By HyperXP.com

ロシア・モスクワでチェスの世界チャンピオンに対する挑戦権を争うWorld Chess Candidates Tournamentが2016年3月10日から30日まで開催されています。勝者はチェス選手権最高位タイトルの「グランドマスター」保持者であるマグヌス・カールセン選手に挑戦することができ、世界中のチェスファンの注目を集めるトーナメントとなっていますが、突如として国際チェス連盟(World Chess Federation)が「インターネット生中継を行わない」と発表したことで波紋を呼んでいます。

There's a New King of the Chess Internet, and Fans Are Outraged - Bloomberg

http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-03-28/there-s-a-new-king-of-the-chess-internet-and-fans-are-outraged

国際チェス連盟がWorld Chess Candidates Tournamentを運営・放送するために雇用されたAGONが、今まで大会のインターネット生中継を行っていた他のウェブサイトに対して「生中継は許可しない」などのトーナメント放送に関する新ルールを発表しました。AGONが定めた新ルールでは「ゲーム終了まで他のウェブサイトはゲームの経緯や結果を発表してはならない」という厳しい内容も含まれています。

AGON代表取締役のIlya Merenzon氏はこの決定について「我々は多くの投資を投じたこのゲームから利益をかすめ取ろうとする悪のウェブサイトから、スポンサーの広告権を保護する必要があると判断しました」とインタビューで語りました。いくつかのウェブサイトは新ルールに反対していますが、AGONは反対を表明しているウェブサイトをモスクワ裁判所へ告訴するという事態に発展しています。

AGONによると生中継を希望するウェブサイトは有料公募に申し込むか、AGONの広告枠を購入する必要があり、これらの新ルールはWorld Chess Candidates Tournamentだけでなく、ニューヨークで行われる挑戦者とカールセン選手とのタイトルマッチにも適用されるとのこと。

これまでインターネット生中継を行っていたウェブサイトのほとんどは、チェス盤の動きをリアルタイム表示した上で、ゲームの動向に合わせてグランドマスターとファンによるコメントがスクロール表示されるニコニコ動画のような形式をとっているとのこと。この臨場感あふれるインターネット生中継には大量の視聴者が訪れており、SNS上でもファンからの猛烈な反対コメントが巻き起こっています。

これまでチェスのインターネット生中継を提供してきたウェブサイトの1つであるChessdomはすでに生中継の予定を廃止していますが、ウェブサイト上で「彼らは数百万人の人々から素晴らしいコンテンツを取り去ろうとしています」と反対の意を掲載しています。他のウェブサイトのファンの一部からは国際チェス連盟のイベント全てのボイコットを呼びかける声もあるとのこと。



なお、チェス愛好家の全てがインターネット生中継を視聴できないわけではなく、World Chessではこれまで通り無料でモスクワのトーナメントを生中継される予定。ただし放送は英語のみで、他のウェブサイトの放送で行われていた多言語放送が視聴できないことや、コメントシステムの技術が低いなどのクレームが世界中のファンから相次いでいるそうです。

AGONに告訴されているChessBombchess24.comは、予定通りモスクワトーナメントの生中継を行うと発表しており、chess24は「我々の顧問弁護士の助言によると、私たちの放送は完全に合法です」とコメントしているほか、ChessBombは「ボランティアの協力により安全なサーバーを取り次いで放送を中断されないようにする」と話しています。



AGONは新ルールに従わないウェブサイトに対して2000万ルーブル(約3300万円)の損害賠償を請求する予定。一方でChessdomのトップであるAnton Mihailov氏は「この決定は数百万人のチェスファンの反対で裏目に出る可能性があります。AGONはチェスブーム全体を停止させてしまうかもしれません」と話しています。