さまざまな大企業との共同研究や地域での実践によってイノヴェイションの生態系をデザインする企業がある。4月開講の「WIRED Business Bootcamp」には、「イノヴェイションの建築家」を標榜するリパブリックの共同代表を務める内田友紀が登壇し、企業・組織などにおいてイノヴェイションを生み出すための「変革コミュニティ」について講義を行う。

内田友紀|YUKI UCHIDA
リパブリック共同代表。早稲田大学理工学部建築学科卒業。リクルート勤務後、2012年イタリア・フェラーラ大学大学院にてSustainable City Designを専攻。持続的な都市を包括的にデザインする人材育成を標榜するプログラムにて、イタリア・チリ・ブラジル・ ベトナムなどで地域計画プロジェクトに携わる。同年ブラジル州政府にインターンシップ参加し、国連サステナブルシティ・アライアンスの事業に従事する。14年より現職。
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「【BBC、4月開講!】イノヴェイションは1人では起こせない! 「創造的コミュニティ」をつくる方法論」の写真・リンク付きの記事はこちら

リ・パブリックはイノヴェイションの源泉が人にあるとし、実践(Do)を経て、そこから見えてくる状況を研究(Think)し理論へと循環させる“Think&Do TANK”。イノヴェイションの創造を、科学的で理論的な「実学」として捉えている組織だ。

建築家が用途・立地・社会的な意義を考慮し、建物を数値と理論で組み立てていくのと同様に、彼女たちはイノヴェイションが持続的に起きる生態系を「設計」し、育てようとしている。

そしてリ・パブリック共同代表の内田友紀は、イノヴェイションを育むためには、その土壌となるコミュニティの創造が鍵を握るとしている。

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40名限定!「WIRED Business Bootcamp」受講者、募集中

『WIRED』日本版とデジタルハリウッドが、20〜30代の次世代を担うビジネスパーソンに向けて提供する「WIRED Business Bootcamp」(BBC)。半年にわたって開催されるプログラムでは、「データ」「コミュニティ」「メディア」「ストーリー」そして「デザイン」の5分野の最先端にいる講師陣が、それぞれの専門領域をテーマに連続3回の講義とワークショップを行う。

BBC、受講者向け説明会の実施スケジュール

申込みの締切は2016年3月31日。受講するには、3月中に開催される説明会への参加が必須となる。説明会の日程およびプログラムの詳細は、以下および、WIRED Business Bootcampサイトにて。

第1回説明会:2月20日(土) 14:00〜15:30(終了しました)
第2回説明会:3月6日(日) 14:00〜15:30(終了しました)
第3回説明会:3月13日(日) 13:00〜14:30(終了しました)
第4回説明会:3月26日(土) 14:30〜16:00(終了しました)

追加説明会を実施します!:3月26日(金) 19:30〜21:00(終了しました)

──講義テーマは「機能するコミュニティ」とのことですが、どのような内容になるのでしょうか?

わたしたちは、ともにイノヴェイションの生態系をつくるべく、企業や自治体や大学など組織の区分を超えた取り組みを続けてきました。コミュニティとはある文化や背景を共有する集団そのものであり、人はそこで自身の強みや弱みを捉えつつ、新たな価値をともに生み出していく。その変化を起こす「変革コミュニティ」について、皆さんと探求したいと考えています。

例えば、わたしたちは味の素、コクヨ、花王、トヨタ、小林製薬など、イノヴェイションを牽引してきた大企業と共同研究を行い、「シリアルイノヴェイター」が組織のなかでどのように生まれていくのかを追求してきました。

シリアルイノヴェイターとは、重要な社会の的課題を解くを解決するアイデアを生み出し、その実現のために企業内のリソースを活用して新しい技術やサーヴィスを開発し、市場に送り出すというプロセスを何度も繰り返すことのできる人材です。希少な存在ですが、成熟した大企業には必ず存在してきた人々です。

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わたしたちが、シリアルイノヴェイターを生み出す環境として着目してきたひとつに、人のネットワークコミュニティ創造の重要性があります。シリアルイノヴェイターとなる人は共通して、社内外で協力者を集め「変革を起こしていくコミュニティ」を組織することを通して、イノヴェイションを成功させてきました。

「WIRED Business Bootcamp」では、潜在的なイノヴェイターに向け、ワークショップを交えながら自らの課題に向き合い、アイデアを実現するためのコミュニティのあり方を考え、実践につなげていけたらと考えています。

──変革を起こしていくコミュニティとはどのようなものなのでしょうか?

シリアルイノヴェイターは、現状や未来における社会の課題をとらえ、それと対峙しながら組織の資源を再編集することで、課題を解いていきます。

ある日、上司から「新規事業をやれ」と言われて「何か考えなきゃ。いま『IoT』ってバズワードだよな、何かいいネタないだろうか?」と焦ってインターネットで情報収集、といった社内政治の事情からスタートしても、イノヴェイションは生まれません。

自社が社会に提供する価値を十分理解し、世の中で必要とされている課題と出合い(わたしたちはこれを「『ライトプロブレム(right problem:正しい課題)』の発見」と呼んでいます)、組織の資源を捉え直しながら解くプロセスが求められます。

シリアルイノヴェイターの多くは50〜100年存続している企業にも、脈々と存在しています。それは各時代におけるさまざまな課題に対して、自社の価値を読み換え、組織自体に変化を起こしてきたということにほかならないのではないでしょうか。

ライトプロブレムを発見できてもそれはあくまでスタートライン。次は、実際に組織を動かし、事業化しなければイノヴェイションはかたちになりません。

事業化はどんなに優秀なイノヴェイターであっても、1人だけの力では不可能です。企業内外の人のネットワークを駆使し、ともに変革を起こしていくためのコミュニティを形成する必要があります。わたしたちはそのコミュニティの創造を、実学的に行うことを目指しています。

──イノヴェイターが新事業計画を提案して上司を説得し、ともに事業を行う仲間を見つけたとしましょう。ただそのとき、業態も社風も多様な組織に適用できる「戦い方」は見出せるものなのですか?

わたしたちはシリアルイノヴェイターの方々にインタヴューを行い、得られた知見を体系化し、彼らのパーソナリティやネットワークのあり方などを見出してきました。研究会では、アメリカと日本の企業の両方を参照して研究を行ったのですが、イノヴェイター本人の特質は驚くほど似通っていました。もちろん、企業の風土や社会への提供価値はそれぞれです。が、そこで変革を起こす「人」には、多くの共通点があったのでした。例えば、シリアルイノヴェイターをとりまく、人のネットワークで共通して見出されたのが「ナナメの関係」です。

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組織において自分と「タテ」の関係をもつ人物とは、同じ部署に属している上司や経営者などのこと。「ヨコ」の関係をもつ人物とは、同僚などにあたります。その一方で自分と「ナナメ」の関係をもつ人物というのは、自分とは非直属の関係にあり、かつ自分に影響を与える管理職よりも上の地位の人です。他社の経営者や他部署に所属している副社長など(往々にして、シリアルイノヴェイターとしての先輩)が、この関係にあたります。

こうした人物は直接評価する・される関係にないため、シリアルイノヴェイターのメンターとして最適な人物です。というのも、シリアルイノヴェイターはいい意味で会社の「はみ出し者」です。社内の同じ部署には敵も多く、上司にもにらまれていることが多い。そうした、彼らが自らの事業プランを相談でき、自身をあと押ししてくれる存在がナナメの関係にあたる人だったのです。

ナナメの関係は、これまでのさまざまなイノヴェイター研究でもあまりフォーカスされてこなかった関係性であり、偶然性によって生まれていることも多い。シリアルイノヴェイターは出現率が低いこともあり、個々は変人扱いをされがちです。次世代のイノヴェイターの活躍のためにも、シリアルイノヴェイターとそれを取り巻く環境は今後も考えたいテーマです。

──そうした関係性によってイノヴェイションを成功させているのは、どんな企業なのでしょうか?

例えばウォシュレットを発明し、トイレのイノヴェイションを牽引してきたTOTOはとてもユニークな会社です。特に茅ヶ崎の総合研究所は「人づくりの道場」ともいわれ、さまざまな人材が行き来しています。

ここには、人事異動発令なく最大6カ月、研究所と事業部の間を行き来できる制度があります。また、研究開発者自身の業務配分も非常にユニークです。例えば、通常ならば短期(現場の課題解決など)・中期・長期(次世代のコンセプトメイキングなど)の取り組みは担当が分かれていることも多いですが、総合研究所では1人の研究者がすべてに携わります。これらによって、技術の「種」をもつ研究者が事業開発に関わり、事業部の担当者が研究の最先端に触れることを可能にしているのです。いわば、組織やプロセスのバウンダリーと時間のバウンダリーを超えているのです。

──現在の日本企業がイノヴェイションを起こしていくために必要なことは、何だと考えていますか?

ある集団においてイノヴェイションの生態系を考えるには、人・関係性・社会との対峙の3つのレイヤーがキーになります。また、これらの要素は、異なる類いのコミュニティにも通じる考え方です。

例えば、最近になって急速にお声がけいただくことが増えたのが、都市におけるイノヴェイションとコミュニティの形成なのですが、前述した3つの要素は都市・地域にこそ通じています。都市こそ1人では動かすことはできず、立場を超えた人のネットワークが非常に重要です。そして、都市がもつ資源や価値を捉える冷静な目をもち、自ら動き出すイノヴェイターがいてこそ、持続的な都市の変化が起きます。

イノヴェイションは1人では起こせないからこそ、今回立場の異なる方々が参加されることは、より意味のあることだと考えています。WIRED Business Bootcampでは、それぞれの課題や目的を共有し、互いに刺激し学びあえる場をご一緒できればと思っています。

現在受講生を募集中! WIRED Business Bootcamp

5組の豪華講師による体験型のビジネススクールを、『WIRED』日本版とデジタルハリウッドが開講!

定員
限定40名

対象
20〜30代の次代を担うビジネスパーソンで、新規事業の立ち上げを検討している方、もしくは新しいビジネスに興味のある方

募集期間
2016年3月31日まで

受講開始日
2016年4月15日(金)予定

講義スケジュール
全20回・4〜9月の金曜日 19:30〜21:30(一部講義は土曜日に実施)
※授業内容と合わせて後日詳細を公開します

受講料:298,000円(税別)

会場
WIRED Lab.(※ 2016年4月オープン予定)
東京都港区六本木1-3-40 アークヒルズ・アークカラヤン広場

お問い合わせ
wired-bbc@dhw.co.jp(デジタルハリウッド担当川本)