25日、村井嘉浩宮城県知事が記者会見し、東北の太平洋岸線で、高い防潮堤を築いて将来の津波被害を食い止めようという計画が進められていることについて「今から考えれば、内陸の安全なところに移った方がコスト的にも良かったのではないかという問題はある」と指摘した。

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2016年3月25日、村井嘉浩宮城県知事が日本記者クラブで会見し、東日本大震災後の復興状況などについて語った。太平洋を望む東北の海岸線で、高い防潮堤を築いて将来の津波被害を食い止めようという計画が進められ、一部が完成したことについて、「震災直後は、被災者の感情を重視し、コミュニティを守ることに主眼が置かれた」としながらも、「今から考えれば、内陸の安全なところに移った方が将来的にもコスト的にも良かったのではないかという問題はある」と指摘した。その上で、「(住民感情に流されず)腹をくくった政治リーダーが日本には少ないと感じる。いつ死んでもいいという西郷隆盛のような人がいない」と嘆いた。

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建設が進んでいる防潮堤は、岩手、宮城、福島の3県で総延長約400キロ。総工費は1兆円以上で、内陸部への集団移転に比べコストが膨大だ。津波への備えとはいえ、徐々に姿を現す巨大なコンクリートの壁に、住民からは戸惑いの声も上がっている。

これに関連して村井知事は「建設中の防潮堤の高さは、1000年に一度と言われる東日本大震災級の地震津波では逃れきれない。約50年に1度宮城県を襲う地震に耐えられる程度だ」と語った。

村井知事は「国の支援を得て復興は順調に進んでいる」とし、その事例として、(1)農地の大規模化、(2)再生可能エネルギーを活用したスマートタウンの形成、(3)漁港機能の集約化、(4)広域防災拠点の整備、(5)仙台空港の民営化、―などを列挙した。

問題点としては、「短期間に膨大な規模の復旧、復興工事が実施されたため、建設業界を中心に、人で不足や資材の高騰を招いた」とし、「5年間という復興期間を設定したのは適切だったか」と疑問を投げかけた。また、東北の石油備蓄基地などが大地震で壊滅的打撃を受けた場合のガソリンなど燃料供給体制の再構築が遅れていることも最優先課題に挙げた。(八牧浩行)