mobile CEOのJohn Legere氏

なお米国では、政府機関のFCCが通信の中立性について強制力のある規則を設けています。このため、FCCによるBinge onへの判断が注目されました。

しかしFCC委員長のTom Wheeler氏はBinge onについて「非常に革新的で競争力が高い」と半ば賞賛。ネット中立性に関する監視を続けると表明したものの、先んじた規制でイノベーティブなサービスの腰を折ることはしたくないという立場で、半ば黙認しているのが現状です。

とはいえBinge onに対する批判は継続しており、スタンフォード大学のインターネット中立性に関する専門家は、Binge onがインターネットのオープン性に害を及ぼすとして、その違法性を主張するレポートをFCCに送り話題になりました。

ゼロレーティングは日本でも広がりをみせるが...


日本ではどうでしょうか。総務省は2006年に通信の中立性に関する議論を行いましたが、現在までに明確な指針を出すには至っていません。日本インターネット・プロバイダー協会が独自のガイドラインを策定するに留まっているのが現状です。

一方で国内市場では、LINE Mobile以外にFREETELやJ:COMといったMVNOがゼロレーティングに参入。今後さらに参入が相次ぎ、大手キャリアもゼロレーティングを行うようになれば、通信の中立性に関する議論はますます大きくなることが予想され、その前に明確な指針の策定が求められます。

ただゼロレーティングは、サービスとの組み合わせ次第では、通信サービスにこれまでにない多様性を生み出せるのも確かです。消費者の観点からも、うまく利用すれば通信費の節約に繋がるでしょう。横並び感のある通信市場の新たな競争軸としてゼロレーティングが浮上するなか、サービスとしての革新性を維持しつつ、一定の通信の中立性をいかに担保できるかが今後の肝になりそうです。