次期国連事務総長選に出馬表明しているダニロ・テュルク前スロベニア大統領が日本記者クラブで会見、国連が直面している問題に、不退転の決意で取り組む姿勢を示した。特に難民問題や国際テロリズムへの対応能力を増強していく必要があると強調した。

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2016年3月29日、次期国連事務総長選に出馬表明しているダニロ・テュルク前スロベニア大統領が日本記者クラブで会見、国連が直面している問題に、不退転の決意で取り組む姿勢を示した。難民問題について、「国際システムを進化させないと対応できず、今の国連では困難だ」として、対応能力を増強していく必要があると強調した。国際テロリズムに対しては、事前に予防するために国家間の情報共有システムづくりに向けた協力を訴えた。

テュルク氏は今年末に任期が切れとなる国連・潘基文(パン・ギムン)事務総長の後任候補として立候補しており、今回の来日中、安倍晋三首相とも会談した。発言要旨は次の通り。

国連事務総長選挙に立候補した理由は、「経験」「コミットメント(約束)」「ビジョン(構想)」の3つの言葉に集約される。

(1)経験=国連では30年以上にわたり、安全保障理事会や事務総長の補佐など多くの任務を経験した。
(2)コミットメント=国連は国際機関として不可欠な存在である。あらゆる国が加盟、包摂性を有し、社会文化の基盤となっている。世界は国連を必要としている。
(3)ビジョン=世界の発展のためには、法的ルールづくりとその尊重が重要である。具体的には、平和安全、持続的な開発、人権の保護などを推進する。平和維持活動、国際反テロ活動に力を入れる。パリで合意に達した気候変動など17項目の持続可能な開発目標(SDGs)の実現へ努力したい。最近10年間に人権へのニーズが拡大したため、人権委員会を拡充し、新たな国際的な規範づくりに取り組む

紛争の解決には国際的な平和安全維持体制の確立が不可欠である。国連憲章の中に「平和への脅威」の概念があり、安全保障理事会が対応できる。安保理決議は法律のようなもので、国連憲章の下でつくられている。行動に際しては安保理の承認が出る。制裁や武力の行使もありうる。

世界の紛争に対しては、自ら紛争地に行くケースと、特別代表を指名して現地に派遣するケースの両方を組み合わせて、解決したい。実態が疑わしい時には事務総長の介入は必要だと思う。

国際テロリズムに対しては、事後対応ではなく事前に予防することが大事だ。国家間の情報共有伝達システムづくりが遅れており、さらなる協力が必要だ。法的な枠組みも重要である。

欧州の難民問題をめぐるEU(欧州連合)・トルコの合意は暫定措置であり、解決策にはならない。この問題は国際法上、深刻で、危機は深く包括的な長期解決策を追求すべきだ。

戦乱や政治的迫害で故国を追われた難民の問題は、国際システムを進化させないと対応できず、今の国連では困難だ。対応能力を増強していく必要があり、組織と資金が必要となる。就職や教育などの問題への対応も必要だ。

難民の向こう側に高い生活水準を求め先進国を目指す移民の問題がある。これまで各国は見て見ぬふりをしてきた。もう直視しないといけない。事務総長に当選した場合は移民の国際的管理をもっと検討していかなければならない。(八牧浩行)