突然死と言えば、去る2月25日、大阪・梅田の繁華街で乗用車が暴走し11人が死傷した事故が思い出される。この暴走した男性運転手(51)の死因が、大動脈解離による心タンポナーデだったという。
 事故を目撃した50代女性は「(男性は)ハンドルを握っている感じではなく、気を失っていると思った」と証言している。つまり、運転中に突然心臓の大動脈が裂けて死亡した可能性が高いと見られているのだ。
 しかし、男性の家族は「持病はなかった」と語っており、近隣住民も「ウォーキングをするなど身体は鍛えている様子だった。健康には気を使っていたのでは」と証言している。そのような状態でも、突発性の病気が死を招き、大事故につながってしまった。

 突如激痛を感じ、そのまま帰らぬ人となる突然死。医学的には、「事故や自殺などの外因性の原因がなく、それまで全く病気がないか、あっても安定した状態で、すぐに悪化する気配がなかった。なのに、突然病気が発症、24時間以内に死んでしまう場合」を言う。
 「特に、発病から1時間以内に亡くなってしまったケースについては、『瞬間死』と呼ぶこともあります。今回の事故で運転していた男性が亡くなったのも、それに当たる可能性は高い」(医療関係者)

 突然死を起こす直接の原因の約半数は心臓にある。残りは、脳(くも膜下、脳梗塞など脳卒中)や呼吸器系だ。しかし、実際に突然死した人の実態を把握することは非常に難しいという。
 「ただし、この突然死を迎える人は意外に多く、亡くなる人の5人に1人が病気を発症して24時間以内に死んでしまうというデータもある。しかも年齢は40〜50代が多く見られ、女性より男性の方が約2倍近く多い。中高年の方なら、大動脈瘤や大動脈解離といった病名を一度は聞いたことがあるでしょう。家族や知人に、大動脈が破裂して緊急手術を受けた方もいるかもしれません。決して珍しい病気ではないのですが、では『大動脈ってどこにあるの?』とか、『原因は?』と聞かれ、正確に答えられる人は少ないでしょう。それだけ大動脈の部位は知られていない箇所にあるわけですが、決して油断できない病気なのです」

 こう語るのは、日本大学医学部附属板橋病院の外科担当医。
 「大動脈は、心臓から出て胸部、腹部に至る、身体の中心を走る最も太い血管を指します。太さは胸部で直径約3センチ、腹部でも約2センチもある。その太い血管で動脈硬化が進むと、血管内壁の弾力性が低下し、様々な異常が起こりやすくなるのです。もろくなった血管内壁に高血圧などの要因が加わり、血管がコブのように膨らんだ状態になるのが大動脈瘤。そして血管内壁の一部に亀裂が入り、剥離を起こした状態が大動脈剥離。どちらも放置すると、あるとき血管が破裂して大出血を起こし、命にかかわる重大な病気に発展します。しかし、それほど危険な病気なのに、大事に至るまで自覚症状がなく、なかなか気づかない。そこに落とし穴があるのです。早期発見のためにも知識を得て、予防を心掛けましょう」(同)