「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞した塩沢英一・共同通信社外信部次長が記念講演。中国が海、空、宇宙各分野で積極的に軍事力を強化している実態を示した上で、「35年までにアジア太平洋地域での優位確保」を目指している、と指摘した。

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2016年3月18日、国際報道で優れた業績を残したジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」(新聞通信調査会)の2015年度受賞者である塩沢英一・共同通信社外信部次長が、「中国が進める軍事改革〜積極防御とは何か」と題して、日本記者クラブで記念講演した。中国人民解放軍が、海、空、宇宙各分野で積極的に軍事力を強化している実態を指摘。「2020年までにアジアで優位な地位を確立」「35年までにアジア太平洋地域での大きな優位を確保」「49年までには世界の平和維持に大きな影響力を持つ」―という3段階プロセスを展開していると強調した。

塩沢氏は計約8年に及ぶ北京での特派員経験で培った人脈を基に、情報統制の厳しい中国の軍事動向を丹念に追い続け、13年11月には中国軍が東シナ海上空に防空識別圏の設定を検討していることを、中国政府の発表に先駆けて報じた。講演での発言要旨は次の通り。

宇宙分野で中国は世界で先頭グループにあり、米国に対抗。2010年と13年にミサイル迎撃実験を成功させている。ブースト(発射)、中間、最終の3段階防衛をすべて構築しているのは米中両国だけだ。

従来、海洋を重視してこなかったが、2012年に海軍の「強軍戦略」で、海軍の役割として、東経165度以西、南緯35度以北の海域で「国家利益を効果的に守る」と規定された。(1)2020年までにアジアで優位な地位を確立、(2)35年までにアジア太平洋地域での大きな優位を確保、(3)49年までには「世界の平和維持に大きな影響力」を持つ―という3段階プロセスを展開している。

空軍についても、2015年の『空軍戦略』報告で、航空圏の確保に向け、偵察力や攻撃力を西太平洋まで拡大。新型の戦略爆撃機、高高度防衛ミサイル、高速空中発射巡航ミサイル、大型輸送機、飛行船などの「戦略装備」により米軍の介入を阻止することを狙っている。東シナ海上空の防空識別圏では、空軍内や海軍と連携強化を図る。

南シナ海では、7カ所を埋め立て滑走路を造成、レーダー施設や西沙・永興島にはミサイルを配備し軍事拠点化している。南シナ海でも防空識別圏設置の動きもある。

中国は既成の米国主導の秩序に強い不満を抱いているが、同国には課題が山積しており、米国を倒して世界一になろうとは考えていない。米中両国は争わず共存共栄の道を探ることになろう。(八牧浩行)