「口が渇く、ふらつく、便秘する。この3大症状が患者さんの口から出てきたら、もしかして薬のせい? と考えてしまいます」
 ある専門家は、後を絶たない薬の飲み合わせによる弊害を指摘しながら、こう言う。
 「体の不調を訴え来院した患者さんの問診を続けているうち、いくつか気になる点が浮かび『お薬手帳』を見せてもらうと、やはり多種類の薬を飲んでいる。高齢者の患者さんでは、10種類前後の薬は普通です。しかもよく見ると、同じような効果を持つ薬を何種類も飲んでいるのに気付き、愕然とする場合もあるのです」

 病気の違いによって複数の病院にかかり、何の薬を飲んでいるかをチェックせずにそれぞれの医師が処方するため、薬の内容にダブりが多くなる。しかし、患者は、それが不調の原因になる可能性までは考えず、「薬をたくさん出してくれるのはいい医師」と思い込んでいる場合さえある。
 別のクリニックを営む医師もこう言う。
 「開業して20年になりますが、多剤投与の弊害を日々痛感しています。私の場合も『何の薬をどれだけ飲んでいますか?』と聞くようにしているのですが、それでもうっかり忘れていることもありますからね」

 そしてこの医師も、ある患者の例を話してくれた。
 「『頭がフラフラする』と言う50代の男性が来院した際、最初は脳梗塞を疑い焦りました。血圧は上が80を切っている。そこでもしや、と思い詳しく聞くと、なんと降圧剤を8剤も飲んでいた。さらに安定剤や睡眠薬なども加わり、合計20種類の薬を処方されていることが分かったのです」

 「どうして降圧剤だけで8つも?」と尋ねると、患者は「黙っていたら先生が出してくれた」と答えたという。それだけ飲めばふらつくのも当然の話。そこで身体の状態に影響を与えそうな薬だけ数種類残して、不要な薬を止めさせたところ、すぐに不調は改善された。
 「薬を何種類も飲んでいる方は、医師や薬剤師の知恵を借りて見直すべきです。しかし、このような場合、それぞれの専門医に頼っても解決しない場合が多いのも事実。医師にはそれぞれ“縄張り”があり、別の医師が出している薬を勝手に切ることが出来ないためです」(同)

 医師の縄張り争いなど、患者にとっては知ったことではない。しかし、医療ジャーナリスト・深見輝明氏は次のように説明する。
 「現実問題として、医師から処方された薬に対し、薬剤師が横やりを入れることは困難なんです。たとえ『これは必要ないのでは…』と思っていたとしても、黙っているはず。もし薬を減らしたいのであれば、かかりつけの医師を一本化するのが理想です。大病院にかかっているのであれば、地域のかかりつけ医へ紹介状書いてもらうこと。薬が出る窓口をできるだけ一つに集約した上で、薬のトータルコーディネートをして貰うことはできるはずです。風邪の初診で、あれもこれもと出す医師は、薬好きな医師と思って間違いありません」