◆久保裕也インタビュー(後編)

 インタビューを行なったのは、五輪予選を戦うなでしこジャパンが中国に敗れ、出場権獲得が絶望的となった日だった。久保裕也は「なでしこについてはあまり知らないから、残念やなという感じですね」と言っていったん口をつぐんだ。そして「男子が頑張らないと、という感じですね、リオは」と、自分に言い聞かせるように続けた。

 1月に行なわれたサッカー五輪アジア最終予選(AFC U-23選手権)。日本が出場権を獲得しただけでなく韓国を下して優勝したことは記憶に新しい。久保はその予選で全試合に出場し3得点を挙げた。手倉森誠監督も「この世代のストライカーといえば久保」と、信頼を公言する。

 予選をあらためて振り返ると、久保は「開き直りが勝因だった」と言う。

「前評判も悪かったし、どんな試合しようが、何を言われても気にしなかった。本当にみんな、開き直っていました。だから割り切って(初戦の)北朝鮮戦に臨みました。その後の試合は徐々によくなっていきましたけど、結局トータルで見たら、試合内容もあまりよくはない。だから割り切れたのがすごくよかったと思います」

 U−20までの育成年代で世界を経験していない今回のチームは、期待値が低かった。 メディアを始め、周囲の評価が低かったことが、いい方向に働いたとポジティブに捉えている。

「反骨心もあったし、やったらなあかん、という気持ちにもなれた」

 一方、予選期間中は久保だけでなくほとんどの選手が「チームとして結果にフォーカスする戦い方」をよしとしているように見えたが、時間が経った今振り返ると、課題も反省も多いようだ。

「ボールも保持できなかったですね。自分たちで崩せる場面もそんなになくて、カウンター的な攻撃が多くて」

 自分たちが本来やりたいのはカウンターのサッカーではない。だがそれに耐えたのは、勝たなくては何も始まらないからだった。だから個人的には納得がいってない部分も多々あった。

「点は取れましたけど、点以外の場面でいうと、個人での突破はあまりなかったかなと思うし。そういうシーンが作れなかったのは、チームとしても個人としてもうまくいってない証拠だと思う。崩す場面を作りたいし、作らなきゃいけないとすごく思っていましたけど、第一に勝ちたいというのがあった。0点で抑えてなんとか1点を取る、みたいなサッカーでしたしね」

 全員で耐えて1点を取るサッカーの中で、FWとしての気概のようなものは出しづらかった。

「そういうのももちろん出していかないといけないと思いました。ボールは繋がらないし、いいボールが回ってくるわけでもないし、だからこそ低い位置からでも自分がなんとかして......ということができれば、また状況も変わっていたんだろうなと思います。チーム(ヤングボーイズ)でやっているときは、ある程度いいポジションで受けてそこから仕掛けられているけど、代表とチームではまた違うなと思いました」

 攻撃の選手として難しい戦い方だったことも確かだ。

「俺も含めてFWの選手は得点意欲を持ってないといけないと思いましたけど、それが出せないということは、出せるだけの力がなかったということだなと思います。自分で行きたいと思っても、目の前の相手を抜けなかったらシュートにいけない。行きたいって思っているのに、行って抜けないわけです。決勝の韓国戦なんかでも、全然そういう力が足りなかったと思います」

 冷静になって考えれば、決して手放しで喜べる戦いではなかったことを、久保は強く自覚していた。

 久保の今年の目標は「ステップアップ」だという。ステップアップとは、ヤングボーイズから次のステージへ移ること。「将来はイタリアでプレーしたい」「直接でなくて、どこか別のリーグを経由してもいい」と、考えているという。

 そのためには、まずはリーグ戦で活躍し「結果」を残すこと。そして五輪メンバーに選ばれ活躍することが必要だ。ヤングボーイズを含めて、欧州の多くのクラブにとって五輪はあまり重要視される大会ではない。だが、自らのキャリアを考えるとその意味は大きい。本大会の登録は18人(W杯は23人)。さらに予選突破後、指揮官はオーバーエイジの採用を公言しており、実質15人の枠を同世代で争うことになる。だが、苦労して獲得した出場権をやすやすと手渡すつもりはない。

「すごく楽しみです。目標にしています。この半年が大事になりますね」

 相変わらず物静かに、久保は決意のほどを語った。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko