【日本代表コラム】“トライ”の成果と浮き彫りになった課題

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▽日本代表は、いつになく積極的な立ち上がりを見せ、選手たちが流動的にポジションを変えて攻勢を強めた。アフガニスタン代表戦ではチケットが売れ残っていたものの、シリア代表戦は完売。埼玉スタジアム2002に集まった5万7000人を超す観衆に加え、テレビの前で観戦した人たちも期待感に包まれたスタートとなった。

▽アフガニスタン代表戦(5-0)で採用した[4-4-2]から、これまでヴァイッド・ハリルホジッチ監督が採用してきた[4-3-3]へとシステムを変更。MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)やFW本田圭佑(ミラン/イタリア)、FW宇佐美貴史(ガンバ大阪)らをスターティングメンバーに戻した。

▽これまでの予選でやり慣れた形であり、万全を期してのシリア戦だった。結果を見れば5-0で快勝。2試合連続での5得点は評価できるだろう。また、シリア戦のみならず、ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選の全8試合を通じて、一度もネットを揺らされることはなかった。しかし、この試合でも攻守にわたって課題は残された。

▽まず、攻撃面では、2次予選で奪った27得点のうち、前半に奪ったのはわずかに7得点であり、後半の20得点との差は歴然だ。5-0で快勝したこの2試合も、前半はどちらも1得点。主導権を握り、攻勢をかけ、チャンスを作りながらも仕留め切れないシーンを何度も目にすることとなった。

▽90分間で行われるサッカーの試合だが、その中に流れは存在する。シリア戦では得点を重ねられなかったことで、前半の終盤には押し込まれるシーンが増えた。後半も、終盤の3ゴールを奪うまでは、幾度となくピンチにさらされた。最終予選であれば、仕留められてしまった可能性が高い。また、W杯本大会であれば、チャンスが訪れる回数すら少なくなる。長年の課題である“決定力”を高める必要性は、この先も続くことになる。

▽また、守備面では、フィジカルを使った強引な攻撃を受けた際に、ピンチを招くことが散見された。数的同数、または有利な場面でも、フィニッシュまで到達させてしまうことも課題だろう。アグレッシブに守り、イニシアチブを握っている展開では見えてこない課題も、攻め込まれる回数が増えるにつれ、ミスも増え、ピンチも増えた。

▽特に後半は、GK西川周作(浦和レッズ)の奮闘がなければ、無失点はおろか、白星さえ逃していたかもしれない。相手のミスに助けられた部分も多くあり、決して満足行く内容ではなかった。相手のレベルが上がる最終予選では、この2試合のような展開になることは考えにくい。攻守にわたる精度を高めることが重要となるが、代表としての活動が限られるだけに、必要なのは個々人のクラブでの努力に他ならない。

▽とは言え、この試合でも“トライ”は成功したと言える。試合後の検査の結果、鼻骨骨折、左眼窩底骨を骨折していたMF山口蛍(ハノーファー/ドイツ)の代わりにボランチの位置に入ったMF原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)は、アフガニスタン戦とは違う役割での起用となった。投入後はしっかりと守備にも参加し、アグレッシブなプレーを見せ、最後は得点まで奪ってみせた。守備面での貢献は多く期待できないが、前への推進力は間違いなく増大し、カウンターでも最前線まで飛び出すなど、3列目の選手として新たなオプションを見せてくれた。

▽課題は残ったものの、日本が2次予選を8戦無敗で終え、無失点で突破したことは評価されるべきだろう。もちろん、過信も慢心もいけないことだが、最終予選に向けた第2段階のスタートとしては上出来と言える。最終予選スタートまで半年。今後は、代表候補となる選手の各クラブでのプレーに注目だ。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》