宇宙旅行を実現する「反物質エンジン」、Kickstarterで踏み出す第1歩

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SFドラマに登場する宇宙旅行を可能にする「反物質エンジン」。これを本当に開発するためのKickstarterプロジェクトが開始する。実現可能性の実証のために20万ドル、20〜30年でプロトタイプを製作するためにさらに1億ドルの投資が必要だという。

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2/11自分たちが選んだ場所と時間で、水星のトランジットを観察しよう。

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3/11準惑星ケレスは、小惑星帯の女王だ。ここを過ぎると、木星までもう水はない。

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4/11木星のオーロラは、太陽系で最も壮大なライト・ショーだ。宇宙旅行に疲れ切った旅行者さえも幻惑するような光だ。

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5/11エウロパの海は太陽系で最大だ。生物もいる可能性がある。ホテルのすべての部屋に、海中を眺められる窓がついている。

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6/11土星を周回するこの魅惑的な衛星タイタンでは、炭化水素の砂丘とメタンの海のツアーが楽しめる。ただし、マグマのように氷を噴き出す「氷の火山」には気を付けよう。

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7/11イエローストーン国立公園にある「オールドフェイスフル」ならぬ、「コールドフェイスフル」に行ってみよう。土星近くのこの小さな衛星エンケラドスには、決して期待を裏切らない間欠泉があるのだ。

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8/11太陽系外の体験がしたければ、赤い波長の光子に包まれたこの星「ケプラー186f」を訪れよう。緑の地球とはまったく違う色彩が生み出されている。

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9/11これまでに発見された最初の太陽系外惑星を訪れてみよう! ただし、近づきすぎてはいけない。「ペガスス座51番星b」は質量が木星の半分ほどで、表面温度は摂氏1,000度近いと考えられている。4.2日の周期で恒星を公転している。

Experience the Gravity of a Super Earth

10/11地球の2倍の体積を持つ太陽系外惑星「HD 40307g」は、その引力をはじめ、あらゆる意味においてスーパー・アースだ。飛び降りる前に、パラシュートを注意深くチェックしよう。

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11/11ふたつの恒星が空に浮かぶ、この美しい世界にようこそ。ただし、あいにくにも、どちらの恒星もあまり暖かさを提供しない。この太陽系外惑星「ケプラー16B」の地表温度はドライアイスと同じくらいだ。

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「反物質エンジン」が現実のものになったとき、恒星間宇宙旅行はただの夢ではなくなるのかもしれない。上記ギャラリーは「NASAのレトロな宇宙観光旅行ポスター」より。

人間が発明した乗り物の「最高速度」は、いったいどれくらいだろうか。それは、月から地球へ帰還するミッションの際にアポロ10号が記録した「時速39,897km」だ。

非常に高速なように思えるかもしれないが、「宇宙旅行ツアー」を実現しようとするなら、実は大したスピードではない。この速度では、最も近い恒星系に行くにも、地球から16万5,000年もかかってしまう。しかし、Hbar Technologies社の創業者、物理学者のゲラルド・ジャクソンとスティーヴン・ハウによると、解決策は存在するという。

その解決策が「反物質エンジン」だ。このエンジンがあれば、地球から最も近い恒星まで約16,000分の1、つまり約10年にまで短縮できるという。

2人の科学者が『Forbes』誌で説明しているところによると、この実現に不足しているのはテクノロジーだけでなく(開発に20〜30年程度の準備が必要だ)、プロジェクトを押し進める「資金」だ。

そこで、ジャクソンとハウの2人の科学者は、クラウドファンディング「Kickstarter」での資金集めを決意した。事業をスタートさせ、さらに開発段階へと進むために必要な資金20万ドルの獲得を目指すキャンペーンだ。

彼らが構想する反物質エンジンは、物質と反物質の原子が接触して消滅する際に放出される莫大なエネルギーを利用する。

2人の構想によると、宇宙船に搭載される反物質エンジンでは、ウランの核分裂反応を引き起こす開始剤として反物質が用いられるという。反応が始まるとそこから2つの粒子(もしくは核種)が生成され、それぞれが反対方向へと移動する(一方は船首に向かって、もう一方は船尾に向かってというイメージだ)。船尾に向かう核種のエネルギーは、従来の推進装置と同じように作用して推力を生み出す。一方、船首に向かうエネルギーは前方に設置されたカーボン製の特殊な帆が受け止めることになる。2つの核種の運動エネルギーを組み合わせることで得られる推進力は、光の速さの40パーセント相当にまで到達するという。

IMAGE COURTESY OF STEVEN HOWE/HBAR TECHNOLOGIES,LLC

この推力が果たして有効なのかを検証するには、20万ドルが必要だ。

彼らはその財源として、Kickstarterに期待を寄せている。資金が集まれば、彼らのエンジンの理論的可能性を実証できるし、NASAをはじめ、本気でプロトタイプ制作に資金を突っ込もうとする提携先を口説けるようになる。

彼らの計算によると、このプロトタイプ制作には少なくとも1億ドルかかる試算だ。実際にプロトタイプ制作段階まで到達するには、解決すべき問題が山積みだ。

まず第一に、燃料。反物質エンジンが要する燃料は、化学燃料エンジンや核エンジンよりもずっと少なくて済む。太陽系に最も近い恒星に向かう旅に必要な反水素は、約17gだ。しかし現在の技術では、反物質自体をつくるのに途方もないコストがかかる(反物質1gに対し約1,000億ドルとも推算される)。

さらに、反物質の保存そのものが、現在のテクノロジーでは不可能だ(通常の物質と接触するとすぐに消滅するほど不安定なのだ)。それに、ごく微小量であったとしても事故が起きたとしたら、その結果は悲劇的なものになるだろう。1gの反物質は、原子爆弾と同じ破壊力を生み出しうるという。

反物質エンジンが抱えるメリットとデメリットの双方を踏まえて、2人の科学者は確信している。十分な資金を投入することができれば、彼らの反物質エンジンは20〜30年のうちに日の目を見ることになるだろう、と。そうなれば、念願の、正真正銘の宇宙船への搭載が実現するはずだ。その未来の宇宙船は、おそらく宇宙で組み立てられることになるのだろう。建造コストは何十億ドルをくだらず、巨額の投資が必要だ。しかし、夢の宇宙旅行、さらには新たな太陽系の探索への道が開ける可能性がある。