手倉森ジャパンにとって、リオ五輪アジア予選突破後、初めての活動となったポルトガル遠征。アジア王者の称号をひっさげて、今度は世界と戦う準備の旅に出たことになる。対戦したのはロンドン五輪王者であるメキシコの五輪代表と、ポルトガル有数のビッグクラブ、スポルティングのBチームという、申し分ないマッチメイクだった。

 初戦の相手メキシコには2−1と勝利。メキシコは日本戦の後に行なわれた「ポルトガル戦に重きを置いていたようだ」と手倉森誠監督は語っていたが、そのポルトガル戦も0-4と大差で敗れている。ただし主力を数人欠いており、本大会にメキシコがこの姿で現れるとは限らない。

 それは日本も同様だろう。第2戦は若手中心のスポルティングBに1−1の引き分け。悪くない結果を出したが、このまま本大会で通用するほど甘くはない。

 スポルティング戦はメキシコ戦と正反対の展開になった。メキシコ戦から先発を6人入れ替えた日本だが、前半はスポルティングBに試合を支配され、なかなかボールを奪えない時間が続き、10分にPKで失点。後半になってスポルティングは次々とU−19の選手を投入する。すると日本はしだいに盛り返し、76分に原川力のPKで追いついた。

 五輪アジア予選から2ヵ月がたって行なわれた今回の遠征で、あらためて感じられたのは、予選メンバーの成熟度であり、一方ではチームとしての伸びしろの難しさだった。

 例えばメキシコ戦では、遠藤航のボール奪取から中島翔哉が運び、久保裕也が落として南野拓実が得点したシーンがあった。長い時間をともに過ごしているからこそのイメージの共有であり、「同じ絵を描けている」と指揮官は語った。

 だが、逆にそれはこのチームの現在の課題でもある。他のメンバーが入ったとき、その流れの中でプレーすることは難しい。"あうんの呼吸"は一朝一夕に構築できるものではなく、それが新メンバーの加入を意図せずに阻んでいるという側面がある。

 チームは対アジアから対世界へと戦いをシフトしていかなくてはならない。五輪アジア予選のように、受け身に回りながらタイミングをうかがい、一発の攻撃で仕留められるほど世界は甘くない。急なシフトチェンジができるわけでもないから、五輪アジア予選のメンバーで成熟をはかりつつも、刺激的な新メンバーの出現が待たれるわけである。

 刺激的な新メンバーは同世代の選手かもしれないし、最終的にはオーバーエイジという形でもたらされるかもしれない。五輪の登録メンバーはW杯などの23人ではなく18人。オーバーエイジを最大3人起用したら、U−23世代の選手は15人ということになる。

「この世代を成長させたいという気持ちでやっている」という手倉森監督は、オーバーエイジ枠の採用に関して現時点では明言をしていない。「対戦国が決まってから決める」と話しているのはおそらく本音だろう。

 今回の遠征では、新たに選ばれたメンバーが、五輪アジア予選メンバーを脅かすことの難しさが目に付いた。それでも五輪代表入りへ向けて、彼らの意識は高い。初招集となったファンウェルメスケルケン・際は「何をレベルアップすればいいかが明確になった」と、収穫を口にする。呼ばれなければわからないことは多い。

 中島、南野、豊川雄太、久保などが控える攻撃的MF、FWでは、金森健志、鎌田大地も存在感を発揮した。金森はメキシコ戦で、鎌田はスポルティング戦で途中出場。流れを変え、起点を作ることに成功した。中盤とのやりとりもスムーズで、可能性を感じさせた。こうした新たな選手の出現こそ、チームを向上させるはずだ。

 手倉森監督は「オーバーエイジは使わないとはいっていない。が、使うといわせないようにやってくれている」と、そんな選手たちを評価している。五輪代表チーム作りは最終段階の悩ましい時期にさしかかっている。そんなことが見て取れた2戦だった。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko