眉間のしわに薄幸感が……

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■「ショーンK」系のホラッチョビジネスマンは多い!

「4月からどうやって生きていけばいいですかね」

と、事務所の人に言ったという、ショーンKさん。あのハスキーな声でこのセリフを発したと思うと切ないです。彼はきっと悪い人ではありません。芸能人なんてみんな程度の差はあっても嘘の自分を演じているもの。彼の嘘で迷惑をこうむった番組関係の人は大変だと思いますが、(私を含め)多くの人はこの騒動に目を輝かせ、「ホラッチョ川上」というあだ名で盛り上がり、楽しんでいる……。

ショーンKさんはもはやフィクション、小説のように大衆の娯楽となり消費されようとしているのです。

ショーンKさんの騒動で、これまで会ったホラッチョ男子(疑惑を含め)数人の顔がよぎります。ショーン男子、もしくはホラッチョ男子、ネーミングに迷うところですが、彼らの特徴を挙げてみます。

特徴1【自分の経歴をやたら流暢に話す】

「週刊文春」編集部を訪れて2時間、自分について語ったというショーンKさん。テンプル大学に入って、フィラデルフィアに行き、お付き合いをしていた女性がフランス人だったので学ぶならヨーロッパだと思った、など……。いつでも、ひとり「情熱大陸」のスイッチが入って自分語りができるのがホラッチョ男子の特徴です。

10数年以上前に仕事で知り合った芸能人マネージャーのN氏(私の中でホラッチョキング)の半生記を聞かされた時のことを思い出します。

N氏はこのように、とめどなく語っていました。

「中学のときハワイに3年留学し、カリフォルニア州立大学で学んで、飛び級で3年で卒業。小学校のとき祖父に買ってもらった株で5000万円儲かったので、学生時代に起業してたちまち年収が2億円になりました。中学時代はアメリカでグロリア・エステファンのバックヤードスタッフをやっていて、そこから舞台監督に抜擢。デュランデュランのボーカルのマネージャーもやっていました」

海外の話などすぐに確かめようがなく、一瞬本当にすごい人だと洗脳されかけます。ショーンさんも中学時代アメリカでアルバイトした話などしていたそうですが、男のロマン的なアメリカンドリームの幻想が根強くあるのかもしれません。

■国連のエンブレムを名刺につける人

特徴2【女にモテた逸話を唐突に挟んでくる】

ショーンさんが語った中で、急にフランス人と付き合っていた話を入れてくるのに若干違和感が。しかし、これもホラッチョ男子の特徴な気がします。N氏も「野崎のコンビーフの社長の孫娘に迫られた」とか「相川七瀬や水野真紀とも付き合っていた」とちょいちょいモテ自慢をしてきました(嘘だと思いますが)。

また、別のホラッチョ疑惑男子も「不動産(物件)を内見中、女性の不動産会社社員に押し倒された」とか「歯科医の助手に治療のあと迫られた」とか語っていました。脳内ではそのようことになっていたのでしょう。

特徴3【国際機関などの固有名詞を連発する】

「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得」「パリ第一大学に留学」など、誰もが圧倒される学歴をプロフィールに表記していたショーンさん。コンサルティングのクライアント例には「米系大手ITデバイスメーカー」「国内大手広告代理店(国際局)」など実名を書いていないところに、若干用心深さというか小心さが現れているようです。

N氏は、「僕は実はユニセフ親善大使もやっています。日本トルコ友好協会の青年部隊長もやっていて、会長は海部(俊樹)元首相でよく一緒にゴルフに行きます。あと、平成4年日経メディア大賞世界博覧会大賞グランプリを受賞したことがあります。ドイツで表彰式がありました」などかなり壮大かつディテール感たっぷりの固有名詞を交えて語っていて、この発言がきっかけで全て嘘だと判明したのですが……。また、別の知人も、名刺に国連のエンブレムなど貼っていました。国際的な機関との関わりをアピールする人は要注意です。

特徴4【どこまでもフレンドリーで物腰柔らか】

どこか繊細さを漂わせて、物腰が柔らかなのがホラッチョ男子の特徴。人たらしというか、悪い人には見えなくて「こんなすごい経歴なのにフレンドリーで良い人かも」と思わせます。本当は自信のなさの現れかもしれません……。瞳にはナルシスト的な沈んだ輝きが宿っています。

■「ヒアウィアー?」と言って下車した男2人

特徴5【意味不明なカタカナワードを連発する】

ショーンさんの仕事についてのページを見ると、

・「ストラクチャード・ファイナンススキーム構築」
・「ポストマージャーインテグレーション(合併後の統合)成功戦略」
・「セルフ・アッセンブリー(自己組織・自律成長)組織」

など、素人には意味不明なもっともらしい専門用語が多いです。最近、このように仕事で横文字を使う人が外資系やIT系企業を中心に目立ちますが(「ローンチ」「アグリー」「アジェンダ 」「オポチュニティ」など……)、これも虚飾、仕事をかっこよく見せる演出なのでしょうか。一般人とは違う優越感に浸れます。もちろん、それがモチベーションにつながれば問題ないのですが……。

特徴6【英語を駆使して有能な自分に酔う】

ホラッチョ疑惑男子の書き込みなどを見ると急に英語になったりしてゾクッとすることがあります。

N氏も自分語りをしている最中、急に「So maybe……」と英語になり、周囲に注目され恥ずかしかった記憶が。ショーンさんも、英語の流暢さには定評がありました。たぶん英語を話している時は別人格になれて高揚感が得られるのでしょう。有能な自分に酔える瞬間です。英語と嘘の相性は良いのだと思います。

など、男の嘘について思い巡らせていたら、JR電車内で「月6000万で回す自信がある」とか景気のいい商談をしていた2人の日本人男性乗客が、降りる駅で「ヒアウィアー?」と急に英語で確認するのが聞こえました。

もしかしてホラッチョ男子予備軍?

無駄な有能感を振りまきながら降りていった2人。ホラッチョ男子は、あなたの隣にもいるかもしれません……。

(コラムニスト 辛酸なめ子=文・イラスト)