光害による不眠は全世界で発生!?(shutterstock.com)

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 新年度の異動や入社・入学を機に新居へ移られる方も多いこの時期。新天地での緊張感や枕の変化が原因か、「どうも最近は不眠気味で」と眼を擦られている方もいるかもしれない。満足な睡眠が取れない理由は、それだけではないかもしれない――。

 夜間もネオンサインの煌きや窓外の街灯によって明るく照らされている地域に居住している人々は「睡眠障害」に見舞われる可能性が高い。そんな研究報告が4月にカナダのバンクーバーで開催される第48回米国神経学会(AAN)年次集会で発表される予定だ。

睡眠の満足度は地の利に反比例する!?

 これは米国・カリフォルニアにあるスタンフォード睡眠疫学研究センターのMaurice Ohayon氏らの研究によるものだ。同研究班は「睡眠習慣」「睡眠の質」「心身の健康状態」にテーマを絞り、実に8年間にもわたる電話取材で約1万6000人の実態を聞き出した。

 さらに防衛気象衛星計画のデータを参照しながら「夜間事情」を調査した結果、人口50万人超の都市部の場合、より小さい市街地や周辺の郊外に比べると「夜間の曝露光量」が3〜6倍強いことを突き止めた。

 ちなみに日本の50万人超都市(100万人未満)といえば、宇都宮市、岡山市、鹿児島市、川口市、北九州市、熊本市、堺市、相模原市、静岡市、千葉市、新潟市、八王子市、浜松市、東大阪市、姫路市、船橋市、松山市などだ。

 Ohayon氏らはデータ解析の結果、都市部における夜間の屋外照明が「睡眠の質を落とす」と考えている。実際、夜間の曝露光量が多い地域の住民の場合、同国内の対比光量が低い地域と比較して「睡眠の質・量」に満足していない層が13%多かったそうだ。

 また、両者比で前者住民の一晩あたりの平均睡眠時間は10分少なく、疲労・夜間の中途覚醒・過眠や日中の能力低下が見られる可能性が高かった。

 ただし、本研究はそれらの因果関係を証明したわけではなく、Ohayon氏もこんな見解を述べている。「今回の研究は地域ごとに集団レベルでの曝露影響を捉えているもので、各人(各部屋)の窓と寝具の位置関係やアイマスクの着用の有無などについては検討できておりません」

 他の専門家からも「都市部の騒音や各種振動、あるいは室内照明自体の曝露などが結果に影響しているのでは?」との指摘は当然ある。

 しかし、「光害の悪影響」の低減をめざして活動中の非営利団体・国際ダークスカイ協会(IDA)による「地球上のほとんどの光害は街灯が原因」とする見解もあり、Ohayon氏はこう付け加えている。「都市部で進んでいる白熱電球からLED(発光ダイオード)電球への切り替えという趨勢も、睡眠に影響しているのではないか」
自覚で防げる部分から「光害」を減らそう

 この街灯による光害を「公害」とするならば、今日のデジタルデバイス世代は「私害」とでも呼びたい曝露に連日さらされている。勤務時間帯のPC操作はやむを得ないとしても、自由時間にもタブレット端末やゲーム機をフル稼働の画面で曝露。そして、曝露の最悪例が就寝前のスマホのチェックだろう。

 頭上のLED照明を消して寝床に入ってもブルーライトを発するスマホを手放せない。この行為が網膜を通じて眠気を促すホルモン(メラトニン)分泌に抑制をかけて、就寝前の体を再び「もう、朝か?」と錯覚(覚醒)させる。

 翻って朝の起床時であれば、このブルーライトの強い覚醒効果がプラスの意味に働く。まだ薄暗い冬の早朝でも起きてから直ぐに部屋の照明を点ければ、LEDに含まれる日光級のブルーライトが体を目覚めさせてくれる。

 これで1日24時間よりもやや長目に出来ている概日リズム(Circadian rhythm)のズレが修正されるためだ。夜の場合は真逆のマイナス効果が起こり、シカゴのノースウェスタン大学で行なわれている最近の研究では、ブルーライトを3時間以上見続けると「空腹感」が増し、肥満を誘発(諸々の体調不良にも影響?)するのではないかとの新説も浮上してきている。

 要は概日リズムを乱す負の面もあれば、連日の誤差をリセットして活力を高める正の役割も大きいブルーライト。もはやデジタルデバイスを手放せない現代人であるからこそ、個人の自覚や認識度が使い手の健康事情までをも左右する。寝床厳禁を習慣化しよう。
(文=編集部)