5月に実施されるフィリピン大統領選挙で、グレース・ポー上院議員が有力候補として注目されている。教会に置き去りにされて有名な映画スターの養女となるなど、「数奇な半生」を歩んできたポー氏は、3人目の女性大統領になる可能性もある。写真はフィリピンの国旗。

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2016年3月26日、5月9日に実施されるフィリピン大統領選挙の有力候補4人の中で、グレース・ポー上院議員(47)が注目されている。教会に置き去りにされていたポー氏は有名な映画スターの養女となり、「数奇な半生」を歩んできた。各候補の政策にはほとんど差がなく、「人気投票」の色彩が強いだけに、3人目の女性大統領になる可能性を秘めている。

比メディアなどによると、ポー氏は生後間もないころ、比中部・パナイ島イロイロ市の大聖堂に置き去りにされているのが見つかり、保護された。司祭から「神の恵み」(CRACE OF GOD)にちなんで「グレース」と名付けられ、著名なアクション映画スターのフェルナンド・ポー・ジュニア氏夫妻に養女として引き取られた。国立フィリピン大学から米国のボストン大学に留学し、その後は米国で暮らしていた。

04年に養父が大統領選に出馬したため、急きょ帰国し選挙を手伝ったが、養父はグロリア・アロヨ大統領に僅差で敗北して間もなく死去。映画・テレビ評価委員会(MTRCB)委員長などを経て、13年の上院選(全国区)に立候補した。04年の大統領選はアロヨ陣営が票を不正操作したとの疑惑がつきまとい、ポー氏は亡父への同情票も集め、大方の予想を裏切ってトップで当選した。

そんなポー氏の最大の障害となっていたのは、大統領選への立候補資格だった。米国生活が長かったため、立候補に必要な国内居住期間(10年)を満たしていない疑いが浮上。選挙管理委員会は昨年12月、「失格」を宣言した。これに対し、ポー氏は最高裁に異議を申し立て今月8日、立候補を認める判断を勝ち取った。やっと正式なスタートラインに立てたわけだが、知名度はもともと高く、出遅れ感は全くない。

今回の大統領選で有力視されている4人は、ポー氏と副大統領のジェジョマル・ビナイ氏(73)、前内務自治相のマヌエル・ロハス氏(58)、比南部・ミンダナオ島ダバオ市長のロドリゴ・ドゥテルテ氏(70)。憲法の規定で大統領(1期6年)の再選は禁止されており、ベニグノ・アキノ大統領は立候補できない。

ビナイ氏は野党出身で比経済の中心地マカティの市長も長く務めた実力者。ロハス氏は祖父が大統領、父親も上院議員だった「政界サラブレッド」で、アキノ大統領から後継指名された。ドゥテルテ氏は犯罪対策に豪腕を振るって名を上げた

2月9日に始まった選挙戦は、3カ月間の長丁場。ちょうど折り返し地点を過ぎたばかりだ。各候補の支持率はおおむね拮抗(きっこう)し混戦模様だが、各種世論調査の中にはポー氏が「ややリード」とするものもある。他の3人が政策や実績を訴えるのに対し、ポー氏の生い立ちや清廉さが庶民にはアピールする。特に女性の支持が厚いという。現大統領の母親コラソン・アキノ、アロヨ両氏に続き、大統領の座を射止める確率は少なくなさそうだ。(編集/日向)