ANAの海外へのネットワークは2016年3月現在、39都市59路線に展開している(写真出典:idealphotographer/123RF)。

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ANAが4年連続で「5スター」に認定されました。ほかに選ばれた「5つ星エアライン」もアジアの航空会社がほとんど。「5つ星エアライン」の過半数に共通のある理由、目的が存在しているようです。

アジアにかたよる「5つ星」

 2016年3月3日(木)、ANA(全日空)は英国SKYTRAX(スカイトラックス)社が運営する「エアライン・スター・ランキング」において、4年連続で「5スター」を獲得したと発表しました。

「エアライン・スター・ランキング」は、世界中の航空会社を調査し、格付けするというもの。星の数を「1」から「5」まで用い、空港でのチェックイン、目的地空港への到着したときや乗り継ぎ時の対応、空港ラウンジ、機内のシート、機内食、機内エンターテイメント、客室乗務員の接遇姿勢や機内の快適さに至るまで、あらゆるシーンでの設備やサービス品質などを乗客の視点から調査し、総合的に判断するものです。

「5つ星」はその最高ランクで、ANAは2013年から継続して「5スター」を獲得。4年連続受賞は日本の航空会社でトップの実績です。

 今年2016年、「5スター」に認定された航空会社はANAのほかアシアナ航空、キャセイ・パシフィック航空、ガルーダ・インドネシア航空、海南航空、カタール航空、シンガポール航空の7社で、前年同様の結果でした。

 カタール航空のほかはすべて、アジアの航空会社です。そのきめ細やかなホスピタリティ精神が、共通して高い評価を得たひとつのポイントでしょう。

高評価エアラインの過半数に共通する“ある特徴”

 ANAが国際線定期便を就航させたのは1986(昭和61)年3月。世界の航空会社と比べると、国際線においては決して歴史の長いエアラインではありません。そのほか「5スター」に認定されているカタール航空とアシアナ航空、海南航空も同様で、実は国際線進出における“後発組”が、2016年における「5つ星エアライン」の半数以上を占めているのです。

 航空業界では多くの会社が同じ路線に就航しているため、他社との競争において“印象に残るエアライン”になることも重要です。とくに後発組ともなると、最初から他社のシェアを奪う戦いを余儀なくされます。

 ANAは2011年度、「5スターの獲得」を経営目標のひとつとして掲げました。サービス全体で一貫した高いレベルが評価され、はじめて「5つ星」に認定されたのは2年後の2013年。グローバル市場で注目されるエアラインになるためには、SKYTRAXでの評価が欠かせない要素のひとつだったのです。

 さて「高いサービス品質」とひと口にいいますが、「5スター」各社のサービスとはいったい、どのようなものなのでしょうか。

「5つ星エアライン」、世界最先端のサービスとは

 シンガポール航空は2007(平成19)年10月、他社に先駆けて世界初の総2階建てジェット旅客機エアバスA380を導入。各座席にスライドドアとブラインド付きのウィンドウを備えた「スイートクラス」を設定し、旅客機としては初めて完全独立型のベッドを設置するなど、世界の最先端をゆくラグジュアリーなサービスを実現しています。

 また、ガルーダ・インドネシア航空では2009(平成21)年より、「ガルーダ・インドネシア・エクスペリエンス」と称するサービスコンセプトのもと、「独自ブランドの構築だけではなく、インドネシアの素晴らしさを世界に紹介すること」を目的とした、五感を楽しませるホスピタリティをちりばめています。たとえば、インドネシアの文化を感じる食事や客室乗務員の制服デザインのほか、機内などで使用する香りには、インドネシア原産の植物やスパイスから抽出したエッセンシャルオイルをブレンドしたオリジナルアロマを採用しています。

 ANAは2015年、ハード面の工夫が顕著にみられ、羽田空港国内線ターミナルでは「ANA Baggage Drop(自動手荷物預け機)」を導入。カウンターでの待ち時間やストレスを大幅に軽減しています。

 また同社ウェブサイトでは、利用者の声をもとに改善されたサービスの一部を報告しており、たとえば「国際線予約・案内センター」では、ANAの全就航地における日本語・英語対応を24時間365日体制に改善しました。これも、「都合の良い時間に連絡できるようにしてほしい」という利用者の声から見直されたサービスのひとつです。

 このように、各社はそれぞれ工夫を凝らし、サービスの品質維持や向上に取り組んでいます。しかし「5スターエアライン」に対する利用客の目はとりわけ厳しくなる一方。乗客の要望を敏感に受けとり、その期待を上回るエアラインであり続けることが、5スター各社の「5スター」たるゆえんなのかもしれません。