年初からの株価下落局面では、地銀株も例外なく売り叩かれています。しかし、中国経済や原油価格の下落に地銀がどう関係するのでしょうか? いろいろ調べてみると、どうやら不動産への貸し付けが原因のようです。しばらくは、地銀や不動産セクターの動向に注意が必要です。

今月の知りたがりテーマ:不動産への貸し付けは、地銀が積極的
国内マーケットが中国経済や原油価格に左右されています。それにより、中国や新興国に関連する企業、また資源関連企業の株価が下落するのは理解できます。しかし、意外な企業の株価が昨年来安値を更新しています。
地方銀行です。しかも、関東や九州、東海地区といった相対的に景気のよい地域の地銀も下落が顕著です。海外で貸し出しを行なっていない地銀株の下落には、どんな理由があるのでしょうか? 私は、不動産への貸し出しが影響していると考えています。
日銀のデータベースを見ると一目瞭然ですが、メガバンクなどの大手銀行、地方銀行、信用金庫等を合わせた不動産向け新規貸出金額は昨年末時点で過去最高を更新しています。これは、1980年代後半のバブル期を超える金額。実は、この内訳を見ると意外な姿が浮かび上がってきます。
大手行だけで見ると、銀行向けの貸出残高は、アベノミクス以降もそれほど大きく増えていません。一方で、地銀や信金に限定してみると、この数年で急増しているのです。つまり、急拡大している不動産向け貸出金の多くは、地銀が積極的に貸し出している結果でもあるのです。
そして、この不動産という業種は、非常に負債の多い商売です。リスクの高い商売なので、経済変動の影響を受けます。過去の日本の不動産倒産率を見ると、2008年のリーマン・ショック時は急上昇していました。それが昨年時点では当時の約3分の1にまで低下しているのです。しかし、世界的な景気失速が起これば、世界金融不安が広がるかもしれないと懸念されています。そうなれば、国内不動産の先行きも心配です。
そうしたことが、不動産株やそこに貸し付けを行なっている地銀株の下落につながっているのではないでしょうか。アベノミクスで上昇してきた不動産と金融セクターには注意が必要かもしれません。

Masumi Sai
崔 真淑
Good News and Companies代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証
券SMBC金融証券研究所(現・大和
証券)に株式アナリストとして入社。
入社1年未満で、当時最年少女性
アナリストとしてNHKなど主要メ
ディアで株式解説者に抜擢される。
債券トレーダーを経験後、2012年
に独立。現在は、日経CNBC経済
解説部のコメンテーターとしても活
躍している。


※この記事は「ネットマネー2016年4月号」に掲載されたものです。