萩本:おい、ハッキリしろよこの野郎!お前の生き方汚いよ、堺さんに世話になって俺に世話になったってさ、な?
堺:お茶飲んでる場合じゃないよ!

小堺一機は、堺正章派なのか?萩本欽一派なのか?
芸能界で師匠と仰ぐ2人に問いつめられ、目を宙に泳がせる小堺一機。いったいどうしてこんなことになったのか。『ごきげんよう』最終回の一つ前、3月30日昼から事件は始まっていた。


3月30日12:55 『ライオンのごきげんよう』


レギュラー放送枠ではこの日が最後の通常放送。ゲストは明石家さんま・関根勤・中山秀征の「いただきます・ごきげんようを知り尽くした男たち」。

明石家さんまと関根勤は共に『いいとも!』の金曜レギュラーだったことがあり、『いただきます』のオープニングで小堺一機と「ミニ演芸コーナー」を繰り広げていた。中山秀征もお笑いコンビ「ABブラザーズ」として『いただきます』のアシスタントをしていた。

というわけで、この放送では当時の懐かしい映像を振り返るのが中心に。さんまが「京子ちゃん」ネタで軽くスベっていたり、関根勤が『ごきげんよう』の代理司会でテンパっていたり、中山秀征が生コントを披露していたりと、貴重な映像が流れる。

そして番組の最後。「サイコロの目を考える雑談会」というミニコーナーが突然始まった。この日の夜に放送される『ごきげんようゴールデン!』で萩本欽一と堺正章がサイコロトークをするため、そのサイコロの目を3人で考えようというのだ。

さんま:あーなるほど、要するに初めてのキスとか聞いたらいいのか。
小堺:聞けます聞けます
さんま:聞きたくないな〜(笑)大将そんな話絶対せぇへんやんか
関根:しない。しないと思う。
中山:聞いたことないですね
さんま:デートの話もしないし、堺正章さんもそんな話しない人やから、そんで小堺の初めてのキス知らんし……お前、どこやってん?(笑)
小堺:俺、初めてのキスは、浅草小学校の体育館倉庫(笑)
関根:なに?保健の先生?

雑談でゲラゲラ笑いつつ、各自サイコロの目を考えてフリップに書く。この時点でフリップの内容は明かされず、今夜の放送をお楽しみに! とエンディングに。ちなみに、今回のゲスト3人が『ごきげんよう』名物の「席替え」を最後に行ったゲストとなった。

3月30日19:00 『ライオンのごきげんようゴールデン!』


その夜。『ごきげんよう』最初で最後のゴールデン特番、『ライオンのごきげんようゴールデン!大物だらけのサイコロSP』が放送された。

せっかく夜の放送なのでと、“裏番組の司会者”たちの元へ出張サイコロに行く小堺一機。読売テレビ(日本テレビ系列)の『ミヤネ屋』放送終了直後のスタジオを突撃し、ミヤネ屋の番組セットの中で宮根誠司がサイコロを転がすという、時空が歪む映像が流れたりした。

番組のラストに満を持して登場したのが、萩本欽一と堺正章。小堺一機が「師匠」と仰ぐ2人である。実はこの2人、今回がテレビ初共演。師匠たちは2人がけのソファに並んで座び、その向かいに小堺一機が座る。

もちろん大人しく座っている2人じゃない。萩本がスパイダースとコント55号の思い出を長々と話だそうとすれば、堺が「止めろよ!この人の話を」と小堺に飛ばし、わちゃわちゃ話出したところに♪テロレンテンと終了を告げるチャイムが鳴れば、「「うるせぇな!!」」と2人で上を見て叫ぶ。

約10分後、ようやくサイコロが登場。今日のサイコロの目を並べたボードが現れた時、萩本欽一と堺正章が一つの目に釘付けになった。

「堺さん派?大将派? 明石家さんま」

昼に放送していた「サイコロの目を考える雑談会」で、明石家さんまが仕込んだ目がこれだったのだ。「これ聞きてぇよ!」「サイコロいらない」「いらないよな!」と食いつく師匠2人。

堺:もうね、サイコロいらないから
萩本:そうそう、ちょっとこれ転がしちゃったとするよ?(サイコロを手で持って転がす)♪トントントンタカタカラララ〜ドコドン、ドン!
堺:さぁ来た!これだよ、これ行こうよ!
小堺:……はい出ました!堺さん派か?大将派か? Which do you like better !?
\Which do you like better?/

これで話は冒頭の場面に繋がる。
「こいつがさ、ちゃんとしたこと言うと思う?」「笑いを取りながら納得させるか……この人の芸の厚みを今日見れるね」「正直に言うだけじゃ芸じゃないんだよな」と師匠2人が並んでプレッシャーをかける中、本気で困った様子で目を泳がせる小堺一機。「……する仕事によります」と絞りだすと「具体的に言わなきゃわかんない」「どういう仕事ですか?」と師匠2人が噛みつく。

小堺:でも、織物のこの、西陣織のように、堺さんの糸と萩本さんの糸というのがあるわけですよ。実際問題。するとそれが一緒の時もあるんですよ。

ミュージカルでは堺に自信を持ちつつ謙虚に歌う姿勢を教わった。萩本からも「テレビで歌うときは照れて歌うな」と教わった。そうした積み重ねが、つづれ織のようになっていると。

小堺:だから割合で言うと、大将の難しさよりも堺さんの方がわかりやすいんで、堺さん派かもしれません

この一言にスタジオは爆笑に包まれ、堺正章は立ち上がって小堺一機とがっちり握手。その様子を萩本欽一がアゴに手を当てて見つめる。

ひとしきり場が盛り上がったあと、萩本が「正直今の言葉を聞いて、俺がどういう風に受け取ったかというとだね」と話しだした。

萩本:この場で、マチャアキ派だよってこいつ言っただろ。この時一瞬思ったのが……こいつね、今まで弟子と思ったことないの。
堺:なんだと思ってたの?
萩本:通行人?俺の前の(笑)フラーっときた怪しげな通行人。ホントにこいつのことね、ずーっと遠くのほうにいましたよ。ところが、この2人でマチャアキの方を取ったってことはだね、これはね、この師匠は何を言っても平気だってことに気づいたんですよ。だとするとこいつはひょっとしたら弟子かもしれないと思った。俺、すっげぇ気持ちよかったもん。小堺お前、よく言ったなぁ〜。

萩本をじっと見つめる小堺の目が、じんわりと潤んでいるように見えた。そういえば、3月25日の放送で浅井企画の後輩芸人たちに事務所に入った当時のことを語っていた。

小堺:事務所入って(大将に)挨拶行きたいって言ったら、行こうって言ってくれたんだけどマネージャーさんが。大将に言ったら「会いたくねぇ」って言われたつって。そういうテレビで素人で出てきたやつは好きじゃないからって。

事務所に入ってからも長い間相手にされず、弟子と思ってもらえず、31年半『いただきます』『ごきげんよう』を続け、60歳の節目でやっと師匠から「弟子」の言葉をもらう。盟友の明石家さんまが仕掛けたサイコロの目によって。

しみじみと言葉を噛み締めているところに、♪テロレンテンと終了を告げるチャイムが鳴った。3人が上を見て叫ぶ。

萩本・堺・小堺「「「うるせぇな!!」」」

最終回は……


3月31日の最終回は生放送。「31年半の大感謝!小堺一機独り舞台!」と題し、ゲスト無し・台本無しの放送だそう。果たして小堺一機はサイコロを振るのか、振らないのか。31年半の歴史が幕を下ろす。

(井上マサキ)