歩行支援機「ACSIVE(アクシブ)」

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認知症から心血管疾患、糖尿病、寝たきりの予防まで、幅広い効果が期待される重要な行動のひとつが「歩行」だ。しかし、加齢による筋力低下や疾患による麻痺などで、歩けなくなってしまうこともある。

こうした人をサポートするためにさまざまな歩行補助器具が登場しているが、これらの製品とは異なる視点で開発されたのが、2015年にグッドデザイン賞を受賞した歩行支援機「ACSIVE(アクシブ)」だ。

小さな力を生かすシンプルな装置

「ACSIVE」は歩行支援機という名称が示す通り、「マイナス10歳分、歩行機能を取り戻す」をコンセプトに、脳卒中片麻痺や高齢で、自立歩行はできるものの能力が低下した人をサポートする装置。開発したのは、長年歩行ロボットの研究をしてきた名古屋工業大学の佐野明人教授と、電動車いすや義足の研究開発、製造を手掛ける株式会社今仙技術研究所だ。

もともとは佐野教授が研究していた「受動歩行ロボット」の装置の設計、製作を今仙技術研究所が担当していた。

「ロボットの歩く姿が自然で人間らしい動きで、歩行支援にも応用できるのではないかと考えたのです」

開発者のひとりである、今仙技術研究所開発センターの鈴木光久氏はそう語る。受動歩行とは、人間本来の自力歩行の原理のことだ。ACSIVEの場合、この原理に基づき、腰のバネとすねや腿の振り子の動きを利用して、床からの力を歩くのに適した力へと調整。ひざの振り出しをサポートしている。

歩き方や個人の感度の違いによって体感できる効果に差はあるものの、足が軽くなって歩きやすくなるという。介護やリハビリなどの用途に限定せず、登山やゴルフなどレジャーでの利用も想定されている。

外部からの動力で足を動かすパワードスーツと異なり、無動力で機能するため、外観はとてもシンプルで、すっきりとしたデザインだ。ゆったりとしたサイズのズボンなら、その下に装着できるという。

「歩行自体は小さなエネルギーでできる行為で、それをサポートする力も小さいものです。そんな小さな力を生かすためには、装置も小さいほうがいいと考えました」(鈴木氏)

高性能を追求し、機能の足し算に陥ってしまわないよう、必要以上の機能はそぎ落とし、いるかいらないか、迷ったら「いらない」を選択する。ACSIVEのシンプルなデザインは、そんな徹底した引き算の原理の上に成り立っているのだ。

メガネのように受け入れられるツールに

もうひとつ、ACSIVEのデザインに大きく影響しているのが、「身近な歩行支援機」という考え方。ACSIVEを使うことが一般的、日常的な行為にしていきたいという、強いこだわりだ。

「今仙技術研究所は義足も開発、製造していますが、かつてはこうした装具をネガティブに捉える風潮もありました。そんな状況を打破したい。装具やACSIVEをつけている人はかわいそう、と思われたくなかったのです」(鈴木氏)

目指しているのはメガネのような存在だという。メガネはもともと視力の補正を目的とした器具だが、目の保護を目的としたサングラスや、単純にファッションのための伊達メガネまで、多様な用途で広く受け入れられている。

「今日はよく歩く日だからACSIVEをつけておこう、最近歩きの質が落ちてきたからACSIVEで若いころの歩きに戻そう、というように、歩く量、質を上げることができる装置として受け入れられれば本望です」(鈴木氏)

エイジングスタイルは「GOOD DESIGN Marunouchi」とコラボレーションし、2016年3月30日にGOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区)にて、トークイベント第1回「歩行と姿勢のデザイン」を開催する。ACSIVEを開発した名古屋工業大学の佐野明人教授も出演予定。詳細はこちら

参考
アクシブ装着前(YouTube)
https://youtu.be/HyqMxX9Dxuo
アクシブ装着後(YouTube)
https://youtu.be/csK7XSxTgTE

(Aging Style)