キングオブコント初代チャンピオンであるバッファロー吾郎A、文筆家のせきしろ、劇団ヨーロッパ企画を率いる上田誠。ひたすら新しいおもしろ企画を出し続ける「企画ナイト」というライブを不定期で続けている盟友3人。彼らが手がけるユニットコントライブが『すいているのに相席』だ。2013年3月に第一回公演を開催して以降、年1回ペースで新作公演を重ねるほか、合間に傑作選的な役割のライブも行い、年々ファンを増やしている。
たとえば誰もが知る芸能人。あるいはかつてテレビで見たことのある場面。そこから思いもかけない物語が展開する。ときにファンタジックで、ときに猛烈にくだらなく、そしてときにやさしく切ない。あらゆる感情を揺さぶられる、そしてなにより純粋に笑える珠玉のコントたち。5月に新作公演『すいているのに相席4』を控えるメンバーに話を聞いた。



挫折からスタートした『すいているのに相席』シリーズ


───そもそも『すいているのに相席』シリーズが始まったきっかけは?
バッファロー吾郎A(以下、A) 最初はヨーロッパ企画が京都で開催したイベントで、酒井善史くんという役者さんが一人で演じるためのオムニバスコント集(「ヨーロッパ企画presentsハイタウン2012」内で上演された『煩悩コメディ』)を僕とせきしろさんとで書いたんです。

───それが評判で?
A いや、それが……思ったよりも反応がよくなくて(笑)。二人してショックを受けたのが始まりです。このままでは終われない、一度東京でやってみようと。そこにそのイベントの主宰でもある上田誠くんも入ってもらって。上田くんはその時、別の枠でコメディを書いていて、それはすごくウケてたので。
尾関高文(以下、尾関)・アイアム野田(以下、野田) ははは!
せきしろ 僕は昔からバッファロー吾郎のコントが好きだったから。木村くん(バッファロー吾郎A )とはライブでいろいろ一緒にやってきたけど、コントは一緒にやったことがなかったので、一度やってみたいと思ってたんです。で、やってみたら誰も笑わなかった。木村くんの書いたコントでは笑ってたけど、僕が書いた方では一人も笑ってなくて、全員があくびをしてた(笑)。
高佐一慈(以下、高佐) 一人もってことはないでしょう(笑)。
A 正直誰もってことはないけど、まあいい意味で悔しさを感じた。
せきしろ 「あれ? 今までのすべては間違いだったのかな?」って (笑)。
野田 それはけっこうな思いですね!


本番で輝き出す芸人たち


───A先生は脚本、演出とともに出演もされていますが、そのほかの出演メンバーはどうやって決めたんですか?
A いつも一緒にライブをやっている仲のいいメンバーで、自然に決まりましたね。
せきしろ 女優さんも一人入ってほしいと思っていたところに、ちょうど山脇(唯)さんが京都から東京に来たタイミングだったのでお願いして。
山脇 そうですね。ラッキーでした。

───演者の皆さんは、最初の『空いているのに相席』のときの思い出といえばどんなものが?
高佐 とにかくウケたなー、と思ったのを覚えてますね。僕らザ・ギースの単独ではやらないような設定とか、「一言コント」(コントのオチだけを次々披露するコーナー)とかが斬新で刺激的で、それですごく落ち込んだ記憶があります。
尾関 え?
野田 落ち込んだの?
高佐 世の中には面白い人がたくさんいるなー、って。
せきしろ 高佐は面白かったよ!
A お前がいちばん面白かった!
せきしろ 『相席1』のなかで、高佐の演じたチャゲがいちばんよかった!
山脇 「YAH YAH YAH!」って言うところがよかった (笑)。
尾関 『相席1』ではラストのコントがすごく感動的なもので、客席に泣いている方がいたんですよ。僕はその印象がとても強いです。ただ面白いっていうだけじゃなくて、いろんな感情が感じられる舞台なんだなって思い知らされた。
山脇 私は芸人さんの中に入って演技をすることが初めてだったので、不安を抱えて稽古に行ったんですよ。でも以外と皆さんシャイな方ばかりで。そんな人たちが、本番になったらピカピカ輝きだしたから、すごくびっくりしました。芸人さんってやっぱりすごいんだなって思ったんです。



“勝手にペンが動く”存在、アイアム野田


───脚本を担当するお二人に、それぞれのキャストの魅力を伺いたいのですが。
A 山脇さんはまじめなところをぜんぶ引っ張っていってくれるからすごく楽ですね。「ここでこうしてほしい」というのをわかってくれる人。尾関は稽古中はあれ? と思うことがいっぱいあるんですけど(笑)、本番はまあしくじらない。だから本番は尾関のことを頼りにしています。高佐は、もう本当にきっちりやる。野田に関しては、「相席」とは別の芝居(「相席」のコントのひとつをスピンオフの形で芝居にした『知的生命体、芸人になる』)の脚本を書いているときに、野田のパートはいわゆる“勝手にペンが動く”という感じで、これはすごい才能なんやろうなって思いました。
野田 へえー! えへへ。
A 「ここは絶対すべるけど、物語上やっておいてほしい」というシーンがあったりするんですよ。芸人さんによってはそこに急にアドリブを入れる人もいるけど、野田は「ここには入れないでほしい」っていうのを守ってくれる。
野田 A先生やせきしろさんの脚本は、間違いないですからね。そこのシーンがすべっても、後にそのシーンがあったからこそという部分が絶対あるので。すごく信頼しています。
せきしろ 野田くんは本当に、出るだけでみんなが笑顔になる存在。
野田 エヘヘヘヘ。
せきしろ そこは努力ではどうしようもない才能だと思います。尾関は「さすがにもうできないだろう」と思っても、できちゃう。
尾関 そんなこと思ってるんですか(笑)。
せきしろ それから、高佐は練習がすごいです。ダンスとか。
高佐 まあ、ダンスは練習しますよ。
せきしろ コントの練習であんなにダンスをする人はいない。
高佐 いや、そういうシーンがあるから(笑)。


せきしろ 高佐はいちばん真面目で、「こういう感じでやってほしい」という資料を渡したらそれがすごく多くても全部きっちり観てくれるし、反映してくれる。尾関は観ないでしょ?
尾関 観ます、観ます。早送りというか……シャッと観ます (笑)。
せきしろ 山脇さんは「このセリフだけでここまでやっていただけるんだ」って思うことがたくさんありますね。木村くんはふつうにかっこいい。出るだけで違うな、コメディアンだなって思います。



照れることはやらない


───A先生、せきしろさん、上田さんの3人がそれぞれコントを持ち寄って公演を構成する過程で、相当数のコントをボツにされることもあるそうですが、その取捨選択の基準はどこにあるんでしょうか?
A 3人がそれぞれ書くので、設定や題材がかぶらないようにというのはあります。それから、なんとなく”やっちゃいけないこと”は共有している気がしますね。
せきしろ 一応暗黙の了解があることはあります。説明しづらいんだけど、変なふうにはならないように、っていう。
A 上田くんの言い方を借りれば「やるのに照れることはしない」。好きじゃないことはしないってことですね。

───配役はコントを書く時点で考えているものですか?
せきしろ 僕は、尾関に関してはいつもあて書きです。尾関のいやな部分にフォーカスして(笑)。でもさっきも言ったけど、どう書いても尾関はできてしまうから。
A 僕はだいたい2パターンくらい考えておきます。少人数でたくさんのコントをどんどんやっていく都合上、順番によっては着替えのタイミングで出られない、とかいうこともあるので。

───順番といえば、コントとコントの間の暗転中に流れる曲がいつも次のコントを表現していますよね。
A そうですね。一応順番は僕が考えるんですけど、せきしろさんがつくったコントの前の曲はせきしろさんに決めてもらって、僕と上田くんのコントの前の曲は僕が決める。もちろん着替えとか準備とかで必要な間でもあるんだけど、同時に曲を聴いて、タイトルを観て、お客さんに準備してもらう時間でもありますよね。ちなみに僕はその曲を考えてる時がめっちゃ好きなんです。

───このユニットは次の『すいているのに相席4』で4年目を数えますが、最初の公演の時点では、こうして続けることをどの程度意識されていましたか?
せきしろ 僕はずっとやりたいと思ってました。なんならもっと短いスパンでやりたいくらいの気持ちだったんですけど、いざやってみるとスケジュールを合わせるだけでも大変だし、自分だけがやりたいと思っていてもできないし、なかなか難しいなって……。あ、でも最初の「相席」が終わった日に、木村くんと寝たんだよね。
野田 えっ? 寝たってどういうこと?
尾関 なに、こわい話(笑)?
せきしろ 一緒に寝たわけじゃないよ? ちゃんと「畳のこの線からこっちには絶対に入らないでね!」って言って寝たよ。
A そうそう、本で仕切りを作ってね。
高佐 めちゃくちゃ意識してるじゃないですか(笑)。
A いや、打ち上げをみんなでやって、そのまま寝たんですよ。で、起きたら俺とせきしろさんしかいなかった(笑)。
せきしろ そう、みんなで打ち上げで飲んで、寝て、起きて、残っていた二人でそばを食べに行ったんですよ。そこで「ああ、終わったんだな」って思った瞬間に「やっぱりもう一回やってみたいな」って感じて、続けることにしたんです。



(釣木文恵)
後編に続く

「すいているのに相席4」
会場:座・高円寺2
日時:5月3日(火・祝)18:30、5月4日(水・祝)14:00、18:00
料金:前売3,000円、当日3,500円(チケットよしもとチケットぴあにて取り扱い)
作・演出:木村明浩、せきしろ、上田誠(ヨーロッパ企画)
出演:高佐一慈(ザ・ギース)、尾関高文(ザ・ギース)、山脇唯、アイアム野田(鬼ヶ島)、バッファロー吾郎A
ゲスト:高田郁恵、児玉智洋(サルゴリラ)


「すいているのに相席」シリーズとは?
2013年3月、新宿シアターモリエールにて第1回となる『空いているのに相席』を上演。翌2014年2月には『空いているのに相席2』、その7月には1と2からセレクトし、新作も加えた『すいているのに相席2.5』をルミネtheよしもとで開催。以降新作公演および傑作選的公演をそれぞれ年1回ペースで開催している。アイアム野田(鬼ヶ島)は『すいているのに相席3.5』でゲストとして参加、『すいているのに相席4』からレギュラーに。