先進医療は金持ちしか享受できない!?(shutterstock.com)

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 医学の発達により、がんを始めとする難病の新たな治療技術が日進月歩で進む現代。病気と闘う患者の選択肢が増えるのは良いことなのだが、裏を返せば「お金をいくらかけてどこまで治療するのか?」という問題に直面することになる。

 最新の「先進医療」の多くは、健康保険がきかない。費用の高い先進医療が増えるほど、お金のある人しか医療の進歩を享受できなくなってしまうだろう。

 そこでここ数年、さかんにCMやパンフレットで宣伝されているのが、医療保険の「先進医療特約」だ。月額わずか100円ほどの掛け金で、数百万円単位の高額な先進医療費から、医療機関までの交通費やホテルの宿泊費まで払ってくれる会社もある。

 保障上限額は商品によって500万〜2000万円、さらには無制限まであり、コストパフォーマンスの高い「お得な特約」として注目されているようだ。

 しかし、この特約の知名度に比べると、これらが支払い対象とする「先進医療」がどんな医療なのかはあまりにも知られていない。

 また、わずか月々100円で生命保険会社が、なぜ高額な医療費を保障できるのか、そのカラクリも気になるところだ。いざという事態に、この特約は本当に役に立つのだろうか?

「先進医療は技術料が高い」というイメージはどこに?

 「先進医療」と聞くと、健康保険が利かない「自由診療」のすべてだと思いがちだが、そうではない。厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた治療や手術のことで、2016年1月1日現在で対象となるものは114種類だ。

 また、先進医療を実施する医療機関はどこにでもあるわけではなく、一定の技術環境が整った特定の病院でしか受けることができない。

 それらは安全性と治療効果は確認されているが、将来的に保険診療へ移行できるかどうかを検討しているため、随時リニューアルされる。患者のニーズや医療技術の進展次第で、健康保険の治療に加わったり、逆に先進医療から外れたりする治療もある。

 もちろん現段階では保険外なので、先進医療にかかる費用は患者が全額自己負担することになり、治療内容によっては高額になってしまうケースがある。

 たとえば、がんに関する先進医療として、病巣をピンポイントで狙い撃ちする「重粒子線」と「陽子線」が有名だ。前者は光の速度の70%まで加速した炭素原子をがんに照射して破壊し、後者は同じく高速の陽子を照射するもの。

 いずれも週に5回の照射を2カ月ほど続ける。料金は病院によって多少異なるが、2014年のデータでは重粒子線の平均が309万円、陽子線の平均が264万円となり、かなりお高い。

 とはいえ、それ以外の先進医療では、治療内容によって数千〜数万円ですむものも多い。実際「先進医療は技術料が高い」というイメージを作っているのは、この2種類のがん治療にほかならない。
高額の保険料が下りるのはレアケース!?

 では実際に、どれだけの人が先進医療を受けているのだろうか?

 先進医療の中でも技術料の高い、がんの「重粒子線」「陽子線」治療を受ける患者数はここ数年で増え続け、2014年には4555人となり5年間で2.3倍以上も伸びた。

 ただ、それでも先進医療全体の19%にすぎない。ちなみに、先進医療で実施件数が最も多いのは「白内障治療」で、費用は50万円ほどだ。

 また、それぞれの先進医療技術の対象患者のうち、実際に先進医療を利用している人は全体の1%に満たないといわれている。

 結論を言えば、先進医療は技術や条件、対象となる病院も限定されており、実際に保険から多額の給付を受けられる事例は非常に少ないのだ。100円程度の保険料で数百万円の先進医療を受けた人への給付が成り立つとすれば、実際に給付金を払う確率が非常に低いからこそである。

 となると、先進医療特約に加入したいがために、加入中の割安な保険を解約して、特約がセットになった保険に加入し直すことは、損をするばかりで意味がないといえる。そうではなく、現在、保険への加入を検討しているのであれば、先進医療特約付きの保険を選ぶと安心かもしれない。

 加入する際の注意点としては、がん保険に付加できる先進医療特約は、がん治療にかかわる先進医療しか対象とならないこと。がん以外の病気までカバーするためには「がん保険」ではなく「医療保険」に先進医療特約を付加する必要がある。

 また、先進医療を受ける患者は年々増えており、それに伴って保険料が値上がりする可能性が高い。更新型の場合はそのつど保険料も上がるので、更新時にきちんと確認しよう。
(文=編集部)