寒かった。3月24日の埼玉スタジアムは、コートの襟もとから寒風が絶えず滑り込んできた。

 ピッチ上で繰り広げられている日本対アフガニスタンの試合が、寒さを忘れさせてくれたか。

 僕の答えはNOである。

 W杯予選の勝利に対する感度が、自分は鈍っているのかもしれないとは思う。

 アフガニスタン相手に5対0ではなく10対0で勝てば、身体から熱気が沸き上がってきたのか。気持ちが晴れたのか。

 そうかもしれない。だが、そうとも言い切れない。

 敵将ペトロ・セグレトの言葉は示唆に富む。クロアチア出身の指揮官は、「日本はつねに我々の一歩先をいっていた」と話した。2016年3月24日の日本は、確かにアフガニスタンの一歩先をいっていた。相手の攻撃の芽を素早く摘み取り、前半はハーフコートマッチを、後半はクォーターコートマッチを(そんな言葉があれば、だが)を展開した。

 それにしても、である。アフガニスタンはFIFAランキングが151位のアウトサイダーで、政情不安から満足な練習も積めない環境にある。所属クラブを持っていない選手が、スタメンと途中出場を合わせて4人も出場していた。

 上から目線を承知で言えば、そんな相手に5対0で勝ったところで喜べない。アフガニスタン相手に5対0という現状を、9月に開幕する最終予選に照らしてしまう。
このままの進化のスピードで、韓国に、イランに、オーストラリアに、果たして勝てるのだろうか。もっと言えば、2年後のロシアW杯でグループステージを突破できるのだろうか。2016年3月24日時点のチームは、どちらの疑問にも明るい見通しを示せていない。それが、僕の観戦後感を苦いものにした。

 試合後のハリルホジッチ監督はポジティブな言葉を並べ、そのうえで「チームのスピリットが素晴らしかったことに尽きる」と話した。「勇敢さ、やる気、アグレッシブさを出してくれた」とも語った。

 確かにそのとおりではある。だが、明らかな格下相手に、それもホームゲームで、「スピリット」を発揮できないようでは困る。それが勝因の核だとしても、当然のこととして受け止めなければならない。アフガニスタン相手にスピリットを見せられないチームが、自発的かつ対外的な重圧の増す最終予選で、韓国、イラン、オーストラリアなどを相手にスピリットで上回るとは、考えにくいからだ。

 いくつかの新しいトライはあった。4人のMFをダイヤモンド型に配し、岡崎慎司と金崎夢生に2トップを組ませた4−1−3−2のフォーメーションは、ごく限られた練習で実戦を迎えている。ハーフナー・マイクの高さを取り入れる時間帯もあった。194センチの長身は、チームの5点目につながった。

 それにしても、相手はアフガニスタンなのだ。勝利は当然である。評価の視線が内容へ集まるのは避けられず、その意味で寒さの沁みた夜だった。