錦織圭(ATPランキング6位、3月21日付、以下同)は、3月23日に開幕したマイアミオープンで、昨シーズンから目標のひとつにしているマスターズ1000大会の初優勝を目指す。

 マイアミ大会は、テニスの4大メジャーであるグランドスラム(以下GS)に次ぐマスターズ1000(以下MS)のグレードの大会だ。MSは年9大会あり、トップ10選手には出場義務が課されている(モンテカルロ大会だけは、義務なし)。出場するトップの顔ぶれは、GSと一緒だが、GSのように5セットマッチではなく、3セットマッチを戦う(マイアミでは、2007年まで決勝だけ5セットマッチだった)。

 また、マイアミ大会は、インディアンウェルズ大会と同様の96ドローの大型大会で(他のMS6大会は56ドロー、パリ大会は48ドロー)、"第5のグランドスラム"とも呼ばれている。グランドスラムと同じく、シード選手は32人だが、1回戦は免除されて、2回戦から戦い、大会期間も通常のツアー大会のように1週間ではなく、12日間かけて行なわれる。

 MSで優勝すると、ランキングポイントを1000点獲得でき、トップ選手のランキングへの影響も大きい。トップ10選手に定着している錦織にとって、マスターズ大会はより結果が求められる、いわばツアーの主戦場といえる。だからこそ、錦織の意識はより高いものになってきている。

「どの(MS)大会も同じですね。特別に(マイアミだけを)意識しているわけではないです。もちろん、マスターズで上位に行くことは必要というか、自分に課していることではある。自分に期待するというよりは、もう(上に)行かないといけないという感じです」

 3月下旬に行なわれるマイアミでの戦いは、ワールドテニスツアーのシーズン前半の山場のひとつで、ビッグ4をはじめとしたトップ選手は重要視して、タイトルを狙ってくる。例えば、ノバク・ジョコビッチ(1位)は、マイアミ大会で5回の優勝を誇る(07、11、12、14、15年)。また、ジョコビッチは、07年MS・マイアミ大会で初優勝した翌年にオーストラリアンオープンで初めて4大メジャーを制した。

 グランドスラム初制覇を目標とする錦織にとって、順番から言えば、まずMSで初タイトルを獲得して大きな自信をつけたいところだ。

 ブラデントンのIMGアカデミーを拠点にしている錦織にとって、同じフロリダ半島にあるマイアミは、いわばホームグランドのような大会といえる。慣れ親しんだ気候や環境も手伝って、マイアミでの錦織は12年以降、4年連続でベスト16以上に進出と安定した成績を収めており、昨年はベスト8に、14年には自己最高のベスト4を記録した。

 また、先のインディアンウェルズとマイアミの春の北米ハードコートシーズンでいい結果を残すと、同年にグランドスラムをはじめとする各大会で好成績を収めることが多い。例えば、05年と06年に両大会を制したロジャー・フェデラー(3位)は、両シーズンともにウインブルドンやUS(全米)オープンで優勝して、世界ナンバーワンを独走した。また、ジョコビッチも11、14、15年に両大会を制して、やはりいずれのシーズンも年間ナンバーワンに輝いた。顕著な例ではあるが、錦織もマイアミで良い結果を残すことができれば、今後の2016年シーズンにさらなる活躍を期待できる。

 錦織はインディアンウェルズの準々決勝で敗れた後、一度ブラデントンの自分の家に帰って、体力の回復に努めた。錦織はドローが発表された翌日の時点で、ドローの詳細を見ていなかった。「直前まで見ない」という錦織は、いつも記者会見で気づかされるのだと苦笑いをした。

 錦織の初戦(2回戦)は、3月26日の予定で、ルーカス・ロソル(58位、チェコ)と予選勝ち上がりのピエール=ユーグ・エルベール(107位、フランス)の勝者と対戦する。ロソルとの対戦成績は、錦織の1勝0敗で、エルベールとは初対戦となる。

 さらに順当にいった場合、3回戦では第27シードのアレクサンドル・ドルゴポロフ(29位、ウクライナ)で、錦織の3勝0敗。4回戦では、第9シードのジョー=ウィルフリード・ツォンガ(10位、フランス)で、錦織の5勝2敗。準々決勝では第2シードのアンディ・マリー(2位、イギリス)で、錦織の1勝6敗。準決勝では、第5シードのラファエル・ナダル(5位、スペイン)との対戦となり、過去、錦織の1勝8敗だ。

 錦織のMS初タイトル獲得は、ジョコビッチをはじめとしたトップ5選手の実力、調子を踏まえると、もちろん簡単なことではないが、現在の錦織の力からすれば、決して現実味のない話というわけでもない。

「少しずつ感じていますね。まぁ、すぐに(優勝)というのはわからないですけど、だいぶ近づいてきています。過去に(マスターズの)決勝(14年MSマドリード大会)に行ったり、グランドスラムでも上まで行けたりしているのもあるので、いろいろと運が重なって、いいプレーができれば、可能性はあると思います」

 このように語る錦織が、悲願であるGS制覇への大きな布石となるMS初優勝を、"地元"マイアミで達成できるかどうか注目したい。

神仁司●文 text by Ko Hitoshi