胃の粘膜にいるピロリ菌による胃がんの発症を抑える酵素が新たに見つかり、東京大学と千葉大の合同研究チームが2016年3月15日、英科学誌「ネイチャー・マイクロバイオロジー」に発表した。

日本人の胃がんの99%はピロリ菌が原因といわれるが、日本人の2人に1人が胃の中に持っているため、胃がん予防につながる画期的な発見だという。

ピロリ菌が作るタンパク質が胃の細胞に侵入して「SHP2」という酵素と結びつくと、胃がんの発症を促進することが知られていた。今回、このタンパク質が「SHP1」という酵素と結びつくと、逆に発症が抑えられることがわかった。

さらに、胃がん患者の1割はピロリ菌だけではなく、リンパ腫などの原因となるEBウイルスにも感染している。このウイルスに感染した細胞ではSHP1の量が減り、ピロリ菌が作るタンパク質が増えることもわかった。つまり、SHP1が胃がん抑制のカギを握っているわけだ。

チームリーダーの畠山昌則・東京大学大学院教授は「このSHP1を増強する物質が見つかれば、胃がんの予防につながります」とコメントしている。