昨今、潰瘍、異食道逆流症(逆流性食道炎)、ピロリ菌などの治療に使われる「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」という人気医薬が、医師の間で話題になっているという。アメリカ食品医薬品局(FDA)が、「同薬を1年以上飲み続けていると別な病気を誘発する可能性がある」と注意を喚起したためだ。一体どんな危険性があり、どんな症状が表れるのか?
 日本消化器病学会専門医の若林泰三氏に聞いた。
 「PPIは発売当初、使用は8週間以内と制限されていましたが、今では脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクのある患者で、アスピリンやワーファリンなどの血をサラサラにする薬を飲んでいる人は、その副作用である胃腸出血予防のために長期間使われます。ジェネリック薬品も多く、恐らくはいま、最も多く使われている胃腸薬なのですが、FDAによれば、1年以上PPIを飲んでいる人は、“低マグネシウム血症”という副作用が生じる可能性があるというのです」

 FDAが注意換気した直接のきっかけは、51歳の女性がPPIを1年以上使用したところ、全身の筋肉で痙攣が起こり、低マグネシウム血症が出現。別の胃薬に切り替えたところ解消されたからだ。
 「マグネシウムは血液中の主要な陽イオンで、カルシウムとよく似た性質を持っています。神経が正常に活動するためには、この血中マグネシウム濃度が正常に保たれていることが不可欠で、値が低くなると全身の神経活動が低下するのです。結果、筋力が落ちたり吐き気や嘔吐などの症状が出て、頭痛も続くとされています」(健康ライター)

 さらにマグネシウムが不足すると、カルシウムをアップさせるための副甲状腺ホルモンの分泌を抑えるため、低カルシウム血症を起こし、相乗的に症状を悪化させるのだという。
 問題は、どの位の確率で低マグネシウム血症になるかだ。
 「病気によって使用量が制限されている日本と違い、米国ではPPIは街の薬局でも買えるため、使用量がけた違いに多い。日本では考えられないような副作用が出ることがあります。低マグネシウム血症もその一つですが、日本では現時点で、副作用が出たとの報告はありません」(前出・若林氏)

 それでも、PPIを長期間使っている人は、血中のマグネシウム濃度を調べた方がいいという。長く使うと高マグネシウム血症になることが明らかになったのは数年前。しかし、これまで副作用情報がないからといって、将来も大丈夫だとは言い切れないのだ。
 「潰瘍や胃食道逆流症、ピロリ菌などの治療に効くとされて処方された薬が、別な病気を誘発するとあっては元も子もありません。薬の相互作用で、薬の効き目が強くなりすぎ、副作用が出やすくなったり胃腸や肝臓の障害を起こす。また、逆に薬の効き目が弱くなり病気の治りが遅くなるという二つの悪影響が考えられます。まずは、かかりつけ医を決めること、さらに『お薬手帳』を備えること。その上で、医師や薬剤師とコミュニケーションを取ることです」(専門医)

 自分から一歩踏み込んで薬と付き合おう。