ドイツで好調を維持し、ハリルホジッチ監督の評価を高めた原口。プレースタイルも渡独後に変化を見せている。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 4年に1度のワールドカップがトレンド転換を確認する場だったのは、せいぜい1980年代までだろう。
 
 亡くなったヨハン・クライフがキャプテンとして統率するオランダがトータルフットボールで席巻した1974年西ドイツ大会は、世界中に強烈な衝撃を与えた。ただしそれも欧州チャンピオンズカップ(当時)の映像が他大陸では入手し難い事情があったからで、当然オランダ代表の軸を成すアヤックスは大会前から実践済みだった。当たり前のことだが、21世紀の現在は、代表チームから新しい戦術やアプローチが発信されることはない。常に進化を誘導しているのはクラブだ。
 
 一方次回のワールドカップ開催地はロシアだが、それでも日中の最高気温は20度を超える。現在欧州のトップクラブが繰り広げるようなスピーディで激しいプレッシング合戦は回避される可能性が高い。実際前回ブラジル大会で5バック系の戦術が幅を利かせたのは、やはり代表チームの強化スケジュールが十分に確保できず、6〜7月開催という条件も考慮すると、どうしてもリスク回避が必然の方向性となった。
 
 ただし代表チームは、ワールドカップ本戦だけを想定して活動するわけではない。ブロックを固めて最終ラインでようやくボールを跳ね返すようなスタイルでは、国際基準へは到達できない。特に日本代表の選手たちの資質を考えても、堅守速攻に活路を見出せるはずもなく、おそらくヴァイッド・ハリルホジッチ監督の悩みもそこにある。
 
 同監督は、先日のアフガニスタン戦を「美しい勝利」と賞賛した。アフガニスタンは日本のペナルティエリアに1度も侵入できず、クロスを上げたのも1度だけだった。ハリルホジッチ監督を上機嫌にしたのは、「忘れることはない」というスコアレスドローに終わったシンガポール戦のトラウマを少なからず拭い去ったこともあるが、自ら「最も難しい」と評す「前へのプレス」を勤勉に継続できことだろう。
 
 生真面目な日本代表選手たちは、全員が指揮官の要望通りにアグレッシブに取り組む決意を込めて戦った。それを「日の丸をつけた責任」と言うのは簡単だが、これだけ力の離れた相手に、ここまで隙を作らずハードワークを続けるのは決して容易いことではない。ぞしてそれはJリーグのピッチを見ればなおさらである。
 
 例えば、今年のJ1開幕戦を見て愕然とした。味の素スタジアムはナイトマッチで、気温は10.2度と記されているが、観戦する側には真冬の感覚だった。ところがプレーをする側には絶好のコンディションなのに、大宮はFC東京がボールを下げてもリトリートして静観するのみ。
 
 ボールは自陣におびき寄せて網ですくい上げる想定しかなく、奪い取るという国際基準とはまったく乖離していた。
 
 逆に東京が前線からプレッシャーをかけると、慣れないせいか最終ラインにミスが頻発する。しかしサッカーは皮肉な競技なので、大宮が正真正銘唯一のチャンスを決めて勝利してしまった。昇格したばかりの大宮は、アウェーでの勝利に酔いしれたわけだが、結果以外は何も手にしていない印象だ。裏返せば、これで勝ててしまうのがJリーグという見方もできる。
 
 昨年大宮はJ2を独走で制している。しかし残念ながら中味はJ特有のトレンドに添っていた。1980年代ではなく、これだけ欧州シーンの映像が溢れている現在なのに、Jではドメスティックなトレンドへと足並みを揃える。
 
 真夏のシーズンが長い弊害と見る向きもあるが、それでも湘南のようなチャレンジャーも存在するわけで、やはりドメスティックな結果という小さな競争への過度な固執が進化を阻んでいるとしか思えない。