北村匠海 DISH//としての音楽活動と俳優で飛躍のとき!期待に応える覚悟はできている
物怖じしない若者なら珍しくないが、この18歳、それとはちょっと違う。むしろ、少しだけ緊張しているのが伝わってくる。その上で冷静に、感覚を研ぎ澄ませて質問に向き合い、答えを紡いでいく。俳優、ミュージシャンという2つの顔を持つ北村匠海。4月1日公開の映画『あやしい彼女』ではその2つの側面を活かし、バンドでの成功を夢見る青年を演じている。可能性に満ち溢れた新星は、役柄に自らを重ねつつ、その視線の“先”について語ってくれた。

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

衝動と伝えたい思いに駆られての楽曲作り



――今回、北村さんが演じる翼はバンド活動に打ち込む青年。演奏シーンでは、実際にギターを演奏するなど、演技・音楽の両面が求められる役でした。

俳優活動と音楽ユニットDISH//でのギターボーカルとしての活動を両立してやってきて、それをこういう形で活かせる作品に出合えたのは、すごく嬉しかったです。これまでどちらもあきらめずにやってきてよかったなと思いました。




――音楽面に関して、水田伸生監督からどのようなことを求められたのでしょう?

演奏に関しては、要求というよりも、監督は僕を信頼して、全面的に託してくださいました。ライブシーンも演技や撮影というよりも、実際にライブを楽しんでいるような感覚でやることができたと思います。

――劇中歌のプロデュースを務めているのは小林武史さんですね。

僕自身は、90年代に小林さんがプロデュースされた大ヒット曲をリアルタイムで聴いていた世代ではないのですが、素晴らしい楽曲を生み出してきたすごい方ですよね。僕も楽曲を作る人間として尊敬してますし、こうして映画の仕事でご一緒させていただけるのは不思議な感覚でした。

――レコーディングなどでお話もされたんですか?

はい。ミュージシャン特有のニュアンス、独特の感覚で思いを伝えてくださるのがすごく印象的でした。



――『見上げてごらん夜の星を』『真っ赤な太陽』など、普段のDISH//での音楽活動とは違うタイプの昭和歌謡が登場しますね。

詳しく知らなかったけど実は聴いたことがあるという曲ばかりで、それがバンドサウンドで、すごく響く曲になっていて刺激的でした。『悲しくてやりきれない』ってめっちゃいい曲だなぁって(笑)。

――そもそも、北村さんが音楽活動を始めたきっかけは?

自分たちで始めたというよりも事務所のオーディションがきっかけです。中2のときに、僕がメインボーカルでバンドを結成することになったんです。与えられたきっかけだったからこそ、なおさらがむしゃらにやっていましたね。



――2012年のメジャーデビューから3年たらずの2015年1月には武道館単独公演を開催。チケットは5分で完売しました。ミュージシャンとしての変化や成長はどのように感じていますか?

最初は必死に目の前のことをこなしているだけだったんですが、あるライブの後で「よかったよ」「ありがとう」と声をかけていただいて。「あぁ、自分の歌が誰かに届いてるんだ」と実感がわきましたね。

――最近ではご自身で楽曲作りもされているんですね?

そこで変わってきた部分もすごく大きいですね。伝えたい思いがあって、そこには芝居のときの冷静さとは正反対の“衝動”があって、その思いに駆られて曲を作っていく。芝居が、脚本がすでにある中で、その物語に寄り添って役を作っていくとしたら、まったく異なるアプローチで何かを伝える作業であり、どちらもすごく刺激的ですね。