台湾の民進党(民主進歩党)が23日に行った会議で、5月20日に次期総統に就任する蔡英文主席(党首)は、原住民族(先住民)の存在を重視する方針を明言した。(写真はYam Newsの23日付報道の画面キャプチャー)

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 台湾の民進党(民主進歩党)が23日に行った会議で、5月20日に次期総統に就任する蔡英文主席(党首)は、原住民族(先住民)の存在を重視する方針を明言した。同方針には、原住民族だけなく、本省人、外省人といった出自の違いを乗り越えて、「台湾人」との意識を強化する考えが込められていると解釈できる。

 台湾で次期総統選が実施されたのは1月16日だった。勝利した民進党の蔡英文主席(党首)が総統に就任するのは5月20日だ。前回の民進・陳水扁政権の発足時には、選挙結果が確定してから陳総統が就任する約4カ月の間に、国民党側が「92コンセンサス」という“地雷”を仕掛けた。今回は逆に、民進党は今回の政権交代に向け、政策の布石を打っているように思える。

 その1つが原住民族に対する政策だ。台湾メディアの蕃新聞(Yam News)によると、民進党が23日に行った会議で蔡主席は、原住民族に関連する政策を重視すると明言した。重点項目として「原住民族居住地を長期的に配慮するシステムの構築」、「原住民族居住地の産業の発展」、「民族言語の教育強化」を挙げた。

 注目すべきは、原住民族の存在を重視する理由として「本来は、この(台湾の)地の主人だ」と明言したことだ。

 台湾には、原住民族関連だけでなく、複雑な族群(エスニック・グループ)の問題がある。特に問題になるのは、第二次世界大戦終結以前から台湾で生活していた人とその子孫である「本省」系住民と、戦後になり台湾に移り住んだ「外省」系の住民だ。

 世代交代が進み、特に若い台湾人の間では、本省系住民と外省系住民の意識の差が薄れ「台湾人」の意識が自然に定着してきたが、現在でも「出自の違い」と「利益誘導」を結びつける政治的な動きは存在するという。つまり、「台湾人としての同胞意識」の形成を阻害する動きだ。

 本省系住民は多くの場合、「華人(中華系住民)」を指す。彼らは「本来の台湾住民は、われわれだ。外省系住民は後から来た」と考えがちだ。しかし蔡次期総統は、台湾の「本来の主人」は原住民族と明言した。つまり、本省系華人と外省人の立場の「相対化」だ。

 台湾の存在を考える上で、どうしても欠かせないのが中国大陸との関係だ。中国大陸は台湾の「祖国復帰」を国是としており、その方策として「経済を主力とする台湾海峡両岸の連結」を進めてきた。8年間に及んだ馬英九国民党政権下で、台湾経済の大陸への依存度は、台湾の独自性を重視する人々からすれば、相当に危険な水準に達した。

 中国(中国共産党)は民進党政権の発足に強い警戒感を抱いており、経済面などで強く揺さぶることも、十分に考えられる。蔡次期政権にとっては、族群の違いを超えて「われわれは台湾人だ。この台湾社会を維持する」という住民の総意が極めて重要になる。つまり、台湾人としての「心の砦」の強化だ。

 そのためには、本省系住民が外省系住民を「よそ者」視することは、決して望ましくない。歴史的に、台湾に来た順序は前後したとしても、違いは絶対的なものではなく「同じ台湾人」としての意識を強化したい。

 そして、台湾が「少数族群」への配慮を重視しても、中国側もそのこと自体は批判しにくいはずだ。

 蔡次期総統は今後も、中国側から“揚げ足”を取られにくい形で、さまざまな方面から「台湾人意識」の強化に取り組んでいくと考えられる。(編集担当:如月隼人)(写真はYam Newsの23日付報道の画面キャプチャー)