【錦糸町】カレーのレベルが高すぎ! 「駅北口インド料理&南口バングラデシュ料理」名店レポ

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小生にとって錦糸町は映画の街だった。小学生の頃から錦糸町駅前にある楽天地で映画を観てきた。その錦糸町が、近年カレーの街になりつつあるという。錦糸町駅の北口と南口にある専門店に通うカレー好きが後を絶たないというのだ。

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なぜ錦糸町がカレーマニアのメッカになりつつあるのか。腑に落ちないまま、錦糸町駅の北口へ向かった。

その店は、駅から徒歩数分の場所にインド国旗を掲げていた。白が基調の店内に、厨房前の壁が水色で塗られている。インド料理店というよりもお洒落なカフェのようだった。

「ヴェヌス」は、南インド出身のヴェヌゴパールさんが昨年6月に開業したインド料理店だ。

ヴェヌゴパールさんは、東銀座のインド料理店「ダルマサーガラ」のシェフだった人だ。
ダルマサーガラはカレー好きの先輩に紹介され、何度か通ったことがある。

東銀座の銘店は、お洒落なインド料理店だ。その店のシェフだった人が、なぜ下町錦糸町で店を始めたのか。ヴェヌゴパールさんの弟子、須田竜(とおる)さんに話を聞いた。

「ヴェヌゴパールさんはいったんインドに帰国し、日本に戻った際、友人が多い葛西に住んでいました。そのとき偶然この物件と出会ったそうです」

葛西はインド人が多く住む街として知られている。友人が多い葛西に近いことから、たまたま錦糸町を選んだのだそうだ。

もうひとつの素朴な疑問を尋ねた。

「インド人は水色が好きみたいです。クリケットはインドの国技ですが、インド代表の選手は水色のユニフォームを着ています」

もっと深い意味があるかどうか不明だが、インド国民が大好きな色であることから、厨房の壁面を水色に塗ったのだそうだ。

ダルマサーガラではキーマカレーを頼むことが多かった。ヴェヌスでも同じものを頼むつもりだったが、須田さんにヴェヌスターリーをすすめられた。

お盆の中心にライス(インド米のバスマティライス)が置かれ、そのまわりにカレーやタンドリーチキン、サラダが並んでいた。それがこの店の人気メニュー、ヴェヌスターリー(2000円)だった。

白い料理はタピオカとバミセリという小麦が入ったデザート。
その上がチキンカレー、マトンカレー、フィッシュカレー(魚はカラスガレイ)、ラッサムスープ、オクラとジャガ芋のカレー、ネギと豆のカレー、サラダ、ワダ(豆で作ったドーナツ)、骨なしタンドリーチキン。

その他、プーリー(全粒粉の生地を揚げたパン)とラッシーが付いていた。

フィッシュカレーこそちょっと辛かったが、全体的に優しい味だった。ダルマサーガラにはな
かった窯があるので、ナンやタンドリーチキンが焼けるのだそうだ。

北インドと南インドのカレーの違いがよくわからないが、ヴェヌゴパールさんの料理にハマるカレーマニアが多いのは納得できる。

「うちのもうひとつ特徴の、ティファンも人気です」

ティファンは南インドのスナックであり、朝ごはんにもなり、女性なら主食にもなる料理なのだそうだ。

ティファンにもいろいろなメニューがあるのだが、ドーサ(800円)を頼んだ。
ヴェヌスターリー同様、丸いお盆に料理が盛られていた。

南インドのクレープ的な料理がドーサだ。クレープというと、日本では甘いものがはさんであ
ることが多い。須田さんによればティファンの中にもカレーをはさんだ料理があるというのだが、このドーサは“素クレープ”だった。

ナンのように、ドーサをちぎり、ココナッツのカレーと野菜と豆のカレーにつけて食べる。「ナンやプーリーだとちょっとヘビーかなあ」というとき、ドーサならさっと食べられそうだ。そういう意味で、南インドのスナック的な存在なのかも。

東銀座の店がお洒落なインド料理屋なら、錦糸町の店はアットホームな下町食堂。カレーマニアから、家族連れまで多くの客が通っている。

今回紹介した料理はディナー用で、ランチはバイキング。カレーは日替わりで4種類(肉、魚、卵、野菜)に加え、ナン、ライス、スイーツの用意もある。1000円。

ヴェヌス
住所/東京都墨田区錦糸2-6-11
電話/03-6284-1711
営業時間/11:00〜15:00(LO14:30)、17:00〜22:00(LO21:30)
休/無休

もう一軒は錦糸町駅南口の、居酒屋が密集する歓楽街にあった。

英語と日本語で「アジアカレーハウス」と描かれた看板の下には、段ボールに入った食材が置かれていた。入口のドアにはシェフの顔写真と、日本語と英語のメニューが貼ってあった。そのメニューに、緑に赤い丸の国旗が描かれている。

国旗はバングラデシュのもので、この店はバングラデシュ料理の店だ。

これまでカレーは北インドも南インドも経験済みだが、バングラデシュは未体験。むろんインドにもバングラデシュにも行ったことがない。バングラデシュのカレーとインドでは何がどう違うのか、同じなのか、まったく見当もつかない。

ドアの向こうには不思議な空間が広がっていた。カウンター5席の細長い店内。開店直後だったが、目の前では半袖の男性がサラダ用の野菜をカットしている真っ最中。

その背後には食材らしきものが高々と積まれ、別の壁面にはクリスマスのプレゼントを待つ子どもが靴下をかけるように、いろいろな食材がつるされていた。

バングラデシュの国会中継なのだろうか、カウンター上のタブレットPCには演説をする男性が映しだされていた。

奥の厨房を覗くと、Tシャツ姿の男性が骨付きの鶏もも肉を大鍋で煮込んでいた。
カオスな空間は、スパイスの香りと未体験の言語であふれかえっていた。

カウンター席のいちばん奥に座った。
しばらくすると料理が運ばれてきた。サラダ、肉、ゴロッとしたジャガイモのようなカレーが盛られたビリアニに続き、厨房で煮込んでいた鶏肉のカレーがカウンターに置かれた。ローストチキンのカレーだった。

この店には選べるメニューはない。毎日日替わりで、この日金曜日はスペシャル料理の日で、ローストチキンのカレーが今夜のメインディッシュだった。

ビリアニは、カルダモンなどのスパイスを入れて炊いたご飯だ。チニグラという小粒のバングラデシュ米を使っているという。食感はクスクス(パスタの一種)に似ている。肉はマトン。その脇のカレーはジャガイモではなく、卵だった。

ローストチキンをナイフとフォークで食べ始めた。卵カレーよりもスパイスがきいているのだが、玉ねぎがたくさん入っているせいなのか甘みがある。これまで食べたことがあるインドのカレーとはまったく違っていた。

広島で南インド料理店を営む知人によれば、南インドではシナモンやクローブなどをスタータースパイスとして使うというのだが、バングラデシュ料理と南インド料理のレシピの基本が同じどうかもわからない。

いつの間にか満席になっていた。隣は若い男性の一人客。その隣は若い女性の一人客。入口の脇は、友人らしい若い女性ふたりが座っていた。全員が金曜日のスペシャル料理を夢中で食べていた。

「ご飯は大丈夫ですか、ルーも大丈夫ですか」若いバングラデシュ人男性が尋ねてくる。
この店はビリアニもルーもおかわりができる。ローストチキンがあまりにもおいしかったので、ルーだけおかわりをもらった。

ルーの中にはくたくたになるまで煮込んだ玉ねぎが大量に入っていた。この玉ねぎが甘さの秘密のようだが、それ以上のことは皆目検討もつかない。けれど、この店のローストチキンの虜になったことだけは自分でもはっきりとわかった。

女性でもおかわりをしている人がいるので、食べ終わるまでに時間を要する。外へ出ると、5人ほど行列ができていた。

実は前の晩もこの店でカレーを食べた。「明日金曜日はスペシャルだから明日もおいで」と誘われ、二晩続けて通うことにしたのだ。

大鍋で鶏肉を煮込んでいたのが、シェフのソルタン・ティプさん。ルーのおかわりをすすめてくれたのが、シェフの息子。カウンターの目の前で野菜を刻んでいたのがシェフの兄弟。この店は、2年前にオープンした、ファミリーで営むバングラデシュ料理屋だ。

並ぶかもしれないが、金曜日のスペシャル料理は素晴らしい。

どこがバングラデシュ料理の特徴なのかわからない。でも、旨い。
座れば料理が出てくるカオスな食堂にデザートはないが、間違いなくハマりました。

アジアカレーハウス
住所/東京都墨田区江東橋3-9-24
電話/03-3634-4522
営業/11:00〜17:30(ランチは土日のみの営業)、19:30〜翌4:30
休/無休
ランチは850円と890円。ディナーはスペシャル料理も含め1100円。