なにが楽しみって今は「きたぞ!われらのウルトラマンX」を観にいくことだ。
個人的な情報ですみません。明日行くんです「きたぞ!われらのウルトラマンX」。仕事おっぽりだして昼間の回に予約入れちゃったんです。春休み中の子供と2枚予約したんです。
うわっ、楽しみだ。


あまりに楽しみなので情報をすべてシャットダウンして備えているのだが、それでも聞こえてきてしまう。3月12日公開で、新宿ピカデリーの週末興行収入では1位だったとか。おおお、舞台挨拶の余禄があったにしろ立派な成績じゃないか。こんなに期待して劇場版ウルトラマンを観るのは小学校のときに行った「ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団」(詳細は各自調査)以来かもしれない。

なにしろ「ウルトラマンX」は連続テレビドラマ放送時からこちらの期待を裏切らない良作だったのである。放送枠はテレビ東京系「新ウルトラマン列伝」内、シリーズとしては「ウルトラマンギンガ」「ウルトラマンギンガS」に続くものになる。

ワンダバ!


放送をご覧になっていない方のために書いておくと「ギンガ」は防衛隊にあたる人間のグループが出てこない内容で、主人公である礼堂ヒカルが生まれ故郷である隆星町で起きる異変に巻き込まれるという「電光超人グリッドマン」と「ジョジョの奇妙な冒険」第4部を混ぜたような基本設定、さらにストーリーも主人公の母校の中でほぼ物語が完結し、後半はそれが閉鎖空間ものになるという異色作だった。
それはそれでいいんだけど、やっぱり防衛隊も出てほしいよねえ、と思っていたら続篇「ギンガS」では特捜チームUPGが登場、ヒカルも隊員として加入した。ただし隊員は、ヒカルを除けば隊長と隊員2人、非戦闘部門の研究員(前作から残留)とやや少なく、戦闘機ではなくて特殊車両による出動と、かなりコンパクトな設定だった。いや、いいんです。それでも。「仲間と悪魔」のような良回もあり、隊員には十分存在感があったのだから。

嬉しいことに「X」のチーム「Xio」では大幅に増員が行われた。隊長・副隊長に特捜班6名(うち2名はウルトラシリーズの主題歌担当で有名なボイジャーのTAKERUと瀬下千晶)、ラボチーム3名(うち1名は『ウルトラマンメビウス』に登場したファントン星人グルマンだ)の大所帯である。主人公の大空大地は特捜班とラボ兼任、科学者がヒーローという設定は「ウルトラマンガイア」の高山我夢を連想させますね。
メカニックも自動車と飛行ユニットが合体するマスケッティシステムが登場した。その出動テーマ、ウルトラシリーズではおなじみのワンダバも準備された。そうそう、それが要るんですよ、それが。

一緒に闘う


作中の基本設定は「ギンガ」で登場したスパークドールズを、形を変えて継承している。スパークドールズとは怪獣・星人たちがソフビ大の人形になってしまったもので、本作の主人公大地は、元の姿に戻った彼らと人間とが共存できる世界の実現を夢見ている。これは「ウルトラマンコスモス」の春野ムサシ路線だ。Xが倒した怪獣はこのスパークドールズに変わる。彼もまた「殺さないウルトラマン」なのである。
怪獣が単なる敵キャラクターではなく主要プレイヤーとしても登場するのは「ウルトラマン列伝」内で放映された「大怪獣バトル ULTRA MONSTERS」以降の特徴だが、本作ではXioがスパークドールズの平和利用を研究していることから、その要素が前面に押し出された。特に大地が友情を結んでいるゴモラはサイバーゴモラとして後半からほぼ毎回参戦したのである。またXも、怪獣の得意技を借りたアーマーを装着することで強くなる(前作「ギンガS」のウルトラマンビクトリーに近い)。注目すべきはこのアーマーがウルトラマン本来の能力ではなく、Xioによって開発されたものであることだ。Xioがウルトラマンを強くしたのである。

だから本作にはウルトラマンとXioの共闘を描いたものが非常に多い。ウルトラマンがいれば防衛隊はなくていいのではないかという矛盾は第二次ウルトラブームのころから指摘されており、人間が自分で努力する大事さとウルトラマンの無敵の強さとを両立させることが作劇の重要なテーマにもまった。「ウルトラマンメビウス」の特に後半は、そのことを強くした作りになっている。上に書いたとおり本作もその問題意識を共有しており、良話を多く産み出している。宇宙怪獣ベムスターのために危地に陥ったウルトラマンをXioが救出する第4話「オール・フォー・ワン」はその代表格、ウルトラマンであることがXio隊員の資格を損なわないかという問いを変形で投げてきた第20話「絆-Unite-」も重要な回だった。

また、いくら平和利用という名目があっても怪獣を「武器」に使うという行為には批判があって当然である。そのことに対して正面から疑問呈示したのが第19話「共に生きる」だった。この回にはなんと(笑ってはいけないシリーズで一挙に有名になった)人工生命M1号が、しかも「ウルトラQ」で登場したその個体が再登場するというオールドファン泣かせの展開があった。ゴモラと大地の絆について問うた第11話「未知なる友人」も大事なエピソードである。

笑って泣かせる


私は平成ウルトラマンの中では「ウルトラマンマックス」と「ウルトラマンダイナ」が好きなのだが、それはギャグ回に印象深いものが多かったからだ。前作「ギンガS」にも第12話「君に会うために」というギャグ回の名作があったが(あのメトロン星人がアイドルのおっかけになって侵略者であることを止める)、本作もたいへん充実していた。
好きな回を思いつくままに羅列していくと、出現した怪獣を町おこしの資源として利用しようと考える首長が出てくる第10話「怪獣は動かない」、熱血スポーツドラマの要素を加味した第9話「われら星雲!」、ワタル隊員の恋愛をコミカルに描いた第18話「ワタルの恋」と豊作で、特に第16話「激撮!Xio密着24時」が素晴らしい。タイトルからわかるとおり「警視庁24時」のパロディで、Xioの活動がドキュメンタリー風に撮影される。作中は画面にずっとテロップが入り続け、人間に化けた宇宙人の顔にはモザイク、怪獣が出現するとスマートホンを構える人垣の後ろからカメラが撮影するという凝りようだった(変身時の決め台詞で「ユナイト」と大地が言ったところでカメラクルーから「それなんですか」と聞かれ、「いえ『行かないと』と言ったんです」と誤魔化す秀逸なギャグあり)。

笑わせるだけではなく、泣かせる、あるいは燃えさせる演出も素晴らしく、それが隊員たち1人1人を描いた回が特に印象に残る。前出の「絆-Unite-」は橘さゆり副隊長が母としての気持ちと公務との挟間で動揺する話、同じく父である自分と責任ある立場の間で神木正太郎隊長が苦悩する第18話「戦士の背中」もいい。この回は神木隊長が一人娘の結婚式に行くか、それとも出現したゴメス退治の指揮を執るかという決断を迫られる場面があるのだが、そこで彼が出した答えと、その見せ方が最高なのである。結婚行進曲をBGMとしてXとサイバーゴモラが共闘する名場面もあり、忘れられないエピソードとなった。隊員回ではないが、第17話「ともだちは怪獣」も素晴らしい。田舎の一軒屋に引っ越してきた少女とピグモンの交情という、スタジオジブリ作品かと思わせるような温かい回である。

そして過去の記憶


このままだときりがなくなるのでこのくらいで止めて明日の映画視聴に備えようと思うが、もう1つ、どうしても書いておきたいことがもう1つある。ここまでいくつかタイトルを出してきたが「ウルトラマンX」は平成ファンの記憶を刺激する作品でもあるのだ。邪悪なものの接近によって怪獣が凶暴化するなどして危機が迫った世界、というのは平成ウルトラマンの基調だが、主人公の肉親がその異変によって行方不明になっている、という設定はたとえば「ウルトラマンダイナ」などを連想させる。また、これまではあまりゲスト出演がなかったウルトラマンネクサス(「絆-Unite-」)とウルトラマンマックス(第8話「狙われたエックス」)の登場回は感涙もので、特にマックスはトウマ・カイトを演じた青山草太も本人で出演してくれて、画面の前で土下座しかけたほどであった。
またセブンの息子であるウルトラマンゼロと(第5話「イージス 光る時」)、そのゼロから特訓を受けウルトラマンギンガビクトリーに合体(スタイルは「ウルトラマンA」のウルトラタッチ)できるようになったギンガ(礼堂ヒカル)とビクトリー(ショウ)も登場、「ギンガ」シリーズと本作との関係も明らかになった(第13話「勝利への剣」、第14話「光る大空、繋がる大地」)。
ちらっと見えてしまった映画版ではどうやらこれ以外のウルトラマンの登場もありうるようであり、展開によっては劇場で鼻血が出そうである。

というわけでテレビシリーズが楽しくて仕方がなかったので、映画も楽しみにしている次第です。とりあえず明日まで録画分を観返して過ごすわけだが、それで高まった期待は絶対に裏切られないと信じております。映画を観たらまた感謝の気持ちを吐き出しに来るので、読んでいただければ幸い。ではまた。映画館で会いましょう。
(杉江松恋)