Wikipedia編集者たちの「真実」をめぐる戦い

写真拡大

Wikipediaは真実を担保するのか。米国で発表された連邦最高裁判所判事の後任人事に伴うリアルタイムの「編集合戦」におけるドキュメント。

「Wikipedia編集者たちの「真実」をめぐる戦い」の写真・リンク付きの記事はこちら

オバマ大統領は3月16日の朝(現地時間)、故スカリア判事の後任として連邦最高裁判所の判事にメリック・ガーランドを指名した。報道機関はそのニュースでもちきりだった。しかし、この話題を報じたのは従来のメディアだけではなかった。Wikipediaの編集者たちもまた、この“現場”にいたのだ。

同日朝、指名の噂が出るとすぐ、Wikipedia編集者たちはこの“無料の百科事典”に掲載する「ガーランド判事」(Judge Garland)の項について検討すべく集まった。同じく「連邦最高裁判所判事」(Supreme Court Justice)の記述についても。

Wikipediaの編集された部分を見ると、確かに興味がそそられる。彼らは“歴史の草案”をつくりあげようとしているのだろう。その際の“綱引き”がわたしたちに見せてくれるのは、米国において二極化する政治の崖っぷちから事実を引き戻そうとする、Wikipediaの理想を目指す努力にほかならない。

分単位の「編集」綱引き

指名発表がされる以前、ガーランド氏のページには「司法の穏健派」と記載されていた。だが、発表後、ある編集者が「極度のリベラル」という記述を打ち出した。その1分後には“荒らし”が起きないようにすべく、記事のオープン編集が閉鎖された(これは、投稿を修正できるのは承認を受けた編集者だけということを意味する)。そしてさらに1分後、「司法の穏健派」という記述が再び現れた。

It has begun. #SCOTUS #MerrickGarland #Wikipedia https://t.co/3mp2iABAXx pic.twitter.com/14m1ldcMDb

— Brian Keegan (@bkeegan) 2016年3月16日

あまり広く知られていない人物についての報道があると、関連するWikipediaのページヴュー(PV)は急上昇する。無党派と思われる人物の速報記事では、訪問者が殺到するソースとなるのだ。例えば、ソニア・ソトマイヨール判事が連邦最高裁判所に就任した2009年8月のPVがどれくらい増加したかを見れば顕著に分かる。

IMAGE COURTESY OF WIKIPEDIA

「われわれはCNNではないのだから」

編集者は1日中投稿を綿密にチェックし、すべての事実が中立的な立場で引用され、表示されているかを確認している。例えば、ガーランド氏がプロテスタントとして育ったという一文は、編集者がソースを確認できなかったため、削除された。

記事をスクロールすると、公式発表を前に、記事更新のために繰り返し調査している編集者がいたことに気付く。ある編集者は、憶測の記述を削除し続け、次のように述べている。

「リークや噂レヴェルの情報が真実であると言うのはやめよう。わたしたちはCNNじゃない」

オンライン上でグーグル検索すると、たいていの場合、Wikipediaがまず出てくる。英語版だけでも500万以上の記事があり、およそ2,800万の登録編集者がいる。

これらの編集者はそれぞれ意見をもった人間だ。そして彼らは、世界で最も人気のある情報の集積地における重要人物や場所、出来事の記述に対して、大きな力を保持している。だからこそ、そこに記述される内容は、(特に政治が絡んでくると)ほぼ戦いなしに生み出されることはない。