中国国営の新華通訊社(新華社)系のニュースサイト「新華網」は、山西省内に住む元日本軍従軍慰安婦とされる女性を紹介する写真記事を掲載した。「彼女ら」は、自分の残る人生では無理でも、子孫やボランティアが抗議運動を継承し、日本政府に謝罪させてほしいと語ったという。(写真は新華網の18日付報道の画面キャプチャー)

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 中国国営の新華通訊社(新華社)系のニュースサイト「新華網」は、山西省長治市武郷県内に住むハオ菊香さんら、元日本軍従軍慰安婦とされる女性を紹介する写真記事を掲載した。「彼女ら」は、自分の残る人生では無理でも、子孫やボランティアが抗議運動を継承し、日本政府に謝罪させてほしいと語ったという。(ハオは「赤」におおざと)

 記事はまず、ハオさんが強制的に従軍慰安婦にされた経緯を紹介した。17歳だった1939年4月、自宅にいたところを日本軍にさらわれ、従軍慰安婦にさせられたという。1カ月余りの凌辱の後、家族が金をかきかつめて買い戻したので家に戻れたと紹介した。

 その後の人生でも、心の傷が癒えることはなく、長い年月が流れ、同様の境遇の女性は屈辱と苦痛に悶えながら、(日本側から)ひと言の謝罪を得ることもなく、次々に世を去ったと主張。

 新華社網は、「今も存命の年老いた彼女らにとって、生き続ける最大の意義は、当時の歴史の証言をしつづけ、生きている間に謝罪と賠償を得ること」と存じだ。

 さらに、中国では山西省や海南省で、存命の元慰安婦が支援者の助けにより日本で何度も訴訟を起こしたと紹介。日本の最高裁は2007年、原告である元慰安婦が強制連行され暴行を受けた事実を認めたが、賠償について訴えを却下したと説明した。

 記事は「年老いた彼女ら」は、「日本軍は当時、あれほど悪いことをしたのに、(日本政府は)なぜ謝罪しないのか?」と語っていると紹介。

 記事は彼女らの考えについてさらに「生涯で残された年月は少ないが、それでも尊厳は必要だ。かならず公明な道を獲得する。仮に自分らができなくても、子孫やボランティアの人々に改めて、日本政府に抗議を提出してもらい、当時の暴行について謝罪と反省をしてもらい、被害者に対しても公開で謝ってもらうことを希望している」と報じた。

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◆解説◆
 上記記事は、ハオさん以外に存命の5人と、すでに亡くなった3人の「元慰安婦」を紹介した。いずれも「日本軍が連れ去った」とした。

 記事を読んで気づくことは、存命の「元慰安婦」の気持ちとして、最も重要であるはずの日本政府への謝罪要求がの「主語」が特定の発言者ではなく「彼女ら」と、常に複数になっていることだ。通常ならば、発言者によって言葉づかいが微妙に異なるはずで、記事の書き手は「複数の人物の発言」を並列して紹介し、リアリティー(=読者に対する説得力)を出そうとするはずだ。上記記事にそのような発想の痕跡はない。

 また、「賠償」については強調せず、日本政府から「謝罪」を引き出すことに焦点を当てて、最後の部分では「仮に自分らができなくても、子孫やボランティアの人々に……」と、彼女らの気持ちを紹介している。

 上記記事からは、存命の慰安婦がいなくなった後も、同問題について運動を継続させるべきとの意図が読み取れる。

 なお、これまで、旧日本軍の「従軍慰安婦」などの「性暴力」については、韓国人、フィリピン人、オランダ人、中国人、台湾人の女性が、1990年代から2001年にかけて日本政府を相手に損害賠償を求める裁判を起こしている。

 二審の高等裁判所が、日本軍による性暴力を事実と認定した例は珍しくない。最高裁は「国家無答責(戦前の判例で適用された、公務員が公権力を行使した際に伴う不法行為については、国家は損害賠償責任を負わないとする考え方)」を適用したり、被告が中国人である場合には「日中共同声明(第5項)」で中国は賠償請求権を放棄したなどとして、原告側の主張を退けている。(編集担当:如月隼人)(写真は新華網の18日付報道の画面キャプチャー)