ハンガリーのデブレツェンで開催された世界ジュニア選手権は、3月19日に女子フリーが行なわれ、日本はショートプログラム(SP)2位の本田真凜、5位の樋口新葉、8位の白岩優奈が、優勝と表彰台を狙ってフリーに臨んだ。

 前日のSPでは、直前になって優勝候補のポリナ・ツルスカヤ(ロシア)が棄権していた。そして、この日のフリー直前には、陸上でのウォーミングアップでSP1位のアリサ・フェディチキナが右足首を捻挫して急遽棄権と、ロシア勢に予想外のアクシデントが連続する大会になった。

 そんななか、日本女子の3人は冷静だった。

「たまたまアリサの足首がグネッと曲がるところを見てしまって、『どうしよう』と思って、その一瞬、ボーッとしてしまいました」という本田は、「でもすぐに『今は自分のことに集中しよう』と考えて、ウォーミングアップや6分間練習でケガをしないように気をつけてやりました」と気持ちの切り替えができていた。

 SPでは同点で並んでいた(技術点の差で本田が2位)フェディチキナの棄権。本田は、演技直前になって「あぁ、私が今1番か」という思いが浮かんできたという。だが「今回目標にしてきたのは表彰台だから、それだけを考えて頑張ろうと思った」と自分のことに集中した。

「デブレツェンに入ってからどんどん調子が上がっていて、今朝の公式練習もバッチリだったので、15分くらいやっただけで早く上がりました。ジャンプはビビらずに跳べば大丈夫と思っていたので、ジャンプ以外のことを意識して滑りました」

 こう話す本田はリンクへ上がっても「まったく緊張しなかった」という。全日本ジュニア選手権では優勝を狙って硬くなってしまったが、今回は「優勝なんてできるわけない」と思い、自分で自分にプレッシャーをかけることがなかったからだ。

「田村岳斗コーチからは『いつも笑顔で滑ろう』と言われているので、今回も直前にそう話していました。ショートの時はそれをしっかり守って笑顔で演技して、ジャッジが高く評価してくれたので、それで楽しくてノってしまったようです」と濱田美栄コーチは言う。

 本田は、フリーでも笑顔で滑り出すと、丁寧な演技で前半の3回転ルッツやサルコウ+トーループの3回転連続ジャンプをきれいに決める。その後のスピンとステップこそレベル3にはなったが、演技後半に入ってからの要素を完璧に決めて自己最高の126・87点を獲得。合計も自己最高の192・98点にして演技を終えた。

 SP、フリーともにノーミスを達成した本田は、フリー前半のスピンとステップでレベル4を獲得できなかったことについて、「完璧だったら次の目標がなくなってしまうから、このくらいでよかったです。それが悔しいから来年も世界ジュニアに戻ってきて、目標は優勝ですとしっかり言えるようにしたい」と、早くも来年の世界ジュニアを見据えている。

 また、競技の途中で3位以上の表彰台が確定すると「1位以外の2位と3位だったらどっちでもいいです」と話していたが、自身の優勝が決まると「びっくりです!」と満面の笑み。演技の感想について聞かれると「今日は3秒で終わってしまったような感じです」と言って記者たちを笑わせた。

「(12月中旬のジュニアグランプリ)ファイナルの後は普段どおりの練習でしたけど、(12月末の)全日本選手権で自分より上位の人がいたのに世界ジュニアに選んでもらえたので、それからは『他の人たちの分も頑張ろう』と思って、練習を頑張ることができました。これからも、もうちょっと努力しようと思います」と話し、さらに上を目指す意欲を見せた本田。日本勢では村上佳菜子以来6年ぶり7人目の爽やかな新女王が誕生した。

 そして、本田以外の日本勢もフリーで意地を見せた。

 樋口は、SPでルッツ+トーループの3回転連続ジャンプで転倒するという想定外のミスが出て、5位発進となっていたが、「昨日の時点で表彰台はもう無理だと思ったので、フリーではずっと練習してきたもの、『これまでやってきた』ことをお客さんに見せようと思った」と、こちらも気持ちの切り替えができていた。

「今シーズン、ずっと練習をしてきたルッツ+ループの3回転連続ジャンプを成功させたかったから、慎重になった」と言う樋口は、出だしの滑りで持ち前のスピードがなく、ルッツ+ループは着氷のタイミングが狂ってセカンドジャンプをつけられなった。だが、最後のダブルアクセルの後に3回転トーループをつけてカバーし、苦手なフリップで注意マークをつけられただけのほぼ完璧な演技。フリー自己最高の125・65点を獲得した。

「今回はショートが大事だということを痛感しました。でも、フリーで立て直すということを学んだので、これからはそこも強みになっていくのかなと思います。順位は去年の世界ジュニアと同じ3位だけど、内容的には成長していると思うので、そこはしっかりアピールできたと思う」と悔しさを滲ませながら語った樋口。合計では自己最高に届かなかったが、183・73点で3位に食い込んで手応えをつかんだ。

 また、SP8位で第3グループでの滑走となった白岩は、演技終了直後にフィニッシュでふらつきながらも右手を力いっぱい振る納得の演技を披露。それでも、自分のスコアを見て「最初の2種類の連続ジャンプが認定されたのはうれしいですけど、フリップで注意マークが付けられたのと、最後の3回転ルッツがアンダーローテーションになってしまったのは悔しい」と、修正すべきポイントをしっかりチェックしていた。

 白岩の得点は115・36点と思ったより伸びなかったが、SP14位から追い上げたエリザベット・ツルシンバエワ(カザフスタン)を0・76点差で抑える171・59点で4位。

「ショートは、自分の前でロシアの選手や真凜ちゃんがすごい得点を出したので、自分もやってやろうと思って緊張してしまったのが反省点でした。でも今日は、私の前でカザフスタンのツルシンバエワ選手がすごい得点を出したけど、自分は自分と思って演技ができたのはよかったです。フリーで挽回しようとは思わず、元気な演技をしようとだけ思っていました。それができてよかったです」

 ロシア勢に不運なアクシデントが続発した今大会、日本女子の3人は、それぞれの力を発揮し、しっかりと強さを見せる結果になったといえる。本田と白岩は14歳、樋口は15歳。ジュニア世代で活躍を続ける彼女たちが、これからどのような成長をしていくのか、期待が高まる。

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi