15日、広島に原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」(B29)の搭乗員の孫で米映像作家であるアリ・ビーザー氏が日本記者クラブで講演。戦争で1つだけの真実はありえない、と強調した上で、「様々な国が集合して、文化や立場の違いを超える対話が大事だ」と訴えた。

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2016年3月15日、広島に原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」(B29)の搭乗員の孫で米映像作家であるアリ・ビーザー氏が日本記者クラブで講演した。「戦争は日本が開始して米国が終わらせた、と以前は思っていたがそれは短絡的だった」と指摘した上で、日本、米国、中国、ドイツそれぞれに真実があり、戦争で1つだけの真実はありえない、と強調。「かつての敵は友人になった。様々な国が集合して、文化や立場の違いを超える対話が大事だ」と訴えた。

同氏は広島・長崎を訪れて被爆者の話を聞き、昨年『The Nuclear Family』(核家族)とのいう著作(英字)を米国で出版した。米フルブライト奨学金を得て、昨年夏から日本に滞在し、広島、長崎の被爆者や、東京電力福島第一原発事故の被災者を取材、米雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」デジタル版で紹介している。発言要旨は次の通り。

私の父方の祖父は広島と長崎、両方で原爆を投下した爆撃機の乗組員だった。私が4歳の時に亡くなっているが、情報を集めて記録するのが好きな人だったので、多くがノートに記されている。祖父は1985年に来日し、その際体験したことをすべて書きとめている。軍拡競争の激しいときだったので、原爆兵器や原子力によって世の中が終焉してしまうのではないかとの強い懸念を抱いていた。

第2次世界大戦において戦った他の兵士と違い、彼は多くのことを様々に記している。同じような(戦争)状況は繰り返すので、すべての国は共存できるようにしなければならないと訴えた。彼のこの思いは、状況は違うものの、今もあてはまると思う。

私自身も終戦から70年経ち、(当時を知る)たくさんの人たちが亡くなっていくなかで、データ・情報の収集をできるだけ早くしたいと考えている。原子力技術の社会的な影響について探るのが、「ナショナル・ジオグラフィック」で取り組んでいるプロジェクトだ。科学と経験を語ることによって、世の中を変えて行くというナショナルジオグラフのメッセージに共感している。

母方の祖父には、広島の被爆者で米国に住んだ日本女性の友人がいた。2人の祖父とこの女性を本に書こうと、遺族に会った。話を聞いた被爆者は、私の祖父が原爆を投下した爆撃機に搭乗していたことを知ると、好奇心を示したが、謝罪を求めなかった。

私には原爆を正当化しようという目的はなく、70年前に何が起きたのか理解したかった。かつての敵は友人になった。一緒に核のない世界を目指したいと被爆者に言われ、彼らの思いを世界に伝えようと考えた。

祖父が原爆機に乗ったのは23歳で、私が本を書き始めたのも同じ年令だった。原爆の両側をつなぎあわせる家族という意味で、本のタイトルを『核家族』にした。

戦争は日本が開始して米国が終わらせた、と以前は思っていたがそれは短絡的だった。日本、米国、中国、ドイツそれぞれに真実がある。一つだけの真実はありえない。原爆と被爆者のことはもっと話し合われるべきである。

様々な国が集合して、文化や立場の違いを乗り越える対話が大事だ。協力してよりよい社会をつくっていくことができると思う。

原子力の活用は慎重にやるべきである。科学データや放射線量を測り、日本(福島)で起きていることをしっかり見るべきで、原子力を濫用してはいけない。安全な方法を生み出しても、すぐに飛びつくのではなく十分検討してから使うべきである。

原発事故を防ぐことができないなら使うべきではない。原子力に依拠することもなく地熱風力、太陽光など様々な自然ルギーを使え、補うことができる。

岩手県大船渡や福島県など東北の被災地でボランティア活動をしているので。津波などで被害を受け亡くなった方々の情報も集めており、いずれまとめたいと考えている。(八牧浩行)