中国メディアの現代金報は29日、日本で新安保法が施行されたことを強く警戒する記事を掲載した。同記事は専門家による「安倍首相と自民党にとって、G7(伊勢志摩サミット)は広告の絶好の舞台」との、日本の外交攻勢も警戒する指摘を紹介した。環球網など、中国の他のメディアも同記事の転載を始めた。(イメージ写真提供:(C)Mykhaylo Palinchak/123RF.COM)
 中国メディアの現代金報は29日、日本で新安保法が施行されたことを強く警戒する記事を掲載した。同記事は専門家による「安倍首相と自民党にとって、G7(伊勢志摩サミット)は広告の絶好の舞台」との、日本の外交攻勢も警戒する指摘を紹介した。環球網など、中国の他のメディアも同記事の転載を始めた。

 記事は、清華大学当代国際関係研究員の劉江永副院長の解説を、多くの文字数を使って掲載。専門家個人の意見表明だが、メディアとして賛同したからこその詳解と言ってよい。

 劉副院長はまず、安倍政権の狙いは、日本国憲法の修正にあると指摘。新安保法の施行で、平和憲法は「架空化」されたと主張した。

 劉副院長は、「安倍首相と自民党にとってG7(伊勢志摩サミット)は広告の絶好の舞台」と警戒。安倍首相の戦略としてはまず、「東シナ海や南シナ海の問題を口実にすることで日本の新安保法を美化する」と予測。そして、過去の侵略の歴史に触れられることを回避して、「積極平和主義」を宣伝することになるという。

 劉副院長はさらに、安倍政権は南シナ海の問題をG7の議題として取り上げる意向と報じられていると紹介し、実際に議題になれば、G7のメンバー国の多くは南シナ海の問題と直接の関係がないだけに、「その他のメンバー国は日本の主張にかなりの程度、同調する」との考えを示した。

 劉副院長はさらに、安倍政権は「日本はやられている」と、世論を巧みに誘導していると主張。例えば、文部科学省による高校の歴史教科書の検定の結果、尖閣諸島などが日本領と強調され、南京事件の記述が削減されたことで中国や韓国から批判が相次いだことで、「安倍政権は国内世論から“同情”を得ることになった」と分析した。

 劉副院長は尖閣諸島の問題について「たとえ、事実による論拠からも、歴史や国際法からも、日本の主張が成り立たないとしても、日本政府が宣伝攻勢を続けることで、国際世論も日本国民の理解も、日本政府に引きずられて進むことになる」、「その他の国が主権を維持するために合法的な行動を取っても、日本政府が右翼的思想を宣伝するための話題になってしまう」と警戒感を示した。

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◆解説◆
 劉副院長が尖閣諸島などを「自国領だ」と、どの程度確信しているかは不明と言わざるを得ない。記事通りなら自国領と確信しているに違いないが、現在の中国では重要国策について共産党・政府以外の見解を公表することは、「身の安全」にも関わることになってしまうからだ。その点、ごく少数ではあり、厳しい批判を受けるが「尖閣諸島は中国のもの」と主張する専門家が存在する日本とは、大いに事情が異なる。

 いずれにしろ、劉副院長は、「中国外国の手詰まり感」を示したと言ってよい。中国が日本批判をすればするほど、安倍首相は支持を固めてしまうという、日本国内および国際世論形成のメカニズムを分析している点でも興味深い。

 中国当局は尖閣諸島など東シナ海や、南シナ海で発生した領土・領海・支配水域の問題で、強硬な主張や行動を続けてきた。大きな理由の1つは、この種の問題で政権側が「妥協的」な姿勢を見せると、国民から「弱腰」と非難される危険が大きいことだ。
 まして中国では国内で深刻な問題が多発していることで、共産党の威信が大いに揺らいでいる状態だ。そのために対外的には強く出ざるをえない。しかし強く出れば、国際世論の支持を失う。劉副院長が「では、中国はどうすればよいか」に言及していないことからも、中国にとって事態の打開策が容易に見いだせないことが、よく分かる。

 なお、伊勢志摩サミットは、4月から9月に渡って実施される世界の主要7カ国の首脳・閣僚会議の総称だ。5月26-27日に三重県伊勢志摩市で行われる首脳会議による命名だが、冒頭の4月10-11日の外相会議は広島県広島市、5月20-21日の財務相・中央銀行総裁会議は宮城県仙台市など、日本各地でそれぞれの会議が実施される。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:(C)Mykhaylo Palinchak/123RF.COM)