岡崎が先制するまではアフガニスタン戦にやや苦戦。前半の不出来は、キャプテンの長谷部(17番)も認めている部分はある。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト編集部)

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 ワールドカップ・アジア2次予選のアフガニスタン戦で、日本代表は5-0と圧勝。岡崎慎司の先制弾を皮切りに、清武弘嗣、吉田麻也、金崎夢生が続いたゴールショー(もう1点はオウンゴール)をヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「美しい勝利」と称えた。

【W杯アジア2次予選第7戦・PHOTOハイライト】 日本 5-0 アフガニスタン

 確かに、スコアは美しい。大量5ゴールを決めたうえに、無失点。ハリルホジッチ監督がメンバー発表会見で「今回の目的」と話した「勝利、無失点、できるだけたくさん点を取る」を見事に実践したのだから、“表面上”は間違いなくパーフェクトだ。

 しかし、である。平和な90分間だったかと言えば、決してそうではない。実際、試合後の会見でハリルホジッチ監督は次のように告白している。岡崎の先制点が決まるまでは、「(スコアレスドローに終わった)シンガポール戦が頭をよぎった」と。

 そうなのだ。現体制下で初めて4-4-2システム(中盤はトップ下を置くダイヤモンド型)をテストしたアフガニスタン戦の前半に限れば、チームが上手く機能していたとは言い難い。

 気になったのは、「今までのサッカー人生でサイドに流れることはまったくなかった」と言う柏木陽介の戸惑いだ。持ち前のパスセンスをほとんど活かせず、どこか埋もれていた印象で、現にひとつもゴールに絡んでいない。

 アウェーのシンガポール戦やカンボジア戦で名手アンドレア・ピルロのように振る舞っていたのが嘘のように、ポジションをボランチから中盤のサイドに変えたことで別人のようになってしまった。柏木のパスセンスを“消した”という意味で、ハリルホジッチ監督の采配には疑問符が付くかもしれない。ただし──。

 ハリルホジッチ監督を擁護するわけではないが、テストしてみなければ分からない側面があったのもまた事実だ。

 柏木が中盤のサイドで機能しなかったのはあくまで結果論。そう考えると、一概にハリルホジッチ監督を批判できない。試してみたからこそ柏木が現時点で中盤のサイドに不向きなことが分かったと捉えれば、それはそれで今後のチーム作りに向けて収穫のようにも映る。
 
 とにかく、今回のアフガニスタン戦は“見解が分かれる試合”だ。日本が前半に相手の体力を削ったからこその後半のゴールラッシュという捉え方がある一方で、たた単純にアフガニスタンが弱かったとの見方もできる。

 事実、アフガニスタンのペタル・セグルト監督は完敗を認めたうえで、こう言っている。
 
 
 以下が、セグルト監督のコメントだ。

「我々がなにより重視しているのは、来週のシンガポール戦。だから、(日本戦では)イエローカードをもらわないようにと選手たちに話した。シンガポールに勝てば、アフガニスタン史上初めてアジアカップの3次予選に進める。我々にとって、次の試合はオール・オア・ナッシング。極めて重要だ。

 正直、アフガニスタン国内の状況は困難を極めている。アフガニスタンは国としてサッカーができるような状況ではない。現状、アフガニスタンでは練習ができない時期が1年のうち10〜11か月、できる時が1か月。日本はおそらくその逆だ」

 小さくないハンデがあるアフガニスタンには、勝って当たり前。そうした見方に寄れば、「4-4-2がいきなり機能して新機軸に」、また、「1得点・2アシストを決めた清武弘嗣が香川真司を追い抜いてトップ下の一番手に」、などとは見出しに打てない。

 引いた相手には1トップよりも2トップのほうが有効、かな? トップ下は香川よりも清武のほうがいい、のかな? ハーフナー・マイクの高さは武器になる、のかな? と、収穫を挙げようとしても、付きまとうのはクエスチョンだ。股抜きから華麗なフィニッシュを沈めた岡崎の個人技は素晴らしかったが、相手の力量、日本の内容まで含めるとパーフェクトではない部分が浮かび上がる。

 注目すべきはやはり、先制するまでの時間帯。冒頭での「シンガポール戦が頭をよぎった」(ハリルホジッチ監督)の言葉どおり、スタジアムが“嫌な雰囲気”に包まれた時間帯は間違いなくあった。

 圧倒的にボールを支配しながらも、最終局面で決定打を欠く──。キャプテンでアンカーだった長谷部誠も、「やっている感覚は悪くなかった」とコメントする一方で前半の不出来を認めている部分がある。

「今日はフォーメーションを(初めての形に)変えて臨み、いろんなテストの意味合いがあるなかで、前半は相手の集中した守備に苦しみ、最後のところまでなかなか形を作れませんでした」

 看過できないのは、24分の決定機逸だろう。GKにクリアされたあのシュートを金崎がきっちりと決めていれば、日本はもっと楽に試合を進められたどころか、アフガニスタンに“守備のリズム”を与えずに済んだ。
 
 
 GKのビッグセーブひとつで、チームが一致団結するケースはある。昨年6月のワールドカップ・アジア2次予選で日本と引き分けた時のシンガポールがまさにそうで、今回の試合でもGKのあの好セーブでアフガニスタンは活気づいた。それが“嫌な雰囲気の正体”とも言えるが、いずれにしても──。

 最終予選以降の戦いでは2次予選よりも、ひとつの決定機逸が命取りになる可能性が高まる。その意味で、24分の決定機逸は大きな反省材料だろう。

 攻撃陣の真価が問われるのは次のシリア戦だ。

「今回の連戦ではふたつのオーガナイズを試す」と明言したハリルホジッチ監督が、その試合で採用するのはおそらく従来の4-3-3だろう。アフガニスタン戦後に指揮官自身が「今日は初めてのオーガナイズを試した」と言ったことから、“オーガナイズ”はシステムを指す。そうなると、シリア戦ではもうひとつのオーガナイズ(4-3-3)を試す公算が大きくなる。

 逆に言えば、4-4-2システムは封印される可能性が高い。

 とはいえ、岡崎と金崎の2トップ、トップ下の清武はアフガニスタン戦で可能性を示しただけに、骨のある相手との試合(例えば6月のキリンカップ)でもこのトライアングルを是非テストしてもらいたい。「勝つためにアグレッシブにチャレンジしてほしい」と言うハリルホジッチ監督自身にも、アグレッシブな姿勢は求められている。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)