中国は2月8日が日本の元旦に当たる春節(旧正月)だった。日本では昨年に引き続き春節の長期休暇を利用して多くの中国人爆買い客が押し寄せていることがニュースになったが…。写真は黒竜江省の炭鉱労働者デモ。

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中国は2月8日が日本の元旦に当たる春節(旧正月)だった。日本では昨年に引き続き春節の長期休暇を利用して多くの中国人爆買い客が押し寄せていることがニュースになっていたので、中国内でもさぞかし景気が良い話がたくさんあるのだろうと思っていたが、実態は違うらしい。

春節のあいさつを兼ねて、民営の電気機器メーカーで経理を担当している北京の知人に電話をかけたところ、「爆買い客は、中国全体から見ればほんの一握りだ。われわれの場合、今年は売り上げが少なくて、年末のボーナスはなし。代わりに豚肉などが現物支給されたのだ」と予想外の言葉が返ってきた。

中国では春節前に「年終奨」と呼ばれる年末手当が支給されており、経済成長率が2ケタ台で推移していたころは月給数カ月分が支給されることも当たり前だった。ところが、ここ数年は中国の経済成長率も年々、右肩下がりだ。10年には10.6%だったものが、11年には9.5%と2ケタ成長は終わりを告げ、12から14年は7%台で推移し、15年は6.9%とついに7%を下回った。

このような経済状態の低迷はサラリーマンの懐を直撃しているようだ。転職サイト「智聯招聘網」のネット世論調査によると、「年末ボーナスはない」との回答が全体の66%に達しているほか、ボーナスをもらった人でも全体の11.7%が「5キロの豚肉セット」や「売れ残った月餅」「白酒1瓶」「汽車のチケット」「本」「カラオケのサービス券」「米」などの現物支給だったというから深刻だ。

この世論調査では全体の62.4%が「今後の仕事に影響する」と答えており、転職も辞さない構えを見せている。

日本で中国人観光客の爆買いぶりを身近で見ているだけに、中国の実体経済がこのように悪化しつつあるとは考えにくいが、黒竜江省では大規模な炭鉱労働者デモが発生。全人代開幕中だったことから、海外メディアが現地に飛び、大々的に報道したため、当局も武力弾圧はできなかったらしく、当面は2カ月分の給料支給で収めたが、今後も波乱含みだ。

このような経済悪化のため、著名な米国人投資家、ジョージ・ソロス氏が1月下旬にスイスで行われた世界経済フォーラム主催のダボス会議で「中国経済のハードランディング(硬着陸=衝突)は事実上不可避だ」と警鐘を鳴らしたほか、「私は予想しているのではなく、実際に目にしているのだ」と強調したが、実際の中国経済は本当に深刻なのかもしれない。

ソロス氏は1月上旬、中国経済の先行き不安から発生した世界同時株安について「チャイナリスクは長期化する」との厳しい見方を明らかにしており、月並みな言い方だが、今年も中国経済から目が離せそうもない。

◆筆者プロフィール:相馬勝
1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。