村田美夏●名古屋生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒。銀行員を経て金融トレーダー、エンジェル投資家、サクセスワイズ代表取締役社長、国連の諮問機関であるBPWインターナショナル東京クラブ会長。

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■株で年2億円稼ぐ異色の投資家!

東大を首席で卒業し、日本長期信用銀行に入行。エリートコースを歩んだかと思いきや、突然キャバ嬢に転身して指名No.1に上り詰めたこともあるという経歴の持ち主。テレビのバラエティ番組では「株で2億円を稼ぐ女」として人気だ。

「“株で2億円”っていうのは、もちろん毎年2億円ずつキッチリ稼ぐわけじゃないですよ。1日100万円が目安で、20営業日で年間2億円以上にはなるってことで。ほかに商品先物もやってるけど、こっちは種1億円でレバかけて30億円くらい動かせちゃうから、実際いくら持ってるかっていうのはあんまり意味がないよね〜」

個人としてはかなりの高額でトレードをしているのだが、ピリピリしたところはまるでない。利益や残高は大ざっぱにしか把握していないようだ。

投資は大学時代からやってまして、親類に投資家や事業家が多く、いろいろ教えてもらってたんです。例えば伯父は『冷蔵庫が欲しい』と伯母に頼まれたとき、銀行預金を下ろして証券会社で株を買い、儲けた利益で冷蔵庫を買ったという人で。『こうすれば元手を減らさずにモノが買えるだろ』って言うんです。あー、なるほどそういう手があるのか、と……」

超高級住宅街でベビーシッターのアルバイトなどをやり、1000万円の資金をつくって投資家デビュー。証券会社に乗り込んで「私はうるさいことは言いません。減らさないように気を付けてくれたら、何をどれだけ売買しても構いません」と“注文”した。担当者は思わぬ上客の登場に、跳び上がって喜んだという。

「それで担当になった人は、私の資金を回転させまくって手数料を稼ぎ、営業成績を上げました。その代わり、裁量配分の新規公開株をじゃんじゃん割り当てて、残高を増やしてくれました。まさにWin-Win♪」

銀行に就職してしばらく経つ頃には、億万長者になっていた。新入社員でありながら高級レストランで同僚にご馳走して、苦手な事務仕事を代行してもらっていたというからブッ飛んでいる。国際部門→営業部門→為替部門と渡り歩いたが、銀行が経営破綻して数年後に退職。そうして昼はトレード、夜はキャバ嬢の兼業投資家になった。

「キャバ嬢をやったのは、水商売をやってみたかったから。酒とおしゃべりが好きならこれしかねー! って。ほかにも東北新幹線の車内販売、マクドナルドのお姉さん、スーパーのキャンペーンガールなど、子どもの頃から憧れていた職業は全部やりました。キッザニアかっ!」

■大相場の初動に乗り後はジタバタしない

株式投資では、会社員を辞めてザラバ(9〜15時の取引時間)の売買ができるようになった。

2012年秋からの大相場では、ホテル予約サイト「一休」、ドラッグストア「クスリのアオキ」、家具製造小売り「ニトリホールディングス」などの長期上昇を掴みながら、不動産ファンド「ケネディクス」、消費者金融「アイフル」、業務用スーパー「神戸物産」などの短期急騰にも飛び乗って、荒稼ぎ。その獰猛なトレードスタイルから、ついたあだ名が「ウルフ村田」だ。

「トレードのコツはとにかく“初動に乗る”ことです。それまで横ばった値動きだったのが、出来高を伴って頭をもたげてきたときがチャンス! とりあえず買っとけ、オーッみたいな感じで。私としては“まあ損しなきゃいいや”くらいの気持ちなんですけど、初動に乗っておくと市場の皆さんがどんどん買い上げてくれるので、圧倒的にラクなんです」

■株で儲けた利益はベンチャーに投資

そうして相場で稼いだ利益は、これぞと見込んだベンチャー企業に気前よく投資している。

「全部で30社くらい、技術系の会社が多いです。2000万円とか3000万円とかをぽーんと出して、あとは必要に応じて運転資金を助けたり。ああしろこうしろと、うるさいことはいいません。私としては一発当てようとかそういうんじゃなくて、純粋に社会貢献と“優秀な人を応援したい”という気持ちです」

ハズれても相場で取り戻せるくらいの額なら気にしない。ちなみにこれまでの投資で最大の当たりは、「エコアドバンスジャパン」という触媒技術の会社だそうだ。開発製品は名だたる大手企業から引く手あまたとなり、村田氏はリターンとして製品の販売権を得た。

「その権利で、次のベンチャーが育てられる。ウチは弟や従妹が立派な家庭を持って後継ぎもちゃんといて、私がリスクとる担当なのかなって思うんです。仮に全財産を失っても、頭が回転してる限りは、今と同じことをやれば復活できる。そのくらいの感じじゃないと、人生面白くないですよ!」

■株式アナリスト 鈴木一之氏が注意喚起!「最近よくある失敗ケース」

日経平均株価が2万円を超え、東証1部の時価総額が過去最高になっている(2015年6月時点)。週刊誌は「バブル」「暴落間近」と騒ぎ立てるが、プロの視点は!?

「適正な株価水準ではないでしょうか。米国金利が上昇したり為替が大きく動けば前提が変わりますが、だとしても企業業績は相当に強いですから、日経平均2万円の許容範囲は大きいと思います」

そうした中で、初心者が陥りがちな失敗ケースとは?

「高値に飛びついては持ちきれず、投げさせられたところが底になるというパターンですね。これを回避するには、とにもかくにも焦らないこと。狙った銘柄は数日間は監視して、タイミングを計ってください。回転している大縄跳びに飛び込むような感じですね」

高値掴みを避けるには株価よりも出来高に注目したい。

「相場の過熱は株価より出来高に表れます。急増したところが当面の天井だったということはよくあります。わからなければ、2〜3回に分けて買うのも有効な手立てです」

(渡辺一朗=文・構成 山本祐之、加藤昌人、工藤睦子、和田佳久=撮影)