「2トップをやってみたいと思っていた」と言う岡崎は、高校の後輩である金崎と息の合った連係を見せていた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ハリルホジッチ監督は、このアフガニスタン戦ではこれまでと異なる戦い方をお披露目することを試合前に示唆していた。

【マッチレポート】日本 5-0 アフガニスタン

 
「ちょっと違ったやり方にトライしたいと思っています」
 
 果たして、指揮官の言葉どおりになった。日本は従来の4-3-3ではなく、4-4-2を採用したのだ。
 
 この変更に伴い、最前線の枚数はCFの一枚から、岡崎&金崎の2トップの二枚に変わった。“引いた相手をいかに崩すか”は、押し込む展開が予想されたアフガニスタン戦のひとつのテーマだった。最終予選でも似たようなシチュエーションがあることを想定すれば、このタイミングで一度、人数をかけてより攻撃面を強調した“違ったやり方”をテストしておくのは悪くない決断である。

 結果的に、2トップはひとつのオプションになり得ることが証明された。歴然とした相手との実力差があったとはいえ、指揮官も一定の手応えを得たはずだ。

 岡崎は「(金崎)夢生が1トップ気味で、(ゴールに)貪欲すぎていた(笑)」と笑顔で振り返るように、ふたりの役割分担はある程度、整理されていた。岡崎が幅広く動き回り、縦パスを呼び込んで攻撃に勢いをもたらす。金崎は“その次”に起こる展開を予測したポジショニングでチャンスを狙うケースが多かった。
 
 両者の距離感も良く、11分には左サイドの崩しから岡崎がラストパスを受け、シュートはミートし切れなかったが、すぐそばにいた金崎がすかさずこぼれた球に反応し、際どい一撃を放っている。
 
 43分の先制点の場面でも、2トップの効果が発揮されていた。ピッチ中央で長谷部からのパスを受けた清武が前を向いてドリブルを仕掛けた瞬間、金崎のフリーランに気を取られた相手DFが岡崎へのケアを一瞬、疎かにする。その隙を突いて清武→岡崎とパスがつながり、岡崎は寄せてくる相手を巧みな切り替えしでかわし、冷静に左足で流し込んだ。
 
 先述した“動き回る岡崎”と“中央で待つ金崎”とは逆のケースではあるが、高校の先輩・後輩の間柄であるふたりは随所で阿吽の呼吸を見せ、前線を活性化させることに成功させていた。
 岡崎の先制弾を演出した清武は、最終的には4ゴールに絡む大活躍を見せた。
 
 58分に金崎のアシストから自らネットを揺らし、74分にはCKで吉田のゴールをお膳立て。さらにその4分後には、ゴール前に狙いすましたミドルパスを供給すると、ハーフナーの落としから金崎のチーム5点目が生まれている。
 
 本職のトップ下で先発フル出場を果たした清武は、テンポ良くボールを動かしながら、相手の裏をかくスルーパスを通したり、鋭いターンから単独で局面の打開を図る。躍動感に満ちたそのプレーでチームを完勝へと導いたのだ。
 
 とりわけ目を引いたのが、岡崎&金崎の2トップと形成する前線のトライアングルだ。ダイレクトパスを多用した3人によるボールの出し入れは連動性に富み、ハリルホジッチ監督が志向するスピーディな崩しを体現できていた。彼らだけで相手の守備組織を攻略するのはもちろん、2トップの落としを受けた清武からの両サイドへの展開によって攻撃に広がりももたらされていた。
 
「前がふたりになればターゲットが増えるので、自分のところにボールがこぼれやすい。そうなると、サポートしやすいですよね。やりやすさはある」
 
 試合前日に2トップ+トップ下のイメージについて聞かれた清武は、こう答えている。まさにそのとおりのパフォーマンスで多くのゴールチャンスを創出してみせたのだ。
 
 繰り返しになるが、チーム5点目のように、清武→ハーフナー→金崎の組み合わせでもゴールが生まれている。トップ下の清武を起点に、岡崎と金崎の“流動性”をベースにしたコンビネーションだけでなく、ハーフナーという“高さ”を活かしたパターンでも結果を出せたのはプラス材料だろう。
 
 このトライアングルが、引いた相手には有効的で、ある程度の目途が立ったのは事実である。今後、3人の連係がさらに深まってくれば、強豪国との対戦では4バック+3ボランチで手堅く守り、前線3人だけでゴールを目指す堅守速攻スタイルの確立も見えてくるはずだ。
 
 システムが4-3-3から4-4-2に変わったことで、中盤の陣形はアンカーを配置したダイヤモンド型になった。
 
 単純に中盤の人数がひとり増えたわけだが、これまでの2ボランチと比較すれば、アンカーの両脇は相手に狙われるゾーンになる。
 
 もっとも、圧倒的な力の差を見せつけたアフガニスタン戦では、致命的なピンチはほぼ皆無ではあった。アンカーを務めた長谷部も「今日ぐらいのレベルの相手であれば、そんなに危ない場面は作られない」と語っている。
 
 この4-4-2は「特殊な相手に合わせたシステムだった」(長友)だけに、あくまでも現時点ではひとつの選択肢に過ぎない。それでも、相手のレベルが上がる最終予選で採用された時には、「守備の部分ではもう少し、周りとコミュニケーションを取ったりしていかないと難しいかなと思います」と長谷部は想定している。
 
 鍵になるのは、両サイドのポジショニングだろう。状況を見極めながら、長谷部と同じラインに下がり、3ボランチを形成して、アンカーの脇のスペースを埋める。自分たちが主導権を握り、押し込む時間帯が増えてくれば、リスクを冒してでも4-1-3-2のような陣形で攻撃に厚みをもたらすようにする。
 
「とにかく“これ”という形を作らず、相手がどういう出方をしてくるかに臨機応変に対応し、穴を見つけながらやるというのは、みんなで話し合っています」(長谷部)
 
 ある意味、ダイヤモンド型の4-4-2は、4-3-3より選手個々の判断に委ねられた、自由の利くシステムなのかもしれない。その点を考えれば、選手交代なしの試合中の戦術変更など、より柔軟に戦える4-4-2は大きな可能性を秘めていると言ってもいいし、今後、さらに精度を高めていく価値はあるはずだ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)