中国人のバイタリティーが完全に裏目に出た。高級薬材の冬虫夏草だ。2010年から2013年ごろまで価格が高騰、多くの人が業界に参画した。ところが、あまりにも多くの業者が乱立したため「生産過剰」になった。社会情勢の変化も加わって、価格が暴落した。それでも需要は低迷したままだという。

 冬虫夏草は蛾の幼虫に寄生するキノコの一種だ。中国では古くから、滋養強壮・精力増強、疲労回復、諸病治癒などに役立つとして珍重されてきた高級薬材だ。産地はおおむね海抜4000メートル以上の高原で、中国国内では青海省が生産量の6割以上を占めている。青海省は世界最大の冬虫夏草の取引場所でもある。

 青海省で、もう30年以上も冬虫夏草の取り引きをしてきたという男性によると、価格が高騰したのは2010年から13年ごろまで。とにかく飛ぶように売れ、だれもが1カ月で十数万元(現在のレートで15万元=約260万円)は儲けたという。

  中国ではすでに、2008年ごろから、乱獲による冬虫夏草の資源の枯渇が懸念されていた。生態環境の変化も資源の減少に拍車をかけたという。

 ところが2014年ぐらいから、「商売」が傾き出したという。需要が極端に落ち込み、価格が下落に転じた。歯止めがかからない暴落だ。国際的な「冬虫夏草産業」の主要地であるため、世界的な経済の低迷で国外の購買力も低下したことも影響したという。

 中国では高級薬材が「贈答用」に使われることが多い。ところが、習近平政権が打ち出した綱紀粛正で、冬虫夏草の贈答用ニーズががっくりと落ちた。売り上げはさらに落ちた。

 冬虫夏草の採取シーズンは5月から7月ごろまでだ。しかし取扱店では、2015年に採取した冬虫夏草がまだ大量に残っているという。店主らも暇をもてあまし、ガラスケースに突っ伏して寝ていたり、スマートフォンでゲームをしたりする姿が目立つ。

 2010年には、中国とインドが国境問題で対立する最前線で、中国人軍人が自国の実効支配地域から越境して冬虫夏草を採取することが相次いだ。インド側は警戒と取り締まりを強化したが、「軍事的脅威とは考えていない」との見方を示した。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF)