シリア戦で厳しいマークに遭った本田。最終予選ではより警戒されるが、その厳しい守備網を突破できるか。写真:(C)SOCCER DIGEST

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「この2試合の目的は、勝利、無失点、できるだけたくさんのゴールを奪う」

 3月17日のメンバー発表会見で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は力強い口調でそう言った。

【W杯アジア2次予選第8戦・PHOTOハイライト】 日本 5-0 シリア(2016年3月29日)

 
 アフガニスタン戦に続き、シリアとの首位攻防戦も5-0と勝利。言うまでもなくワールドカップのアジア予選でなにより重要なのは結果であり、その意味で見事に“公約”を果たした指揮官は称賛されて然るべきだ。

 しかも、アフガニスタン戦では現体制下で初めて4-4-2システム(中盤はダイヤモンド型)を試し、チャレンジ的な姿勢も見せている。従来の4-3-3ではボランチで起用した柏木陽介を中盤のサイドに抜擢。後半に高さのあるハーフナー・マイクを投入し、さらに小林悠(怪我で途中離脱)ら“新顔”をピッチに送り込むなど、有意義なテストをできたのだから、ハリルホジッチが「美しい勝利」と満足そうな表情を浮かべたのも頷ける。

 ただ、引っ掛かるのは本田圭佑の言葉だ。アフガニスタン戦の2日後、3月26日に報道陣の囲み取材に応じた彼のコメントが、今も頭に残る。

「(アフガニスタン戦での)大差の勝利は評価されるべき。でも、厳しい部分に目を向けないといけない。岡崎の1点がなかったら、ああいう展開にはならなかった。前半30分までの(日本の)戦い方を見る限り、昨年のイラン戦で出た課題は解消されていない。

 チームに競争が必要なのは当たり前だけど、(アフガニスタン戦では)競争を計り得る状況下ではなかった。予選を戦ううえで、そのレベルというのはアジア全体で世界的に見ると不利。ワールドカップに向けた準備のなかで、このレベルでしか2年間戦えない」

 誤解を恐れずに言えば、「このレベル」にはおそらくシリアも含まれるだろう。

 となると、そのシリアに一度ならずカウンターで冷や汗をかかされたのは看過できない。左SBの長友佑都曰く「3点取られてもおかしくなかった」シリア戦で守備の脆さを露呈した事実は、違う言い方をすれば、シリアより格上と戦うだろう最終予選で日本があっさり失点しても不思議はないということだ。

 もちろん、シリア戦で何度もカウンターを食らったのは原口元気を本職ではないボランチで使ったからとのエクスキューズはあるが、それでも不安は拭えない。「このレベル」の相手と戦っても、日本はバタつく時間帯が少なからずあった。

 アフガニスタン戦では岡崎慎司の先制点が決まる40分過ぎまで、シリア戦ではオウンゴールで先行した17分から2点目を奪う66分までの約40分間、むしろ苦戦した印象がある。日本が強さを見せつけたのは、シリア戦の前半30分過ぎまでだった。

 シリア戦の序盤、日本は2次予選でもっともスペクタクルな攻撃を展開した。酒井高徳、長谷部誠、岡崎慎司らが連動した8分の決定機、本田、岡崎、酒井高の3人が軽快なパスワークからフィニッシュに持ち込んだ26分の絶好機は、間違いなく「グラウンダーのパスでスピーディに崩す」と言うハリルホジッチ監督が理想とする形だった。

 しかし、そうした攻撃も時間の経過とともに影を潜めた。試合運びの拙さは、長谷部も認めている。

「立ち上がりから良い形でゲームに入れたと思いますが、30分を過ぎたあたりから少し落ちてしまった。立ち上がりの強度を90分間続けるのは、今の自分たちのコンディションなど様々な面を考えれば難しい。まだまだだと感じました。試合を進めるなかで、行くところ、行かないところのメリハリをつけてプレーするのが大切。そういう意味では、試合運びにも課題が残ったかなと思います」
 
 
 2次予選を8戦無敗(7勝1分)。しかも27得点・無失点で首位通過と確かに“見栄えは良い”。ただ、日本代表は強かったのかという疑問は付きまとう。忘れてはならないのは、本田のコメントにもあった「昨年のイラン戦」だ。

 前半はイランのパワーとスピードに屈し、先制点も許している。後半はやや持ち直したものの、日本以上にイランの強さと狡猾さが際立った試合だった。9月からスタートする最終予選では、そういう相手と戦うことになる。

 昨年10月のイラン戦から成長した部分もあるだろうが、正直、3月シリーズの2試合で日本代表の強さは測れない。いずれにしても、最終予選では日本らしさ(ハリルホジッチ監督の言葉を借りれば「グラウンダーのパスでスピーディに崩す」)にこだわり過ぎず、“対戦国の長所を消す”戦い方も間違いなく必要になる。

 自分たちのやり方を押し通すだけでは、試合を支配できない。それを気付かせてくれたという意味で、シリア戦は日本にとって良いレッスンになったはずだ。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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